横浜F・マリノスvsFC東京~問題点が呼び込んだ退場劇~[J1リーグ第6節]
代表WEEKを挟んで2週間ぶりのリーグ戦。FC東京からは松木がU21、長友がA代表に招集された。2人の成績は次の通り。
日本代表はW杯出場を決めた。おめでとう!長友さんバモォ!!
またこの代表WEEK期間に2つのニュースがあった。
1つが橋本拳人のヴィッセル神戸移籍。もちろんFC東京に帰ってきてほしかったが、今回の移籍は特例で複雑な背景もあったみたいだししょうがない。タイミングも悪かった。
もう1つが内田宅哉が名古屋グランパスへレンタル移籍。普通は出場機会のない選手のレンタルはプラス要素とも言えるが、今のFC東京の場合はアルベルさんの下でポジショナルプレーのトレーニングができないのはかなりのマイナス要素。このまま完全移籍になってしまうかも。
来季以降どうなるか分からないけれど内田選手名古屋でも頑張れ!
前置きが長い。ではリーグ戦第6節横浜FM戦を振り返っていこう。昨季の悲劇を払拭する試合だ!
試合概要
メンバー
横浜FMの前節の相手はサガン鳥栖。雨でピッチコンディションが悪い中0-0の引き分け。こういう試合なので特にコメントすることはなし。その試合からはスタメン4人変更。
FC東京は多分コロナ陽性で離脱の小川に代わりエンリケが左SBでスタート。それ以外は前節と同じ。
(1)運命を左右したキックオフ
試合開始。いきなりこの試合の運命を左右する場面が訪れる。
キックオフからディエゴは後ろに下げずに右サイドの紺野へ。同時に左サイドではアダイウトン、エンリケ、松木が最前線へ駆け上がる。そして紺野がゴール前へクロスを放るもCBの岩田がクリア、こぼれ球を拾った宮市がドリブルで運びカウンター。そのカウンターを止めようと必死に戻った松木が宮市を倒してファール。開始僅か15秒でイエローカードを貰った。
このキックオフからの攻撃はFC東京が準備してきたものだと思うが、大きな欠陥がありハイリスクローリターンだった。
その欠陥とは前と後ろで選手が分裂してしまっていたこと。紺野がクロスをあげた時点で最前線にはディエゴ、アダイウトン、エンリケ、松木の4人。最後尾には長友、森重、安部、木本の4人となっていた。このように前と後ろで分裂したことでこぼれ球を拾う選手がいなくなり、フィルターも薄くなるためカウンターを食らいやすくなる。
カウンターで宮市が持ち運んだ時点で横浜FMの最前線はAロペス1人だったのに対してFC東京は最終ラインに4人もいた。こんなにいらない。紺野がクロスをあげるときに安部は下がって行ったが、ここで下がらずに上の図の〇のエリアにいればこぼれ球を拾えたかもしれないし、拾えなくてもカウンターを遅らせることができたはず。今季最低と言ってもいいような一連のプレーに感じた。
(2)11人目のフィールドプレーヤー
FC東京は横浜FMのビルドアップに対して前線から強くプレスをかけに行った。
両WGのアダイウトンと紺野はSBへのパスコースを切りながらCBへプレス。横浜FMの中盤3枚に対してはアンカーの青木が西村のマークにつき、CFのディエゴはWGよりも低めの立ち位置を取ってIHの安部とCHの喜田、渡辺に対応した。CHがポジションを入れ替えてもそれについて行くのではなく、安部が左のCH、ディエゴが右のCHと言った感じで人よりも場所を基準に守っていた。
その理由を解く鍵になるのが松木の役割。松木は右CHと右SBどちらにも対応できる立ち位置を取り、アダイウトンの外切りプレスを外された時には右SBへプレスをかけ、ディエゴが前にプレスに出たら右CHのマークについた。そのためポジションを入れ替えてもディエゴが右CHにつく場所基準の守備になったのだと思う。また、前半の途中からは松木は右SBへの守備の意識が高くなっていた。
このようにWGの外切りプレスを外された時の対応として、左サイドは松木がSBに対応しエンリケが前に出てくることはなかった。逆の右サイドは安部が対応しに行ったり、長友がプレスに出てくる場面があった。ここについては前に出る守備を得意とする長友の良さを活かす形だった。
この守備自体は上手くいっていたがFC東京を悩ませたのがGKの高丘。横浜FMは高丘をCBの間まで上げてビルドアップを行った。FC東京はこの高丘に対して誰がプレスに行くのかが定まらず、自由にボールを持たせてしまった。横浜FMの中盤3枚はポジションを入れ替えたり、サイドまで開くなどしてFC東京の選手を動かし、SBは内側に絞りフリーの状態を作り出した。自由を与えられた高丘はマークを外したフィールドプレーヤーに正確にパスを繋ぎFC東京のプレスをひっくり返していった。
(3)弱点を消した左SBエンリケ
