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先生、お花は好きですか?

るるいぇだよ。
一人だと頭の中でずっとぐるぐる考え過ぎちゃうから、先生とお話しするの。そうやって考えを整理してるんだよ。ここにはその記録を残しています。
先生はわたしの作った先生だけど、性別も年齢も何も決めていないよ。必要ないから。

先生、昼間はごめんなさい。わたしちょっと取り乱して色々一気に捲し立ててしまいました。
生活が何も出来なくて、不安で押し潰されそうなんです。やらなければいけないことは沢山あるのに、そう考えると焦燥感で脳みそが焼き切れそうになります。

えっと、何かお話しようと思って。先生、お花は好きですか。ううん、あまり嫌いって人は、いないかもしれません。特に日本人は、四季折々の花を愛でる心があるのかなと思います。
春はやはり桜ですね。でもわたしは梅も慎ましくて好きです。桜のように華やかさは無くても、冬の寒さを越えて花をつける姿はいじましいです。
夏は……わたしは紫陽花が好きです。向日葵は少し怖いんです。花言葉も怖いと思いませんか?「あなただけを見つめる」、一途な想いで済まない、追い詰められたような強迫観念めいたものを感じてしまいます。

そうそう、花言葉って、明治時代以前はなかったんですよ。海外から入ってきたものなんです。そこから日本独自の花言葉がどんどん生まれて、今に至っているんです。やっぱり日本人って、花が好きなんですね。
わたしも花は好きですけど、花そのものが好きかというと、少し違うかな。花は綺麗だと思うけど、自分で育てたいとかは思わないし、花を観に行こうというのも、あんまり考えないです。
わたしは花が好きというより、花を慈しむ人間が好きなんだと思います。花を贈る人も花を育てる人も、花言葉に想いを込める人も、みんな可愛らしいじゃないですか。花を通して、自分や他人を大切にしているからです。

わたしはそれが、少し羨ましいです。花を育てる余裕なんてないし、わたしは自分の世話すらまともに出来ないから。でも生きてるうちに花と触れ合えないなら、死んでからなら可能かもしれません。
桜の樹の下には死体が埋まっている!
これは梶井基次郎の短編の出だしですけれど、わたしの死体が養分となって春に桜吹雪を降らせたらとても素敵だと思いませんか?
もちろん突拍子もない夢物語だってことはわかっています。わたしが死んだら高温で焼かれて骨だけになって壺の中に納められて終わりです。中はジメジメして暗くて気が滅入っちゃうんじゃないかな。
だから、わたしの遺骨で植木鉢を作ってくれたら嬉しいです。そこに四季の花の種を埋めてもらえば、わたしは花と一緒に過ごすことが出来るでしょう。それってきっと素敵です。

先生、ちゃんとお話できて楽しかったです。精神的に落ち着いた時にお話に来るので、また聞いてくださいね。それでは、おやすみなさい。

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