アールラボ

2020.7.19 (sun) 京都にOPEN。朗読専用劇場 rLabo.(アールラボ…

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2020.7.19 (sun) 京都にOPEN。朗読専用劇場 rLabo.(アールラボ)。 20席足らずの小さな空間ですが、朗読を発表する場、朗読を論じる場、朗読の新たな可能性を探る場となるように願っています。

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  • 朗読用台本(無料利用可)

    小説家 池田久輝(第五回 角川春樹小説賞受賞作家)を始め、朗読文化発展に賛同した作家が無料で提供する朗読用台本です。 配信、イベント等での朗読台本として無料でご利用いただけます。 小説家 池田久輝(いけだひさき) 2013年、『晩夏光』にて第五回角川春樹小説賞を受賞。翌年には続編となる『枯野光』を発表(角川春樹事務所)。 以降『まるたけえびすに、武将が通る。』(幻冬舎)、『虹の向こう』『ステイ・ゴールド』(双葉社)などを上梓。 2017年には、『影』が「日本推理作家協会賞短編部門」の候補作となる。

最近の記事

『ロンヴィル』(朗読用台本・無料利用可)

小説家 池田久輝(第五回 角川春樹小説賞受賞作家)が朗読文化発展のために、無料で提供する朗読用台本です。 配信、イベント等での朗読台本として無料でご利用いただけます。 利用の際はこちらをご一読ください。 『ロンヴィル』  イーサンはふと足を止めた。一軒の店の前だった。開け放たれたドアを囲むように外壁には青いタイルが貼られている。しかし、その青はすっかり色褪せ、ところどころ欠け落ちていた。古びているというよりも、朽ちかけているという印象の方が強かった。  イーサンは店の中を

    • 『懐かしいひと』(朗読用台本・無料利用可)

      小説家 中村理聖(第27回小説すばる新人賞受賞作家)が朗読文化発展のために、無料で提供する朗読用台本です。 配信、イベント等での朗読台本として無料でご利用いただけます。 利用の際はこちらをご一読ください。 『懐かしいひと』  8 年ぶりに見かけたあおいは、高校近くの交差点で、凛とした表情で佇んでいた。  通勤路の途中、突然目にした光景に私は息をのむ。青空の下、あおいはまっすぐ前を見て、足早に横断歩道を渡っていく。桜並木に風が通りすぎ、二人の間に花びらが舞う。すれ違いざま

      • 『夜の忘れ物』池田久輝(朗読用台本・無料利用可)

        小説家 池田久輝(第五回 角川春樹小説賞受賞作家)が朗読文化発展のために、無料で提供する朗読用台本です。 配信、イベント等での朗読台本として無料でご利用いただけます。 利用の際はこちらをご一読ください。 『夜の忘れ物』  真夜中過ぎ、いつものように僕は暗い通りを歩いていた。ここ最近、毎日こうしてこの時間、僕は街を散歩する。いや、散歩じゃないな。ちゃんとした目的があるのだから。  ところどころに灯った街灯に目を凝らす。等間隔に並んではいるが、点灯していないものもある。なんだ

        • 『最後の客』池田久輝(朗読用台本・無料利用可)

          小説家 池田久輝(第五回 角川春樹小説賞受賞作家)が朗読文化発展のために、無料で提供する朗読用台本です。 配信、イベント等での朗読台本として無料でご利用いただけます。 利用の際はこちらをご一読ください。 『最後の客』  雨が降り続いていた。男はカウンター席でコーヒーを飲みながら、窓の外の薄暗い田園風景を眺めていた。「オルガのレストラン」という名の店だった。  男はちょっとした旅の途中であった。目的地はもう少し先だったが長雨にうんざりしており、何もない田舎道にぽつんと現れた

        『ロンヴィル』(朗読用台本・無料利用可)

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        • 朗読用台本(無料利用可)
          10本

        記事

          『朝の走者』池田久輝(朗読用台本・無料利用可)