横浜FMがFC東京を押し込んだ際には右サイドからの攻撃が多かった。この右サイド(FC東京にとっての左サイド)はFC東京の弱点だと自分が考えていたサイドだった。
左WGのアダイウトンは守備時にも自陣に戻らず前残りになる。この試合ではいつもよりは戻っていたがそれでも遅れることが多かった。アダイウトンが戻らないぶん松木が左SHのように振舞ってサイドの守備に回る。しかし、IHの位置からサイドまで行くのにどうしてもラグができるため、FC東京の左SBは相手のWGと1対1になることが多い。これが左サイドが弱点と考える理由の1つ。もう1つ理由があるけどその要素はこの試合ではなかったのでまた今度。
横浜FMには強力なWGがいるため、試合前からこの部分を心配していたが小川の離脱で急遽?左SBで先発となったエンリケがその弱点を消して見せた。アダイウトンの戻り遅れによって右WGの宮市に何度も1対1を仕掛けられたエンリケだが、少し間合いを空けながら対応することでスピード勝負に持ち込ませず、突破を許さなかった。DAZNのハーフタイムデータでは右サイドからの攻撃が60%を超えていた横浜FMだったが、エンリケの守備によってチャンスを作り出すまでには至っていなかった。
後半
(4)ハーフタイムの両チームの修正
ハーフタイムで1枚ずつ選手交代。横浜FMは宮市に代えて水沼、FC東京はアダイウトンに代えて永井を投入。そして両チームとも前半から戦い方を修正してきた。
(4-1)横浜FMの修正
まず横浜FMの修正から振り返ろう。修正を加えたのは右サイドの攻撃で、前半は(3)で書いたように宮市はエンリケにドリブル突破を許してもらえずチャンスを作り出せなかった。その宮市と交代した水沼はエンリケに対して勝負を仕掛けなかった。エンリケは相手に対して間合いを詰めずに対応していたため、水沼はエンリケを抜かずに直接クロスをあげることができた。もちろん相手が前に立っているため、ぶつけないように蹴る必要があるが、それだけのキック精度を水沼は持っていた。
エンリケは後半も相手にドリブルで突破されることはなかったが、水沼にはクロスから多くのチャンスを作られ、その内1本が得点に繋がった。「抜けないなら抜かなければいいのかもしれんな」という横浜FMの発想だった。
(4-2)FC東京の修正
次にFC東京の修正。修正を加えたのは前半悩まされていた高丘に誰が対応するのか?という部分。
この部分を後半からは松木と安部がCHのマークを担当して、ディエゴを前半よりも高めの位置を取らせることで高丘にプレスをかけやすくした。更に、アダイウトンから永井に代えることでCBからGKと2度追いを可能にして強度を高めた。また、松木がCHのマークを担当することによって前半よりもSBへのマークが緩まるため、SBにボールが渡っても爆速でプレスバックができる永井を入れて対応しようという狙いもあったと思う。
守備面については試合後インタビューで永井が発言している。
この修正で高丘が自由にボールを持つことは減った。しかし、前半よりもIHとCFを高い位置に押し上げたためアンカー周辺のスペースが広がる。そのスペースを上手く使われる場面が増え、プレスを回避された時にはピンチにつながりやすくなった。
松木が退場した場面もこの形からだった。この時間では松木安部がCHの4-2-3-1となっていて、退場した場面では安部が横浜FMのCHまで出ていっていたため松木がアンカーのようになっていた。
アンカー松木の横のスペースでCFのレオセアラが縦パスを引き出し、その流れでパスを受けた仲川が前を向いた。その仲川を松木が後ろから倒して2枚目のイエローカードで退場という場面だった。(1)で書いたように1枚目も組織の問題点をカバーする形で貰ったカードだった。なのでこの退場はチームの問題が招いたものだった。
おわりに
FC東京が目指すサッカーを目の前で見せつけられた。特にGKのビルドアップ、SBの立ち位置とFC東京が苦戦している部分の完成度が高く、そこから今の持ち味であるプレスを攻略された。それでもプレスをかけ続け、1人少なくなっても辞めなかったのはスタイルを貫く姿勢を感じた。
横浜FMは何年も積み上げたものが今の姿であり、FC東京は今年から取り組んでいる段階。数年後、今の横浜FMのようなサッカーを見せてくれるのを楽しみにしよう。
試合結果
2022.4.2
J1リーグ第6節
横浜F・マリノス 2-1 FC東京
日産スタジアム
【得点】
横浜F・マリノス
8' 西村 拓真
47' アンデルソン・ロペス
FC東京
12' 安部 柊斗
【退場】
FC東京
75' 松木 玖生
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