見出し画像

マンチェスターUvsウェストハム~デザイン性に欠ける攻撃~[プレミアリーグ第23節]

今回取り上げる試合はマンチェスターU対ウェストハムです。
マンチェスターUのボール保持の局面について取り上げていきます。

試合概要

メンバー

得点
マンチェスターユナイテッド
 90+3' ラッシュフォード(1ー0)

(1)整備されない選手配置

ウェストハムは前線からはあまりプレスをかけてこなかったため、マンチェスターUはハーフウェーライン付近まではCBがボールを持って押し上げることができました。しかし、この先になかなか進むことができない展開が続きました。この原因はマンチェスターUのビルドアップ時の選手配置が整備されていないことにあります。

マンチェスターUのビルドアップ時にはCBとCHのマクトミネイは中央にとどまりますが、その他の選手は固定されておらず流動的にポジションを変えます。また、CBのヴァランとマグワイアはセンターサークルの幅くらいに立つことが多く、近めの距離間を取ります。そのためウェストハムの2トップがCBの前に立っている形となり、CBからの縦パスのコースは消されている状態になります。これによってウェストハムの4-4-2の守備ブロックの「2」のラインを超えるには2トップに脇のスペースに選手が必要になるのですが、ここに誰もいない場面が目立ちました。この2トップの脇のスペースに選手がいないためハーフスペースに顔を出している選手がいても、そこまでパスを届けることができません。よくビルドアップの形で言われる2-3-5(3-2-5)の「3」がうまく作れていないため、CBから前にボールが進まなくなっていました。

ウェストハムの2トップの脇に誰もいない。
これによってハーフスペースに顔を出すグリーンウッドなどに縦パスが通らない。
CBは横かロングボールの選択肢しかなく前に進めない。

2トップの脇のスペースを使えず、CBから前進できないでいるとCロナウドとBフェルナンデスがこのエリアまで下がってくる現象が起こります。これはこの2人がサッカーをよく理解し、今ピッチ上で何が起き、チームに何が足りないかがわかっているからこそ起きる現象です。ですが、ブルーノはともかくCロナウドまで下がってきてしまうと前線の厚みは弱くなってしまうので、この2人が下がってこなくても前進できるように配置を整備する必要があります。

下の図は20分50秒の場面で、この2トップ脇にCロナウドが下がってくる現象が起きています。

20分50秒

2トップ脇に誰もいない状態であり、サイドのAテレスは距離が離れているためボーウェンにカットされるリスクが高いのでボールを持ってるマグワイアは横のヴァランしか選択肢がない状況です。そのため、ボールを前進させるためにCロナウドが2トップ脇まで下がってきてしまい、前線に誰もいなくなっています。

ただ、この場面ではマグワイアが1タッチでアントニオを外してうまくBフェルナンデスへ縦パスを通し、その後Cロナウド→エランガとサイドまでわたってクロスからシュートまで繋がりました。しかし、適材適所に選手が配置されていないため、クロスを上げた時にペナルティエリア内にいたのはグリーンウッドとダロトであり、ダロトのヘディングシュートも大きく枠を外れました。
YouTubeのハイライトに映像があるので記事の最後にリンクを載せておきます。

もしこの場面で配置を適材適所に整備するなら下の図のようになります。

もし配置を整備するなら

これでマグワイアの選択肢はヴァランとフレッジ(ブルーノ)に増え、フレッジからハーフスペースのエランガにパスが通るようになり、Cロナウドも前線にいる形になります。流動的にポジションを変えることも必要ですが、大体の枠組みはもう少し整備する必要があると思います。

(2)少し改善された後半とエランガの課題

この選手配置ですが後半からは少し改善されていました。

選手の配置が少し整備された後半

前半はマクトミネイを中央に固定しフレッジが流動的に動き回っていましたが、後半からはCHのどちらかが2トップの脇を取ることが増えました。また、SBが前半よりも数歩内側に絞ることが意識されているようにも見えました。これによって前半よりもボールを運ぶことができるようになりました。

ただ、前線まで運んでもそこから攻撃は停滞していました。その理由の1つとしてはポケットやサイドの深い位置を取れていないことにあります。下の図はマンチェスターUのボールタッチとクロスのエリアです。

マンチェスターUのボールタッチエリア(左から右に攻める)
マンチェスターUのクロスを上げた位置

このようにサイドの深い位置とポケットに侵入できていません。ブロックを作った相手を崩すにはこのエリアを取ることが重要なのはお隣のマンチェスターのチームが証明しています。また、深い位置まで侵入でいていないのでクロスも低い位置からのアーリークロスが多くなっています。Cロナウドというクロスに合わせる達人がいるのでできるだけ深い位置まで運んで有効なクロスをあげたいところです。


あと少し気になるのが左SHで先発したエランガのポジショニングです。2トップの脇から味方がボールを運んで、ハーフスペースに顔を出してほしいところでもサイドに張りっぱなしでAテレスと縦の関係になりパス守備ブロックの中に出せない場面が何度かありました。まだ若い選手ですがこういうところで周りを見て顔を出せるようになれば、よりチームに貢献できる選手になっていくと感じました。

ウェストハムの守備の前に攻撃が停滞していたマンチェスターUですが、ラストプレーでゴールを奪い劇的勝利。それも交代で入ったマルシャル、カバーニ、ラッシュフォードからのゴール。しかも最後に決めたのが試合から完全に消えていたラッシュフォード。これぞビッグクラブというような勝ち方でした。

(1)で取り上げた選手配置が整備されていない場面の映像がある動画です。1分25秒からです。
          ↓


最後までご覧いただきありがとうございました!
ラリーガ、プレミアリーグを中心にサッカーを考える記事を投稿しています。
また次の記事でお会いしましょう!!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?