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FC東京vs横浜F・マリノス~挑み続けろ~[Jリーグ第28節]

演出が凄すぎて試合が演出負けしないか心配になる、ということで横浜F・マリノス戦です。

FC東京の前節は柏レイソル戦。前半は今季最高の内容。後半は殴り合いの展開になるも、結果的にアダイウトンの理不尽で今季最多6得点で勝利を収めた。

一方の横浜FMは台風やらACLやらで約1ヶ月ぶりのリーグ戦。その前節は川崎フロンターレとの神奈川ダービー。後半AT、ラストプレーでジェジエウに決められて敗戦。これでリーグ戦4試合で1勝、8月は公式戦4戦全敗と足踏み気味。

前回対戦は6節。松木の退場などもあって2-1で競り負ける。昨季は0-4、8-0でボコボコにやられているのを考えたらよくやったとも言える?

詳しい試合内容はこちらから ↓

この記事が今季のレビューの中でダントツで反響があったっていう皆さんにはどうでもいい話。

試合概要

メンバー

・FC東京
IHは塚川が2試合連続のスタメンで安部とのコンビ。松木のベンチスタートは代表帰りとかの理由以外では多分初めて。中村が復帰後初スタメンで左SB。前節負傷交代していたディエゴは無事スタメン。

・横浜Fマリノス
前節からの変更はAロペス→レオセアラの1点のみ。オビパウエルオビンナって自分はけっこう推してるんだけど全然試合出てないのね。

(1)タスク過多のIH

ここ数試合は自分たちでボールを保持しながら試合を進めることができるようになってきたFC東京。しかし、今節の相手は横浜FM。積み上げてきたものの差は大きい。保持率では互角でも自分たちの思い通りにボール保持ができているのは横浜FMの方だった。

横浜FMのボール保持の基本は4-2-1-3のままで、SBやCHが立ち位置を変えたりなどしながら前進を図る。

対してFC東京は高い位置からはプレスには出ていかず、ミドルゾーン辺りからWGの紺野と渡邊でCBのエドゥアルドと岩田にSBへのパスコースを切りながらの外切りでプレス。この外切りプレスをする場合、FC東京が絶対に取られたくないのがWG裏のエリア、そこを取られないために絶対に抑えたいのがCHのところ。

しかし、FC東京はこのCHを抑えることができなかった。

横浜FMのCHの喜田と藤田に対してはCFのディエゴがマーク、空いているもう1枚のCHをIHの安部か塚川が出てきてマークにつく形。

ただ、喜田と藤田のマークの外し方が非常に上手い。縦関係になって藤田がIHの中間にポジションを取ってから、パスを引き出しに降りて行くなどの動きによってFC東京はマークにつききれなかった。ただでさえ難しいマークに加えて、IHはディエゴのマークに合わせてどちらがマークに出ていくかの判断をしなければいけない。

5分の場面

また、IHはCHへのマークだけではなく、WG裏のSBへ通された時の守備も同時に担う。優先順位としてはCHのマーク→WG裏のSBなのだが、CHを抑えきれていなかったことで意識がWG裏の方に余計に向いてしまう。安部と塚川にとっては難易度的にも量的にも厳しい守備タスクだったと思う。

(2)前進を受け入れる

横浜FMのCBまでWGがプレスに出ていく時は外を切って内側に誘導する形を取っていたFC東京。対してミドルゾーンで構える場合、WGは内側を閉じることを優先していた。

WGがプレスにいかない時のFC東京は4-3-3のシステムのままミドルゾーンで構える。この時のWGは外ではなく内側を閉じる立ち位置を取る。そのため、横浜FMのCBからSBへのパスコースを空いている状態になる。SBの小池と永戸はFC東京のWGよりも高い位置をしっかりと取っていたため、CBからのパスでWGのラインを超えて前進することができていた。

CBからSBへのパスでWGのラインを超えられても、IHやSBが出ていくのではなく、紺野と渡邊がしっかりと戻ってSBへプレスバック。この両WGのプレスバックが遅れるとSBやIHが引き出されて、SB裏を取られたり、ブロック内に侵入されたりしてしまう。しかし、紺野と渡邊が守備をサボらずに遂行したことで、サイドから崩されることは少なかった。2失点目では長友と安部を動かされてクロスまで持ってかれたけども。あれくらいだった。

0分40秒の場面

FC東京としてはこのようにサイドから前進されるのはある程度は受け入れていたように思う。サイドからの前進を受け入れてでもIH-WG間のゲートを閉じて、ブロックの内部に入れさせたくなかったといったアルベルさんの考えかと。憶測だけど。

