2022/6/4

映画をシアターで2本見た。疲れた。あと、また植物を買った。なんだか週末が到来する度に植物を購入している気がする。今日はストレリチアの一種を購入したのだが、ストレリチアにも色々種類があり、どのストレリチアに相当するかはある程度の大きさまで育ててみないと正直判別が付かない。今後の楽しみとしたい。

さて、今日見た映画は、先々週に引き続き、ジェームス・ディーンの出演作である『エデンの東』と、話題の『トップガン マーヴェリック』である。各々、軽く感想を残しておきたい。

『エデンの東』

『エデンの東』は、簡単に話をまとめると、スタインベックの長編小説を映像化した作品で、旧約聖書に登場するカインとアベルの確執を現代版の家族劇にアレンジしたものなのだが、登場人物間で以下の対立構造がある。

かつては農場経営者であったが、レタスの冷蔵輸送ビジネスに着手し始めた敬虔な父親アダムと、何よりも束縛を嫌い、彼との家庭を捨てて出奔したケートとの間には、キャルとアーロンの双子が存在するのであるが、ここでキャルはケート、アーロンはアダムの気質を各々受け継いでいると考えてよかろう。

出奔後、頭脳一つで酒場の経営者としてのし上がってきたケートは、清廉さを求めるアダムに従順であろうとする自分が我慢出来ず、長閑な農場と双子を置いて、都会という新天地で身を立てることを決心するのであるが、キャルも生みの母である彼女同様、父親アダムとはどこか折り合いが合わず、父親に楯突くような精神性を内に秘めている。それに対し、アーロンはアダムの善良さを受け継いだ生真面目で従順な青年であり、そうであるがゆえに父親からの寵愛を一身に受けている。

ここでの問題は、キャルとアーロンという双子をめぐって、アダムの寵愛がどのように配分されているかということである。アダムは、アーロンが自分に似た気質を有することを見抜いており、彼にばかり寵愛を注ぐ一方、自分と相反する気質を有したケート(彼女はきわめて自由意志を重視する人間であり、全てに対して反抗的である)を愛してしまった自分自身への憎しみを、ケートの面影を強く残しているキャルに対して転移させてしまっているせいか、常日頃からキャルを腫物扱いしている。すなわち、アダムの寵愛がアーロン一辺倒になっている状況が、アダムへの愛を渇望するキャルをアーロンの抹殺(戦争という道義的悪に反対していたアーロンだが、キャルによって実の母親に引き合わされ、その絶望のあまり、彼は衝動的に出兵という道を選び、結果的に自分の道義を自分で破壊する事となる)へと駆り立たせる要因であると考えられよう。

本作の一番の見どころは、アダムの誕生日に、双子が各々プレゼントを捧げるシーンではないかと思う。キャルは、アダムがレタスの冷蔵輸送ビジネスに失敗した損失額を取り返そうと、大戦のインフレを利用して大豆の先物取引に挑戦し、見事に成功する。その資金を、キャルはアダムにプレゼントとして手渡すのである。それに対し、アーロンがアダムに準備したプレゼントとは、アダムの誕生日に恋人アブラ(彼女もケート同様、アダムとアーロンの清廉さに違和感を感じ、徐々にキャルに惹かれていく)と婚約をする事であった。詰まるところ、キャルは不覚にも人の血で汚れたカネ、アーロンは婚約という純潔性の象徴をもって、父親の愛を買おうとしたわけである。

双子の各々が父親の愛を求める熱度に変わりはないのに、聖書に通底しているコンセプトとしての罪が自由意志を意味するがゆえに、キャルなりの真摯な愛が、アダムから徹底的に拒絶されてしまう(というか、彼の精神構造上、正確には拒絶せざるを得ないのだが)シーンには、胸を締め付けられる思いがした。あのラストシーンで、キャルは本当に救われたのだろうか。ケートのように、エデンの東に逃げてしまえばよかったのに。


『トップガン マーヴェリック』★ネタバレあり

以下、急にボキャ貧になる事をお許し願いたい。あと地味にネタバレするので気を付けてほしい。

上映中、常に泣きそうだった。映像がとにかく格好良かった。伏線回収も最高だった。かつてのライバルであったアイスマンがめちゃくちゃ出世し、マーヴェリックの暴れっぷりを陰で食い止める後ろ盾と化しているなど、旧作のファンの心を掴む演出も欠かしていなかった。

私は特段『トップガン』の一作目のオタクではないのだが、不慮の事故で失った親友グースの息子であるルースターが、パイロットになって自分の目の前に現れてしまい、しかも自分がまさしくその彼の教官役を務めなければならない事態に陥ったマーヴェリックの気持ちを想像したら、もう泣くしかなくなってしまった。しかも、戦闘機乗りの旦那を失ったからには、息子は絶対にパイロットにさせたくないというルースターの母親の意向に従い、彼の海軍入隊志願書を破棄したマーヴェリックに対し、事情を知らないルースターは、マーヴェリックのせいで自分の海軍入隊が遅れた、と彼に恨みを抱いているときた。酷い運命のめぐり合わせである。結果的にマーヴェリックがルースターを後部座席に乗せてミッションを完遂するという行為が、二人が各々親友・父親の死という過去のトラウマを乗り越える動きに繋がっているあたりが、もう胸アツすぎた。

今後は無人戦闘機の時代が来るため、戦闘機乗りはAIに淘汰されてしまう未来が到来し得るのかもしれないが、未来はただの未来だし、先の事なんて分からねえじゃねえかとでも言わんばかりに、熟練の技術を駆使し、ルースターと共にF14を乗りこなして無事に空母に帰還するマーヴェリックは、後世の戦闘機乗りに対し、その精神性というバトンをしっかりと手渡していたと思う。トム・クルーズ、ありがとう。もう最高としか言えない。おわり。

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