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楽譜も読めずに音大に受かった話(前編)

音楽経験ゼロだった僕が、音大付属高校を経て音大で学ぶに至るまでのことをお話しします。長いけど自己紹介代わりに。

1999年に埼玉県で生まれた僕は、都会でも田舎でもない街で豊かでも貧しくもない暮らしをして育ちました。
特に学業には困らず、体育は大の苦手だったものの水泳は誰よりも得意でした。小学生時代唯一の趣味は魚採り。淡水魚(特にメダカ)に目が無く、「将来は水族館で働きたいなあ」なんて。

▷ものごころ

中学に上がり、魚への興味は少しずつ薄れ…。友人の影響で「ゆず」にどっぷりハマりました。ゆずといえばギター。特に部活に所属しなかった僕は、某大手楽器店で一番安いギターを買い、帰ってはひとりで何時間もギターを弾く中学生活を送りました。 当時の遊びは友達とギターを弾くのみ。親への反抗といえば爆音でかき鳴らすことくらいだったかな。  

そしていよいよ受験目前の中学3年生に。教師になりたいということだけははっきりしていたものの、ギターばかりで勉強に無関心なままきてしまったので志望校探しは苦労したものです。まず第1段階では

A)近所の県立高校(偏差値地域ではトップ)
B)幼児教育系都内私立高校(偏差値平均値だが学費高い)
C)私立男子校(偏差値かなり低い)

の3校に絞ったのでした。Aは自宅から目と鼻の先で、水泳部に入れるという事もあり視野に。しかし、地域トップの学校を受験するには科目の得意不得意が激しく、対策が間に合わないと判断し断念。(余談ですが、当時得意だった英語と苦手だった数学の偏差値の差は30も開いていました・・・。)
Bは幼児教育を学べる先進校で、できたてのきれいな校舎で整った設備の中で専門的な教育を早い段階から受けられることに魅力を感じたが、女子校から共学に変わりたて・とにかく学費が高いという様々な不安からボツに。
そして残されたCは、結論から言うと滑り止めとして実際に受験しました。不良多めで恐いし私立で学費高いし。できれば入学したくないという気持ちを持ちつつも、人生初の高校受験ということもあり気合を入れて挑みました。。学科試験はまるでクイズ。また4人ほどでの集団面接では、皆さん珍回答ばかり。一番驚いたのは

面接官「志望動機を教えてください。
隣の受験生「えーっと、ショッピングモールが近いからです。」

緊張して教育理念を丸暗記していった僕は、受かったなとここで確信したのでした。

脱線しましたがCは滑り止めであって第1志望ではありませんでした。では結局どこを選んだか。それは、音楽大学の附属高校という選択でした。
『男性だって音楽の先生になれるんだ。』それを知った僕は、突如音楽教師というものに強い憧れを抱くも、ピアノは弾けないし楽譜が読めない。そこで諦めなかった自分を褒めてあげたいな。一般大学を目指すのではなく、素人だからこそ音楽を基礎から学んで深い専門知識を持った上で教員になりたいという理由からこの結論に至りました。

▷おたまじゃくしと向き合う半年

また淡水魚に目覚めたのかって?残念ながらそうではありません。音楽高校受験に必要な専門科目は全て楽譜を読めることが必須。当時の受験要項は

・楽典(読譜の為の基礎的な音楽理論)
・ソルフェージュ(耳コピして譜面に起こしたり、初見で歌ったり)
専攻実技
・一般学科(2科目のみ)

独学でアコギを弾いていただけの僕は「コード」しかわからず、音符なんて読めません。おたまじゃくしと向き合うと決めたその日からは、音楽室に通い詰めて基礎を教わったり、受験対策の講習会に参加したり。音符も読めないのに、聴いた曲を瞬時に書き取るなんて持っての他でした。とはいえ新しいことを知るのは新鮮で大好きなので、何一つ苦ではなかったのです。

そして問題は専門実技。アコースティックギターで弾くのは主にポップスですが、音大でそんなものができるわけではないことだけは知っていました。「音楽」を学びたい一心だった僕。ギターに限らずなんでもよかったのですが、当然他にできる楽器はなく・・・。

「ギターなら全部一緒か!」という軽はずみな考えで、クラシックギター専攻を目指すこととなり、紹介してもらった先生に初めて専門的に習うことに。実際アコースティックギターとクラシックギターは、楽器・弾き方・演奏ジャンルは全く違うのですが、ポップスの奏法と知識を応用させてなんとか「クラシックギタリスト」になりきったのでした。

ちなみにおたまじゃくしはカエルの子なので両生類です。

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▷異世界に飛び込んだ

朝早くから誰もいない教室で練習をし、帰ってはおたまじゃくし。そんな受験勉強生活を乗り越えなんとか音楽高校合格。入学式の国歌斉唱はなんとオーケストラ伴奏。そしてピアノやバイオリンによる圧巻の祝賀演奏と、刺激的な高校生活が始まることを予感したのです。

絶対音感を持っていて、幼少期からバイオリンやフルートなどの英才教育を受けてきたような人たちに囲まれ、いよいよ始まった音楽漬けの生活。各クラスにピアノが置いてあり、必ずどこからか演奏が聞こえる。極め付けは、左半分が五線でもう半分が無地の黒板でした。五線が引かれた黒板なんて音楽室だけのものだったはずなのに、それが全教室にありました。
1番の衝撃は、当日配られた合唱譜をみな初見で歌い、「中学の合唱コン前あれだけ揉めて音取りしてたのはなんだったの!?」と思わされるほど1発で完璧に近い完成度に仕上げていたこと。まだあまり音符の読めない僕は、ここにいていいのだろうかと戸惑いを隠せませんでした。

ある日のホームルームで、ふと担任の先生が話していました。

「ここはクラシック音楽の学校なので・・・」

ん?ここで僕は激しく動揺。軽音楽を学べるとは思っていないけど、クラシックだけ?なんでもありじゃないの?

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楽譜も読めずに音大に受かった話(後半)へつづく

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