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桟原の148km

「大谷翔平165km!ついに更新!」
「佐々木朗希、165km!大谷翔平に並んで日本人最速タイ!」


「大谷翔平」「佐々木朗希」

言わずと知れた野球界のスーパースター
そして、日本人投手・最速王のこの2人。

彼らの登板日には注目が集まり、
その1球1球に「速すぎるさかいに…。打てるわけないがな。」と、胸を躍らせる。
そして、プロ野球ファンだけでなく、
相手バッターもお手上げ状態。


これまでの日本球界の最速王と言えば、
「クルーン162km」「伊良部秀輝158km」
「五十嵐亮太158km」「金田正一180km(噂)」

これらが挙げられるだろう。

しかし、近年ではトレーニング方法の発達や、
体作りの面で昭和・平成初期と比べて
進化していることもあり、
155kmを投げるピッチャーがゴロゴロ現れている。

その上、大谷翔平や佐々木朗希の「165km」という速すぎる球速のせいで、
154kmが以前と比べて平均的な速さと錯覚していると感じる。

154kmなんか打てるわけないよ。

でもどこか
「まぁ最近のピッチャーならそれぐらいは投げるか…」と、ファンの目も肥えつつあると思う。
(もしかしたら僕だけかも。)


どんどん速くなる球速。
そんな中でも自分にとって忘れられない速球がある。


それが「桟原の148km」


野球ファン、特に阪神ファンならわかる
懐かしい選手「桟原将司」

桟原は2004年~2011年まで阪神タイガースに在籍。
青いグローブがトレードマークで、
スリークォーターから投げる最速150kmの
速球派のリリーフピッチャー。

「桟原の148km」とは何のこと?

それは物心がついてから覚えている、
自分にとって人生初のプロ野球観戦。舞台は甲子園。
2004年の5歳ぐらいに父親と観に行った阪神の試合を
一塁側アルプス席の中段あたりから観た景色を覚えている。


その試合に投げていたのが「桟原将司」
後から調べると、桟原はこの2004年のルーキーイヤーからリリーフの一角として活躍していた。


それまでテレビでしか観戦していなかったプロ野球。
球の速さなんて、なんとなくでしかわかっていない。


そんな感覚で、球場で観た「桟原の148km」。

めっちゃくちゃ速かった。
いや、ごりげっさ速かった。

桟原が投じた球筋。
そこから見たバックネット裏の電光掲示板。
そして、表示された「148km」。

今でも脳裏にこびりついている、あの速さ。

だから自分にとっての速球王は
「大谷翔平」でも「佐々木朗希」でもない。


5歳の時に見た「桟原の148km」。



こういう感覚や記憶は皆さん持っているでしょう。
でも説明が難しい。

だからこうしましょう。

「一般的には“最上級”と言われているけど、
自分にとってこっちのほうがすごいと思うねん」
と、心に秘めているものを、
これからは「桟原の148km」と呼ぶ。


みんなにとっての「桟原の148km」は何ですか?


・「イチローの4000本安打」よりも
 「飯原誉士の5打数1安打」?

・「アンリ・シャルパンティエのフィナンシェ」よりも
 「アルフォートの1列目」?

・「フォルクスワーゲン」よりも
 「関西サイクルスポーツセンターにある
  二人で漕ぐタイプの自転車」?

人それぞれにあると思っています。
一回、探しに行ってみてください。
「桟原の148km」を。


皆さんの心のどこかに桟原が待っています。

青いグローブをはめて。



(こんなに思い出に残っているのに
「桟原」のグッズ、何一つ持ってない。)

#創作大賞2023
#エッセイ部門

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