          小説家 池田久輝(第五回 角川春樹小説賞受賞作家)が朗読文化発展のために、無料で提供する朗読用台本です。 配信、イベント等での朗読台本として無料でご利用いただけます。 利用の際はこちらをご一読ください。 『朝の走者』  突然、目が覚めた。辺りはまだほの暗い。早朝の空気。冷たい透明感。僕の部屋はぴんと張り詰めたように澄んでいた。夢を見ていたのかもしれない。いや、眠っていたのかどうかも怪しい。とにかく僕はベッドから飛び起き、ふと気付くと、誰もいない朝の中を懸命になって駆け出し

          『朝の走者』池田久輝(朗読用台本・無料利用可)

          『フラミンゴ』池田久輝(朗読用台本・無料利用可)

          小説家 池田久輝(第五回 角川春樹小説賞受賞作家)が朗読文化発展のために、無料で提供する朗読用台本です。 配信、イベント等での朗読台本として無料でご利用いただけます。 利用の際はこちらをご一読ください。 『フラミンゴ』 「フラミンゴが飛んだぜ」  その話が私のもとに届いたのは今月初めのことだった。たっぷりと湿った夏の風がそろそろ部屋の扉を叩くであろう、そんな気配を嫌でも感じる日だった。だが、夏よりも早く私の部屋にやって来たのはサトウという名の友人だった。その時、私は遅い昼

          『フラミンゴ』池田久輝(朗読用台本・無料利用可)

          朗読用台本のご利用に際して

          一般社団法人 朗読表現研究会(アールラボ)は、朗読文化が広く根付くことを願って活動しています。 同法人の理事であり、小説家 池田久輝(第五回 角川春樹小説賞受賞作家)の朗読用台本を無料で提供いたしますので、ぜひご活用ください。 現在、無料でご利用いただけますが、今後、変更の可能性もありますので、ご利用前にこのページをご確認ください。 利用時のお願い(①は必須です)①ご利用の際は「タイトル」と作者名「池田久輝」必ず明記(または朗読)してください。 例)『南の森に消える』 

          朗読用台本のご利用に際して

          『向こう岸の伝説』池田久輝(朗読用台本・無料利用可)

          小説家 池田久輝(第五回 角川春樹小説賞受賞作家)が朗読文化発展のために、無料で提供する朗読用台本です。 配信、イベント等での朗読台本として無料でご利用いただけます。 利用の際はこちらをご一読ください。 『向こう岸の伝説』 「あんたもその口かい?」ふと、声が下から浮いてきた。「俺、あんたのこと知ってるよ」。  その声の主は船に乗っていた。さびの浮いた古くさい小船。浸水しない方が不思議といったような代物である。彼はその舳先から声を揺らせた。  私も彼のことを知っていた。ここ

          『向こう岸の伝説』池田久輝(朗読用台本・無料利用可)

          『僕の宇宙の旅』池田久輝(朗読用台本・無料利用可)

          小説家 池田久輝(第五回 角川春樹小説賞受賞作家)が朗読文化発展のために、無料で提供する朗読用台本です。 配信、イベント等での朗読台本として無料でご利用いただけます。 利用の際はこちらをご一読ください。 『僕の宇宙の旅』  それほど空が好きだったわけじゃない。毎晩、星空を見上げて何かを想うなんてこともほとんどしなかった。けれどある日の夜、僕は偶然に目撃してしまった。  そのとき僕はベランダで夜風に当っていた。すると遥か上空から何かが真っ逆さまに落ちてきたのだ。ゴウゴウと音

          『僕の宇宙の旅』池田久輝(朗読用台本・無料利用可)

          『南の森に消える』池田久輝(朗読用台本・無料利用可)

          小説家 池田久輝(第五回 角川春樹小説賞受賞作家)が朗読文化発展のために、無料で提供する朗読用台本です。 配信、イベント等での朗読台本として無料でご利用いただけます。 利用の際はこちらをご一読ください。 『南の森に消える』  ある青年が南の島へ旅をした。  旅人の誰もがそうであるように、彼は様々な風景と出会い、色とりどりの食事を楽しみ、いくつもの楽しげな表情を目の当たりにした。そして、そのどれをも見逃すまいと目を凝らし、記憶に刻み込んだ。ごくごく普通の旅――そうなるはずだ

          『南の森に消える』池田久輝(朗読用台本・無料利用可)