[読書記録]2023年1月に読んだ本

加藤路瑛『感覚過敏の僕が感じる世界』(日本実業出版社、2022)

感覚過敏って大変なんですね...。学生の頃に実習で出会った子どもの中にも、特定のものしか食べられず特定の服しか着られない子がいました。あの子も相当苦労していたんでしょうね。感覚過敏の方が感じていることや困っていることなどもっと知りたいと思いました。
うちの三男は、感覚過敏までは行かないけれど、服のタグや縫い目がとても不快で気になるタイプなので、この加藤さんが開発する服に私も興味があります。感覚過敏の人が着やすいと思える服がたくさん作られて、多くの人が手にしやすくなるといいなと思います。

令丈ヒロ子『病院図書館の青と空』(講談社、2022)

児童書です。転校して友達もできないまま、急な病気で入院した5年生の空花(そらは)。本が大好きで、本好きの友達とは話が盛り上がるけど、転校先では本好きの友達も見つからず、困っていたところに体調を崩して入院。悲しい気持ちでいる空花ですが、病院内に図書館があることがわかって行ってみることに…
ああ、この主人公の空花の気持ち、私はすごくわかる!と思いました。私もこういう子どもだったんじゃないかな。「理想の自分」がすごすぎるんじゃない?って言葉が刺さりました。そして結末はなるほどこうなるのか…!という感じのいいお話でした。
作者の令丈さん自身が本当に本がお好きで、たくさんの本を楽しんでこられたのだろうなと感じます。本を通して心がつながり、自分のことも振り返りながら、更に新しく関係が広がっていく。爽やかなファンタジー。カシワイさんの表紙とイラストが素敵。
余談ですが、作品の中にチラッと出てくる、転校した先の小学校の図書室の悲惨さには胸が痛みました。放置されて埃まみれになっている図書室。地方の予算のない自治体ではこういう図書室はまだまだ多いのが実態だと思います。本当に、子どもたちのためにこういうところにしっかり予算を使って整備していかないと国としてダメですよ。本当に!皆さんも一緒に怒ってください!プンプン!

ヘレイン・ベッカー『化石のよぶ声がきこえる』(くもん出版、2022)

カナダの天才恐竜ハンター、ウェンディ・スロボーダの半生を描いた絵本。他の人が気づかないものを見つける彼女は12歳の時に初めて化石を発見し、恐竜ハンターになって素晴らしい成果を上げる。恐竜が大好きな少女にぜひ読んでほしい!

『松下幸之助』(集英社版学習漫画・世界の伝記NEXT、2010)

伝記漫画。9歳で奉公に出て、よく働いて認められるが、「これからは電気の時代だ」と転職して電気の会社へ。新型ソケットを開発し自分の会社を起こす。お客や従業員を大切にし、皆が豊かな暮らしができるように考え行動し続けた人生。

『ハワード・カーター』(集英社版学習漫画世界の伝記NEXT)

ツタンカーメンの墓を発見した考古学者の人生を描く。画家として博物館に就職。エジプト古代文明の調査に魅せられ、謎の王ツタンカーメンの墓を探し続け、長い年月の末ついに発見。あの黄金のマスクはこんなふうに発見されたんですね!

佐藤清隆文、junaida 絵『月刊たくさんのふしぎ2021年4月号 ひと粒のチョコレートに』

チョコレートの原料、製法、歴史などを分かりやすく解説。junaidaさんの絵が素敵で、進行役のコックの少年が可愛い。ただ読んで知識として吸収するだけでなく、家に置いて繰り返し眺めたくなる愛おしい一冊。

フレドリック・コルティング、メリッサ・メディナ『フィル・ナイト』(岩崎書店、2019)

ナイキの創業者の人生を紹介する絵本。陸上経験のあるフィルは、最高のスポーツシューズを売る会社の設立を思いつき、日本製のシューズを改良して販売する仕事からスタートして、その後自社製品の開発へ。

キャスリーン・クラルほか『スティーブン・ホーキング』(化学同人、2021)