やはりブロック内に侵入されるとチャンスに繋がりやすい。実際にIH-WG間を通されたのが26分40秒。スウォビィクがレオセアラを倒してめちゃくちゃPKっぽかったけど、、ってやつ。

紺野が外切りでエドゥアルドまで出ていったことでIH-WG間が開き、その先で内側に絞った永戸に引き出される。ブロック内部に侵入を許して僅か2本のパスで一気に決定機。抜け出したレオセアラをスウォビィクが倒してPK、かと思ったけど笛はならなかった。

26分40秒の場面

この場面では紺野がエドゥアルドまで出ていっていたので、正確には構える展開とは違う。ただ、このように内側を通されると一気にピンチとなるため、サイドからの前進は許容してでも内側を閉じたのだと思う。その分、WGは守備頑張ってくれって感じで。本当はボール保持をしたいのに、現実を見て相手の前進を受け入れたりできるのがアルベルさんの凄さの1つだよね。

(3)成長したからこその苦戦

次にFC東京のボール保持。広島戦くらいからは相手のプレスを外しながらビルドアップができるようになってきたFC東京。特に柏戦の前半は最高だった。

しかし、この試合では横浜FMのハイプレスに苦戦を強いられることとなる。

横浜FMはトップ下の西村がアンカーの東をマーク。CFのレオセアラがCBの木本と森重にプレスをかける。このプレスは強度が高く、ボールを持つ時間を奪いに来るプレス。圧をかけられたCBはGKのスウォビィクまでバックパスで戻す場面が増える。このバックパスが横浜FMのプレスのスイッチとなっていた。

レオセアラがCBにプレスをかけてボールを持つ時間を奪い、GKまで下げさせる。下げさせたら、レオセアラはCBへのパスコースを切りながらGKまで2度追いでプレスに行く。

レオセアラがGKまでプレスをかけたら、空いているもう1枚のCBまでWGのエウベルか仲川が出る。そしてIHにはCHの喜田と藤田、SBにはSBの小池と永戸が出てくる。レオセアラの守備に全体が連動して圧力をかけて、FC東京を一気にサイドに閉じ込める。

情報多し

スウォビィクが足元やキックが上手いGKではないことから横浜FMはこのようにGKまで下げさせたところから閉じ込める選択をしてきた形。それでもスウォビィクに致命的なミスはなかったし、26分10秒の場面ではロングキックでひっくり返して中村が抜け出すことができていたのを考えるとスウォビィクもかなり成長している。開幕戦なんかミスりまくってたからね。

この横浜FMのプレスに苦しめられたFC東京は左WGの渡邊が右サイドまで顔を出すなどして、ポジションを変えながらマークをずらしにかかる。この動きによって前進できた場面もあった。しかし、先制点となったコーナーキックに繋がったのはこの渡邊のポジション移動からだった。

37分40秒。GKがボールをキャッチしたところからビルドアップ。右サイドまでポジションを変えた渡邊に藤田がマークにつく。これによって右サイドのマークがずれて紺野がフリーに。ミドルゾーンまで前進。

37分40秒の場面

一度ボール保持を落ち着かせるが、その先で紺野へのサイドチェンジが僅かにずれて右サイドでボールロスト。この時まだ渡邊は右サイド寄りにいる状況。

ここから横浜FMは素早く右SBの小池まで展開。本来ならば渡邊が守備担当だが、その渡邊は左サイド(横浜FMの右サイド)にはいない。小池はノープレッシャーで裏へ走る仲川へ。この処理で森重とスウォビィクが譲り合ったというか、スウォビィクが出れずにコーナーキックになる。結果的にそのコーナーキックから岩田に先制点を許した。

この渡邊のポジション移動に関してはメリットとデメリットが表裏一体。渡邊のポジション移動がなければ、守備のバランスが崩れずに小池へのプレスがあっただろう。しかし、渡邊のポジション移動があるからプレスを回避できる。なければその前にプレスをはめられて、低い位置でのボールロストからショートカウンターで失点していたかもしれない。

ただCBの森重と木本は背後のケアが得意な選手ではないため、渡邊が元のサイドにいない時、誰が渡邊の代わりにボールホルダーにプレスをかけるのかをはっきりしなければいけない。塚川が出るのか?ディエゴがスライドするのか?そうしないと今回のように正確なロングフィードを蹴られてしまう。

