ロシアvsクロアチア~旧型GKの苦労~[W杯欧州予選グループH第4節]
欧州カタールW杯予選アーカイブ化計画グループHの1本目は共に勝ち点6の1位クロアチアと2位ロシアの直接対決です。
この記事ではロシアの守備の狙いと状況を変えたコバチッチの立ち位置の変化を解説し、そして注目選手を紹介します。この企画では毎回注目選手を紹介していきますよ!
試合概要
メンバー
試合内容ふり返り
実はこの両チーム、ロシアはジュバ、クロアチアはモドリッチとキャプテン不在で9月のW杯予選を戦います。その影響もあってかこの試合ではお互いなかなかチャンスを作り出せません。ボールを支配したクロアチアがクロスを上げ続け、ロシアがそれをことごとく跳ね返すといった内容でした。決定機と言える場面も14分のロシアのザハリャンのシュートくらいでした。結局最後まで得点は生まれずに0-0の引き分けに終わりました。
(1)ロシアの守備の狙い
ロシアの守備の狙いはクロアチアのGKにボールを持たせロングボールを蹴らせることでした。GKのビルドアップ能力の低さを利用しようという戦術です。
まずロシアの3トップは両WGがクロアチアのCBに対応し、CFのミランチュク(15)がアンカーのブロゾビッチ(11)にマンマーク気味につきます。IHの2人はそのままクロアチアのIHにつきます。
クロアチアのCBがボールを持った時、ロシアのWGはSBへのパスコースを切りながらプレスをかけてGKに戻させます。この時点で下の画像のようにGKに近い距離にいるクロアチアの選手はマークにつかれている状況となります。サイドにはフリーの選手ができますが、GKのキックの精度が低いためここに正確なパスは出てきません。実際にサイドへのパスがそのままタッチラインを割る場面が何度も見られました。GKは近くの選手、サイドのフリーの選手のどちらにもパスが出せないため前線へとロングボールを蹴るしかなくなります。ロシアはこのロングボールをディフェンス4枚で待ち構えて回収します。サイドを捨てることができるため、後ろに4枚を残すことができるのです。この守備が立ち上がりはよく機能していました。
(2)状況を変えたコバチッチ
このようなロシアの守備で立ち上がりは上手くボールを運べなかったクロアチアでしたが、コバチッチの立ち位置の変化によって状況の打開を試みます。
試合の途中からコバチッチが低い位置まで降りていく場面が見られるようになりました。下の画像は17分20秒の場面です。ここではコバチッチ(8)が低い位置まで降りていくことで画像の○のエリアで数的優位を作ったため、ブロゾビッチ(11)がフリーとなりました。さらにここにプレスをかけるためにクロアチアのアンカーのバリノフ(8)が出てきたため、その背後のスペースでブラシッチ(10)がパスを受けて擬似カウンターに繋がりました。
コバチッチの立ち位置の変化によってボールを運べる形を作り出したクロアチアでしたが、それでもGKのビルドアップ能力の低さによる機能不全は起きていました。
コバチッチが低い位置まで降りていくとロシアの中盤の選手もバイタルエリア付近までは付いてきます。そうするとその選手の背後で特にトップ下のブラシッチがフリーになる場面が増えます。このような場面を作れているということは、(1)で解説したロシアのGKから近い選手を抑えてロングボールを蹴らせる守備は機能していないことになりますが、このフリーの選手にGKからパスを通せませんでした。下の画像は40分50秒の場面ですが、ここなんかはグラウンダーでも通せるような場面でした。しかし、GKは前線のペリシッチへロングボールを蹴ってしまいロシアにボールを回収されてしまいました。ペリシッチめっちゃキレてた。
注目選手:ギレリュメ
今回注目選手に取り上げるのはロシアのGKギレリュメです。ロコモティフ・モスクワ所属15年、35歳のベテランGKです。彼の特徴はキックの精度の高さ。クロアチアも(1)で書いたロシアの守備のように前線からプレスをハメにきていたのですが、ギレリュメは中盤やサイドのフリーの選手への正確なロングボールでそれを鮮やかに回避していました。現代のGKに必要な能力を持ち合わせているギレリュメに今後も注目です👀
試合結果
2021.9.2
FIFAワールドカップ欧州予選グループH第4節
ロシア 0ー0 クロアチア
【得点者】
なし
最後までご覧いただきありがとうございました。このようなサッカーを戦術的に考える記事を書いています。この企画はまだまだ続きます。ぜひ他のグループの記事も読んでみてください!
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