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楽譜も読めずに音大に受かった話(後編)

楽譜も読めずに音大に受かった話(前編)の続きです。

▷200年前にタイムスリップ

音楽を学びたい。その一心で志したはいいものの、音楽のジャンルについての認識は浅かったようで、予期せぬ壁にぶつかったのです。しかし、新しいことが大好きな僕は、みんなにとって当たり前のショパンやベートーヴェンが全て特別で、「クラシックよくわからないけど大好き」という思考に。今考えれば自己暗示だったのかもね。

そんなこんなで約100〜200年前の音楽に触れるようになったのですが、クラシックギターは訳もわからず淡々と練習する日々。アコギのほうが楽しいのになって。一方全員副科として共通して習得しなくてはならないのがピアノでした。こうしてほぼ同時に2つの楽器のデビューを果たしたのですが、ある日裏技を見つけてしまったのです。

かろうじてコードというものを知っていた僕は、これをなんとか活かせないかと考えました。ある日友達のピアノを聴いていると、ビビっと。今弾いてたエチュード、ポップスと同じコード進行じゃない・・・?

コードというものがポピュラー音楽特有のものだと思っていたが、クラシック音楽にもコードを当てはめて考えることができるということを知ってしまった。ここで真っ先に考えたのが、自分が弾く曲の楽譜にコードネームを振るということでした。だってそうすれば、苦手な楽譜を読まなくて済むでしょ?

そんなことをしつつもクラシックの良さをもっと知りたいと感じ、ドビュッシーやバルトーク・ラヴェルといった近現代作品や、稀にブラームス のようなロマン派の音楽は好んで聴くように。特にクラシックとジャズのクロスオーバーとも言えるカプースチンは、合法ポップスのようでたまらなかった。

▷ついに、カエルになる。

音楽漬けで頭がイかれたわけではありません。ある日現役作曲家の先生に、中学時代、ギターを弾くだけでは物足りなくなり作曲に挑戦していたことを打ち明けました。作曲といっても、ちょっとしたギターソロでバラードやなんちゃってフラメンコを録音して残すくらい。それを聞いた先生は、「来週その譜面を持ってきてよ」と。

僕は自分の曲を必死で楽譜に起こし、つたない楽譜を仕上げた。

翌週、言われた通り持っていくと「バイオリンとピアノに書き直してみたら?」と言われ、「バイオリンだなんてそんな大袈裟な・・・」と思いつつもやはり好奇心が勝り、そんな小さなきっかけで以降作曲に一番力を入れることになってしまうのです。


そんなわけで、作曲デビュー→音符(おたまじゃくし)職人=カエル。無理があったかな。


▷おたまじゃくし養殖大成功

高校生活では、クラシックならではの楽器(声楽やチェロなど)でポップスを奏でるアコースティックバンドを結成。作曲によって自分の特性や楽譜に対して多少なりとも自信がついたおかげで、ギターだけでなく自らアレンジも努めました。

そしてあっという間に高校3年生。附属高校とはいえ、いよいよ音大生になるための本格的な準備のスタートです。それぞれ専門の専攻のままエスカレーター式で進学するのが一般的で、よほどのことがなければ在学中に内定がもらえます。しかし僕がクラシックギター専攻を選んだのは、ギターを弾きたいからではなく、専門的な教養を身につけて教師になるため。高校生活は音大進学のための通過点であり、再び進路に悩む日々が始まったのでした。

1)作曲専攻
2)音楽教育専攻
3)クラシックギター専攻

今回もまた選択肢は3つ。
まずは1つ目から。高校時代カエルデビューした僕は、自ら書いた譜面が音になる味をしめ、作曲専攻に挑戦することを視野に入れたのです。今思い返せば怖いもの知らずだしリスキーすぎる。結果から言えば、当時の僕には足りなかった専門的な勉強がさらに必要で断念しました。

そして2つ目、これはもはや当然の選択肢。附属高校ではすでに大学で習う専門知識を教われるカリキュラムなのですが、この専攻は他の専攻に比べ広く浅く学ぶことが特徴だったため、探究心と好奇心に溢れた僕は物足りなくなることが明確でした。

最後が何も気にせすそのままエスカレーターで進学し、クラシックギターを続けつつ教員を目指すという道。これは一番安全で変化のない選択肢で、今考えれば悪くなかったのかなとも思います。先生のおすすめもこれ。
というのも高校在学中この選考だった僕は、1か2を選んだ場合『転専攻』ということになり、内部進学とは言え別途試験を受ける必要がありました。

▷やっと軌道に

右も左もわからず壮絶だった3年間を経て、難なく音楽教育専攻に進学。高望みせず安全第一で、物足りなくなったら転科しなおせば良いだろうと容易に考えていたのでした。

専攻別の授業では、やはり素人向け同然の講義。専門性どうこうではなく、

「アナリーゼというのは〜」「これをドッペルドミナントと言い〜」

ついこの前まで音楽経験ゼロだった僕でも知り尽くしているような内容でした。
しかし周りの学生たちは難しそうに首を傾げ、それを見た僕は

ものたりない

小さな後悔と、自分の成長への喜びを感じてしまったのでした。

やっと楽譜が読めるようになり、音楽生活が軌道に乗り始めたその後についてはまた別の記事で。ものたりなさをどう消化したのか、詳しく書けたらと思います。


というわけで、前編・後編の計2部に渡る「楽譜も読めずに音大に受かった話」
乱文ながらも自己紹介代わりに頑張って書いてみました。

また読んでね

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