伝記絵本。彼がALSと診断されたのは21歳、非常に若い時だったんですね。その後55年間、動かなくなっていく体と付き合いつつ最先端の科学を探究。その天才ぶりと、明るくユーモアのある人柄が伝わる一冊。絵も素敵です。

『アメリア・イヤハート』(集英社版学習漫画世界の伝記NEXT、2012)

女性として初の大西洋横断飛行に成功したパイロット、アメリアの人生を描く。飛ぶことに向かって真っ直ぐに進む彼女の情熱が爽やかで、読んでいて引き込まれる読み応えのある一冊。パートナーのジョージとの関係もいい。

リンゼイ・H・メトカーフほか『ビアトリクス・ポターの物語』(西村書店、2021)

ポターはキノコの研究に情熱を注ぐが、女性ゆえにその研究が十分に認められることはなかった。ピーターラビットのマクレガーさんの絵が、長年支え合った友人の自然愛好家のチャールズに似ているそうで胸を打たれた。

ステファニー・ロス・シソンほか『レイチェル・カーソン物語』(西村書店、2022)

絵本。自然が大好きな少女は成長して海洋生物学者になるが、ある時自然の異変に気づき、それが化学薬品による環境への悪影響であることを突き止めて『沈黙の春』で社会に警鐘を鳴らす。彼女をもっと知りたくなる。

ドリーン・ラパポートほか『ヘレン・ケラーのかぎりない夢』(国土社、2014)

ヘレン・ケラーの生涯を描いた伝記絵本。写実的な絵が素晴らしく、「水」の言葉を理解する有名なシーンを含めて多くの場面が印象的に描かれている。大事な情報もコンパクトにまとめられ、彼女を知る第一歩に良さそう。

ジェン・ブライアント文、ボリス・クリコフ絵『6この点』(岩崎書店、2017)

ルイ・ブライユの半生をわかりやすく描いた伝記絵本。軍隊の暗号用の文字を使いやすく改良して点字を発明し、視覚障害者に読み書きの世界を開いた。布や木の風合いまで伝わってきそうな温かなタッチの絵が親しみやすい。

『オードリー・ヘプバーン』(集英社版学習漫画世界の伝記NEXT)

両親の不和と戦争に悩んだ少女時代。高身長のためプリマの夢を諦めて女優に。幸せな家庭を求める一方で結婚生活では挫折も。ユニセフ特別親善大使として世界の子どものために働いた。周囲に愛情を注ぐ誠実さが印象的。絵柄が綺麗。

渡辺真弓監修、くろにゃこ。まんが『アンナ・パブロワ』(学研まんが世界の伝記、2014)

バレエに人生の全てを捧げたバレリーナ、アンナ・パブロワの伝記漫画。度重なる苦境にも耐えて挑戦を続け、世界中にバレエの素晴らしさを伝え続けた一生。なんて激しい、自分に厳しい生き方だろう!

『ビジュアル伝記 クララ・シューマン』(学研プラス、2019)

幼くしてピアノの才能を開花させ、9歳で演奏会デビュー。結婚して8人の子の母となり、家族を支えるために各地で演奏を続けた。音楽を愛する強い女性。オールカラーのイラスト、読みやすい文字と文章で、小学校中学年から読めそう。

樫崎茜『手で見るぼくの世界は』(くもん出版、2022)

視覚支援学校の中学1年生が主人公の児童書。白杖での歩行訓練、晴眼者の偏見への恐怖、先生や友達との関係、焦りや苛立ちも細やかに描写。見えない人の感じ方や捉え方、外出時の不安が生き生きと伝わる。

視覚障害者が外を歩くことはこんなにも難しく、緊張を伴うものなのですね。その中で勇気を持って着実に手がかりを探りながら進んでいく道のりを、読みながら共に旅した気持ちになりました。主人公たちが大きなハードルを乗り越えていく、爽やかな青春物語。

青木和子『青木和子の刺しゅう 散歩の手帖』(文化出版局、2018)

庭や野原の草花を刺繍で表現する図案集。作者が花や葉の形を丁寧に観察し、刺繍として表現しておられて素敵です。草花の美しい形に、刺繍糸のふっくりとした感触や光沢が優しさを加えていて、見ていると幸せな気持ちになります。

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