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レアルマドリードvsグラナダ〜全員で掴んだ勝利〜[ラリーガ第23節]

いつもは中立の立場で書いてるけど、今回はマドリディスタ目線で書いてみた。

(1)ゼロトップへの再挑戦

マドリ―は大エースのベンゼマが怪我のため大事を取っての欠場。代わりにCFに起用されたのはイスコ。コパデルレイのビルバオ戦に続いてCFに下がってくるタイプの選手を起用する「ゼロトップ」のシステムでグラナダに挑む。ちなみにビルバオ戦はアセンシオがCFだったが全く機能せずに敗退。そこでまずはビルバオ戦のゼロトップが機能しなかった原因を振り返っていこう。

(1-1)ビルバオ戦振り返り

スタメンはこちら

ビルバオ戦スタメン

マドリーのゼロトップが機能しなかった原因は主に2つ。1つ目はビルバオの強度の高い同サイド圧縮の前にビルドアップが機能せずボール保持がうまくいかなかったこと。ボール保持ができなければゼロトップが機能するわけもない。

マドリーのGKからのビルドアップ時のビルバオの守備の配置

上の画像がマドリーのGKからのビルドアップ時のビルバオの守備の初期配置。2トップと両SH、CH1枚で五角形を作りカゼミロとクロースを囲む。もう1枚のCHは最終ラインとの間を埋めてSBはWGにつく。この形にしてGKとCBから中盤へパスを通させずにSBへとパスを回させる。

ビルバオの同サイド圧縮

そのSBへのパスをスイッチとしてプレススタート。まず左SHのムニアインがLバスケスへプレス。イニャキがミリトンへ牽制、ベスガがモドリッチを背中で消せる位置へ移動。そして右CFのRガルシアと右SHのニコが逆サイドを捨ててそれぞれカゼミロとクロースにつく。こうしてマドリーをサイドに閉じ込める。

ビルバオの同サイド圧縮

マドリ―はGKを経由して逆サイドへ展開して前進を試みる。これに対してビルバオは画像のようにそれぞれスライドして対応。このスライドがめちゃくちゃ速い。特に35歳のくせに一番スライドの距離が長いRガルシアが走りまくってた。本当にラリーガには年齢詐称組が多い。
あとはマドリーの左CBがナチョだったのも影響した。右利きだから角度的に一歩分ディフェンスが間に合いやすくなる。いつも通り左利きのアラバだったらディフェンスに来る前に、左足でクロースやアセンシオに斜めにパスが通せたかもしれない。だからアラバとナチョを入れ替えてもいいかなと思ったけどアンチェロッティは動かなかった。

ゼロトップが機能しなかった原因の2つ目はマドリーの選手配置が整理されていなかったこと。

整理されない選手配置、噛み合わない組み合わせ

ビルバオ戦のマドリーのWGは右にロドリゴ、左にヴィニシウスでどちらもサイドに張るタイプ。そしてIHはモドリッチとクロースで高い位置を取って前線へ飛び出していくよりも、低めの位置でボールを触りながら試合を組み立てるタイプ。だからアセンシオがCFの位置から下がってきても、それに連動してCFの位置に入る選手がいない。さらに付け加えるとSBのアラバとLバスケスはWGが張っているから高い位置を取れない。

その結果7分40秒の場面ではアセンシオが下がってきて代わりにアラバが最前線で裏を狙って飛び出していた。この形自体は悪いことではない、問題はこれを意図的に作っているのではなくてそうなってしまっていること。アラバしか最前線に入る選手がいないこと。

長くなったけどこの2つがマドリーのゼロトップが機能した原因。1つ目は相手のことだから別として2つ目は修正が必要。ではグラナダ戦ではどう変えてきたかを見ていこう。

(1-2)グラナダ戦のゼロトップ

スタメンはこちら

グラナダ戦スタメン

ビルバオ戦からの変更点は
右SB Lバスケス→カルバハル 左CB ナチョ→アラバ 左SB アラバ→マルセロ
アンカー カゼミロ→カマヴィンガ
右WG ロドリゴ→アセンシオ 左WG ヴィニシウス→ロドリゴ
CF アセンシオ→イスコ

・整理された選手配置

まず選手配置の部分。下の画像のように2-3-5の形となった。

マドリーの選手配置
2-3-5の形を作りながらポジションを入れ替える

右サイドはカルバハル、モドリッチ、アセンシオで三角形を形成。基本は後ろにモドリッチ、サイドに張るカルバハル、内のレーンを取るアセンシオという配置で、そこからポジションを入れ替える。これができるのはカルバハルが帰ってきたから。流石は怪我しなければ世界一の右SB。
左サイドはマルセロとロドリゴで内外のレーンを使い分ける。マルセロはプレータイムこそほとんどないが今季はそこまで悪くない印象。少なくとも昨季よりはいい。クロースはいつも通り低い位置で組み立てに参加する。

そして中央のレーン。イスコがCFの位置から下がった時には、ロドリゴがよく中央へ入っていた。裏を狙うランニングを何回も見せていたので、アンチェロッティからそうとう意識づけられていたと思う。そのロドリゴに何本もロングボールが出ていたが、グラナダにとってあまり脅威とはなっていなかった。というのもロドリゴのランニングは単独のものが多く、イスコがCBの意識を引き付けてその裏を狙うといった連動性はあまり見られなかった。むしろイスコの方がアセンシオに連動して上手くポケットを取っていた。

