日本vs中国~選手批判をする前に理解すべき組織構造~[W杯アジア最終予選第7節]
試合概要
メンバー
得点
日本
13' 大迫 勇也(1ー0)
61' 伊東 純也(2ー0)
(1)犠牲になった左サイド
最終予戦で日本の攻撃の武器となっているのは右サイド。右WGの伊東と右SBの酒井が内外のレーンを使い分けながら、IHの田中が絡むことで流動的な攻撃を見せます。先制点となったPK獲得の場面もまさにその形からでした。中国のボランチ脇でCH(この場面では遠藤)がパスを受けて、SHを引き付けてサイドに張ったフリーの酒井へ。そして酒井が右SBを引き出してニアゾーンに伊東が走りこんでクロス、PK獲得という流れでした。
中央で起点を作るのがCFの大迫。CFの位置から下がってくることでパスを引き出します。中国は大迫に対してCB2枚で見つつ、下がって行ったら1枚が必ずついていって対応。ファールになってもいいから強くプレッシャーをかけて潰しにきました。ここが日本の攻撃の起点となるため意地でも止めようという意識がありました。下がる大迫にCBがついてくるということはその背後にはスペースができます。そのスペースを狙うのが左WGの南野です。南野は左から中央にポジションを変えて、大迫とは逆の矢印を描くことで中国のディフェンスラインの背後を取ろうとします。オーストラリア戦から日本は4-3-3に取り組んでいますが南野と大迫の関係は4-2-3-1の時と大きくは変わっていません。
しかし、これによって割を食っているのが左サイドです。南野が中央寄りでプレーするため左SBの長友は孤立気味になり、長友がボールを持った時には横、または後ろのサポートしかない状況が多くなります。そのため、左サイドから攻め込むには長友自身がドリブルでDFを突破しなければならなくなります。長友にはドリブル突破に必要な技術とスピードはなく、もちろん中山にもありません。長友を中山に代えるだけで解決する問題ではないのです。今の日本の構造のまま左サイドからの攻撃を機能させるには三笘をSBで使うぐらいしないと難しくなっています。
このように右と中央は複数の選手で良い関係を作り、機能するようになっています。しかし、そのしわ寄せが左サイドにきています。
また、左サイドではPK獲得の場面のようなニアゾーンを取る動きはほとんど見られません。これはWG、IH、SBが全員右利きであることが影響しています。左利きであればニアゾーンで抜け出してそのまま利き足でクロスを入れることができますが、右利きだと逆足でのクロスになります。
左のニアゾーンを取ってくれそうな左利きの選手だと久保がいます。しかし、久保を左WGにすると南野と大迫の関係が崩れますし、左IHにすると日本が取り組んでいる遠藤、田中、守田の3CHを諦めることになります。格下相手では今までの4-2-3-1で良いですが、W杯で格上との試合になればインテンシティの高い3人を同時起用するシステムは必要になる場面が出てきます。出場できればの話ですが、、
じゃあ大迫を外して南野をSBのサポート役にすればよくね?となるのですがそれはまた別の問題が出てくるわけで、そこについて(2)で書いていきます。
(2)大迫に頼ってきた弊害
この試合では58分から大迫に代えて前田を投入しました。ポストプレーが特徴の大迫とは違い相手の背後を狙うスピードが特徴の選手です。そのため、大迫の時とは別の攻め方をする必要があります。
しかし、前田投入以降も大迫の時と同じようにハイボールを前線に蹴り、前田が頑張って競り合う場面が目立ちました。これでは前田のよさが出るはずがありません。そもそも森保さんが就任して以降の日本はずっと大迫を1トップにして縦パスを収めてもらい、そこに2列目の選手が絡んでいく攻撃を続けてきました。なので大迫以外の選手がCFに入ってもその形しか持っていません。
前田のよさを活かす攻撃がこの試合で見られたのは59分25秒の場面。前田が背後を狙って走ったことで中国のディフェンスラインが押し下げられてライン間が広がり、そこで伊東が板倉から縦パスを引き出しました。ここではその後の伊東から遠藤へのパスがずれたためチャンスにはなりませんでしたが、伊東がそのままドリブルで運べるぐらいフリーになっていましたし、前を向けていれば前田のスピードを活かすスルーパスが出せた場面でした。
このような攻撃を何度も作ることができればよいのですがこれ以外にはあまり見られませんでした。なのでこちらも長友と同様に、大迫が悪いから外して違う選手を使えばよくなるとも言えないのが森保JAPANです。今まで大迫に頼ってきた結果です。
最後までご覧いただきありがとうございました!
ラリーガ、プレミアリーグ中心にこのようなサッカーの記事を書いています。
次の記事もぜひご覧ください!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?