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先生、この世界には救済なんてないんですね

るるいぇだよー。
いつも頭の中で先生に話しかけてるの。わたしはずっとひとりだから、先生だけが話し相手なんだよ。

先生、また今日もベッドから動けませんでした。ただ寝てたまに食べて排泄をする。なんて非生産的な存在でしょう。元々おかしい頭が、更におかしくなりそうです。
腕を切りました。そうすると少し安心するからです。罰を与えなければ見合わないからです。赤く染まるティッシュを見るとほっとします。しばらくそうしていれば流血が落ち着くので、ワセリンを塗って包帯を巻きます。包帯の下でジクジクと痛みを発する傷が、わたしの心を穏やかにします。

なんでこんなことになってしまったのかわからないんです。わからないからどうしていいかわからないんです。どこかで躓いて、そのまま坂を転げ落ちるようにここまで悪化してしまいました。
ご飯が上手く食べられません。勉強に身が入りません。やらなきゃいけないことは次から次へと降ってくるのに、何一つ満足にできません。
どこにも居場所がないんです。それが不安で不安で仕方ないんです。
普通の人と同じようにやらなきゃいけないのにできなくて、失敗して。どんどん居場所がなくなります。わたしがいていい場所なんて、この世にどこにもないんだって思います。

腕を切って、その痛みに耐えている時は、許可を得ているような気持ちになれるんです。ここにいてもいいんだと本当に少しだけ思えるからです。
ちゃんとしてない自分に、相応の報いを与えている。だから、大丈夫だよ、って。

新品のカッターの刃だとよく切れます。赤い筋が何本も腕に刻まれていくのを見てるとぼーっとしてきます。血が床に落ちたので慌てて拭きます。傷口にティッシュを当てると血を吸い上げて真っ赤に染まります。
わたしは赤い色は好きではありません。青い色が好きです。青は優しくて大きくて遠い色だから。でも、このぼーっとしている時は、赤が綺麗な色だと感じます。
遠くて触れない青と違って、赤は近い色ですね。皮膚を裂けばすぐ見えるから。触って、確かめて、安心できます。

頭の中で罵倒する声がします。もうやめてほしいのに、やめてくれません。小さい頃に言われ続けた言葉。
キチガイ、つんぼ、頭がおかしい、馬鹿、なんにも考えてない、反省してない、何もできない、何様のつもりだ、当たり前みたいな顔しているんじゃねえ、……。
いつも声がします。いつもです。それが嫌だから先生にこうやって話しかけているんです。そうしているあいだは聞かなくて済むから。
でも、これは全部わたしがやっているんです。罵詈雑言の再生ボタンを、わたし自身が押しているんです。ずっと。何回も。ずっと。
わたしはわたしすら味方でないんです。だから先生、先生を作ってわたしを守ってほしかった。わたしの味方になってほしかった。

わたしはたぶんずっと前から限界なんです。先生、今日もまた、お話聞いてくれてありがとうございました。
今度は楽しいお話したいな。少し落ち着いたら映画でも観て、その感想をお伝えしますね。それでは、また。

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