12分30秒の場面

12分30秒の場面。
アセンシオがボールを持つモドリッチに足元で要求しながら近づいたことで、CBのトレンテの意識が引き付けられてグラナダのCB間の距離が広がった。ここにイスコが連動して抜け出して、モドリッチからパスを受けてポケットを取った。これによってグラナダのディフェンスラインがグッと下がりイスコからの折り返しにアセンシオが合わせた。このような動きがロドリゴにも見られればより脅威となったと思う。

(2)ヴィニシウス抜きの戦い方

この試合では守備でもいつもとは違う戦い方に挑戦した。今季のマドリーはハイプレスを辞めて4-5-1で自陣に構える守備をしていた。自陣に構えて奪ったらヴィニシウスのスピードを活かしたカウンターが今季のマドリーの形だった。しかし今節はヴィニシウスが出場停止で欠場。そのため前からプレスをかけに行く守備に挑戦した。

マドリ―はCFのイスコがCB間を切り、モドリッチとクロースはCHのミージャとゴナロンを見る。ただしピッタリとつくわけではなく、ディフェンスラインまで下がったりした時には深追いはしない程度の守備だった。アセンシオはCBのトレンテと左SBのカルロスネバの中間に立っていた。

マドリ―が挑戦したハイプレス

しかしマドリーのプレスは機能しなかった。マドリーはグラナダの右のハーフスペース、クロースの脇のところに降りてくるプエルタスやコジャードを捕まえきれなかった。クロースはゴナロンを見ているし、カマヴィンガは遠くて出ていけない。また、ロドリゴはSBのキニを意識していたためここに対応する選手がいなかった。

左サイドで数的優位を作られてプレスを回避された後、右サイドのアセンシオの背後へ展開された。このCBとSB間に立つアセンシオのポジショニングも中途半端でCBとSBどちらに対しても有効な守備ではなかった。

・後半

ハーフタイムでマドリーはカマヴィンガとバルベルデを交代。クロースをアンカー、バルベルデが右IH、モドリッチが左IHとなった。

(3)守備の修正

後半はまず守備から振り返っていこう。とは言っても前半に比べてグラナダがボールを保持する時間は大幅に減ったので簡単に。

前半は捕まえきれなかったグラナダの右のハーフスペースに降りてくる選手。ここに対してはマルセロかクロースが捕まえに行くように修正した。クロースが前に出ていった時にはバルベルデは後方に残りディフェンスと中盤の間のスペースを埋めた。これでライン間のケアをしつつ、マークを担当するCHへパスが出たらスプリントをかけてプレッシャーをかけた。守備でも1人で複数人の仕事ができるバルベルデにしかできない役割だった。

後半、修正された守備

(4)リスクがあるようでない攻撃

では最後に後半のマドリーの攻撃を振り返る。前半は2-3-5の形となっていたが、後半はCBのアラバとミリトン、アンカーのクロースを後ろに残して他の選手はどんどん高い位置を取った。

高い位置を取る選手が増えたことで前半よりもサイドの高い位置でWG、IH、SBの三角形を形成。CBが後方に位置して攻撃が詰まったときの逃げ口となった。高い位置で3人が絡むことでグラナダはSBとSHの2人では対応しきれなくなる。その時はCHがサイドにサポートに行く、またはCBがサポートに行ってCBが出ていったところをCHが下がって埋めた。どちらの守り方でもCHが移動するためPAの手前にスペースができる。このエリアからのミドルシュートの形を意図的に作っていたと思う。今季のマドリーはここからのシュートがよく見られる。

CHをサイドに引き出してPA手前にシュートを打てるスペースを作り出す
CBは後方で逃げ口となり、攻撃が詰まったらバックパスを受けて逆サイドへ展開

この形からチャンスに繋がったのが54分55秒の場面。右サイドでカルバハル、アセンシオ、バルベルデが三角形を形成してCBのトレンテを引き出す。CBが引き出されてたためCHのミージャは一列下がってCBのポジションを埋める。これによってPA手前にスペースができ、そこでアラバがパスを受ける。ロドリゴとのワンツーでPA内に侵入してアラバからパスを受けたモドリッチが相手を外してシュート。結果的にシュートはブロックされたが理想的な崩しだった。

54分55秒の場面

後ろにアラバ、ミリトン、クロースを残して全員で攻めるというのは一見するとリスクがあるように見える。しかし、これは逆に失点のリスクを抑える形となっている。マドリーが人数をかけて押し込んだ時には、グラナダはSHも下がってディフェンスラインに吸収される。これは前半からそうだった。だから少し後ろに人数を残すよりも、SBもIHも高い位置を取ってグラナダを自陣に閉じ込めることで前半のようなカウンターを食らわなくなる。実際に後半のグラナダは両SHとコジャードも押し下げられて6-3-1のようになっていた。前に残っているのがLスアレス1人だけならミリトン1人で問題なく対応できる。このアンチェロッティの采配は攻守両面に効果のある采配だった。

押し込んで押し込んで得たCKからアセンシオのキャノン砲が炸裂して決勝点。ベンゼマ、ヴィニシウスの主軸2人がいない中で全員で掴み取った勝利。まだまだ課題はあるが後半戦に向けて勝ち点3以上に価値のある勝利となった。


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