(4)ペースを上げろ

後半。ハーフタイムでFC東京は中村と佳史扶を交代。初めて左SBでスタメンとなった中村だったが、横浜FMの強い圧力を受けたこともあって逃げるような体の向き、プレー選択となってしまった。いかにも慣れてないって感じ。

後半になると横浜FMのプレス強度が落ちる。対してFC東京は攻守ともに試合のペースを上げにかかる。

攻撃、ビルドアップ面では前半に比べてより前への意識が強まった感じ。繋ぐことを諦めたわけではないが、CBやGKからより早い段階でCFのディエゴまでロングボールを送る。57分の3枚替えでアダイウトンを投入してからよりその色が強くなる。

強度が落ちたとはいえ横浜FMは前に出て来るので、そのプレスをひっくり返してスペースのある前線でアダイウトンに勝負させる。ただ、途中から出てきたアダイウトンにしっかりプレスをかけて抑え込んでいた岩田の対応は本当に見事だったし、見ごたえのあるマッチアップだった。

一方で守備面。前半はWGが外切りでプレスをかけ始めるのもミドルゾーン辺りからだったが、後半はより高い位置からプレスをかけに行く。浮いた選手にも後ろから出ていってしっかり対応する。61分に木本がサイドで浮いた藤田を潰しに行くような場面は前半には無かった。

61分の場面

前から出ていく分、プレスを外されてピンチになるリスクは高くなる。リスクを上げてでも速い展開に持っていこうという形だった。FC東京は遅い展開よりも速い展開の方が得意なチーム。特にアダイウトンが入ってからはより破壊力を増す。その勢いのまま、早い時間帯に2得点を決めて追いつくことができた。

(5)崩しの三角形と3枚目の関わり

結果的にこの試合では2得点を決めて追いついたわけだが、どちらもセットプレーから。流れの中からどう得点を決めるのか?特に自陣でセットした相手をどう崩すのかはまだ定まっていない感じ。この試合に限らず、個人的に気になるのは右サイドでの崩しの場面での連携の部分。

FC東京の右サイドはWGの紺野がサイドに張って、ハーフスペースで長友や安部が絡んでくる形。ただ、このサイドでの関係がサイドで仕掛ける紺野、ハーフスペースに抜け出す安部or長友の2枚の関係になっている場面が多い。

サイドから崩すことを考えると、ここに3枚目の関わりが欲しいところ。そして、ディエゴ辺りが3枚目として関りに行っている場面はあるのだが、その3枚目を選べないことが多い。典型的だったのが7分の場面。

サイドで紺野がボールを持った場面。ハーフスペースを駆け抜ける長友を紺野は選択したが喜田に対応された。

7分の場面

この場面、3人目として関りに来ているディエゴが完全なフリーな状態。ここを選択できればディエゴのミドルシュート、逆のポケットへのクロスなど選択肢が広がる。また、長友へ繋げるにしても一度ディエゴを経由することで相手の目線を揺さぶることができる。そうすれば長友もよりフリーで抜け出すことができたはず。ディエゴも凄い欲しがっていたし。

7分の場面

解説の戸田さんも紺野が3枚目のディエゴを選べていれば~と言っていた場面があった。後半立ち上がりには紺野からハーフスペースを抜ける安部を飛ばして3枚目のディエゴへ、と言う場面があったが、ディエゴにボールが渡った時には、安部はオフサイドポジションとなっていた。ここの3枚の連携が向上すればより得点は増えていくだろう。

おわりに

横浜Fマリノス相手に2点ビハインドから追いつきドロー。勝ち越すことはできなかったが、プレー面以外にメンタル面でも成長したところを見せてくれた。

特に前半は横浜FMのハイプレスに苦しめられたが、チームが成長した故の苦戦だった。以前のFC東京であれば、ハイプレスを受けたら簡単にロングボールに逃げていただろう。しかし、成長したからこそGKを含めてビルドアップに挑戦した。

自分はこの挑戦が大切だと思う。厳しいプレスをかけられてもビルドアップに挑戦する。結果的に苦しめられて失敗することになったとしても挑戦することが大事。そしてFC東京ファンはその挑戦をサポートしていかなければ。

試合結果
2022.9.3
FC東京 2-2 横浜F・マリノス
味の素スタジアム

【得点】
FC東京
 53' 塚川孝輝
 63' 塚川孝輝

横浜F・マリノス
 40' 岩田智輝
 45' 仲川輝人

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