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【第4回 聞いとKEY! / 東尾 厚志編】 めんどくさい話

徳島の本音を伝えるプロジェクト、Radio Journey Tokushima 『聞いとKEY!』
4回目のゲストは工藝店「遠近(をちこち)」のオーナーである東尾 厚志さん。

遠近(をちこち)

2017年、民藝の器、地場産業と関わるものづくり、 土地らしさを感じるものを扱う工藝店「遠近」をオープン。ものづくりに真摯に取り組む作家たちの作品を取り揃え、その価値や背景を伝えるための企画を定期的に開催している。

大学進学のために大阪へ出た東尾さんは、
父との原体験が詰まった地元神山に戻りたいと就職を機に徳島へUターン。
生活雑貨のお店や文房具店で勤めたのち、2011年に独立。

民藝の器などを扱う一方で、妻智子さんの手作りスイーツや美味しいコーヒーが楽しめるスペースも併設され、気軽に足を運ぶことのできる「遠近」をオープンさせた。

『職人さんとの関係性が形になった』という商品を手に取る東尾さんからは、
強い信念を感じ取ることができた。

“若い人たちが通っていく風穴ぐらいはあけておきたい”

そう語る東尾さんの、「遠近」の店主だけではない、徳島での役割とは一体どんなものなのだろうか。

ラジオはこちら↓
【第4回 聞いとKEY! / 東尾 厚志編】
めんどくさい話

〜ハイライト〜

1.「こういう世界のものってみんなが考えているほど作れない。」(0:01:50~)

2.「関係なんだよね。本当に。関係が形になって目に見えて手に触れるようになってるっていう。」(0:07:00~)

3.「僕は入り口はプロダクト寄り。デザインの良し悪しで判断してたかもしれない。」(0:12:31~)

4.「今は先に縁みたいなものはあって、その人が作って預けてくれるものからこれが良いというのをフィードバックしてる」(0:15:57〜)

5.「神山での原体験があって、それが故郷への想いにつながってる。」(0:19:36〜)
6.「諦めたくはないけど、できへんって分かってくる。」(0:24:02〜)
7.「スーパーマンみたいな人に10回に1回ぐらいは勝ちたい。」(0:31:50〜)
8.「“若い人たちが通っていく風穴ぐらいは開けておきたい”」(0:39:36〜)
9.「今していることを同じ方向に重ねていけている。それが店の個性になっている。」(0:44:23〜)

今回の旅の記録

第4回は若手メンバーが「ぜひお話しを聞いてみたい!」と名前が挙がった東尾厚志さんの取材。16:30 収録前にカフェで集まり、今日の流れを打ち合わせ。
18:20 日が暮れた頃、東尾さんのお店「遠近」に到着。
お腹が空く時間。着いて早速ピザカット。
ピザは東尾さんの故郷でもある神山にあるパン屋「かまパン」のもの。
遠近では、月1でかまパンの販売をしていて、
毎回予約をしてくれる常連さんもいるんだとか。
「いつから販売をしてるんですか?」と聞くと
「もういつからかわからないくらい前やな(笑)」と東尾さん。
美味しそうな食事と用意してくださった素敵な取り皿に一同興奮。
食事を楽しみながら自己紹介。(奥さんの智子さんも一緒に)まずは団欒。
一息ついたところで収録開始。どんなお話しが聞けるのかドキドキ。
東尾さんにお店の中を紹介していただいている様子。
バラバラにではなくギュッと積んでシンプルに見せるのがこだわりだそう。
おもむろにお茶碗を手に取ってお話しをされる東尾さん。
「ただの茶碗なんだけど、ここには色んなものが詰まってるんだよ」
お話はどんどんディープな内容に…
(実は「ここはカットで!」というお話しもあったり)
詳しくはラジオで!!!

収録を終えて / 東尾 厚志さんより

美味しいピザをいただきながらいい時間でした。来ていただいてた女性メンバーのみなさんが全員徳島出身!!何かに気づいて動き始めている若い人が地元にいることは嬉しい驚きでした。(徳島男子頑張れ)
正直なところ、神先さんに「お願いします」と言われたらどっちにしても断れないから、内容もわからないうちに取材をお受けしたのですが(すみません)、「何かしたい」とか「知りたい」「変えたい」というような気持ちの高まりが活動の源にあって、「あっちだよね」「あの辺だよね」と自分たちが進むべき方向を探る機会でもあるのかなと感じました。社会に対して本当に意味のある活動ほど利益を生みにくいものですから、いい大人の皆さんは声がかかったら是非協力して下さい。

さてタイトル通りの「めんどくさい話」になってすみませんでした。
カットされたところがほとんどですが、、
またいつか機会があったらもう少し体系的に話せるかと・・・思います、汗

僕の場合ですが、会社員だった頃は「これは仕事だから」と自分を殺して任務を遂行する仕事がほとんどでした。自分のやりがいや手応えを重ねられる仕事は少なくて、ある程度納得できるものを掴んでも、その分受け入れる矛盾も大きくなった気がします。自分と離れた仕事が続くのはしんどいし、疲れた自分をリセットするためだけに僅かな休暇を使うサイクルに陥ると、新たな目標や成長の機会を掴みにくい。とはいえ、組織に属しながら自分の都合だけを通そうとするのは間違っている。つまり会社員であれば、先ずは会社が求める事案に取り組むべきです。そして自分の望むことと組織が望むこと、この二つの矢印を重ねるような仕事ができるように努力するべきです。会社のため↑でもあるが自分のため↑でもある。かつ周囲の人喜んで↑、かつ世界の平和に貢献する↑・・・こんないくつもの矢印が重なるようなところに手応えがあると思います。近江商人の「3方よし」の考え方に近いかな。手応えのある仕事と出会えないなら、自分たちで作り出すべきです。生き生きと働いている魅力ある人はそういった努力を続けています。

ラジオの感想を書かなくちゃとMacを開いたら、トルコ地震のニュースが飛び込んできた。戦争に使う熱量を地震で窮地に立つ人を助けることに使えるとしたら、世界はどんなに素晴らしいだろう?一人の力じゃどうにもならないことだけれど、現代がそういった世の中じゃないのは、大人の責任だろうと思う。

その辺りの責任感が僕らの世代は弱いように感じる。地域に対する愛情が薄いというか、戦わないというか。損益分岐点のラインをさーっと引いて「ここくらいまでなら」とか言うヤツばっかりだとつまらないよね。たとえ自分が潤沢に持ってなくても「価値がある」という確信があれば、迷わず差し出して自分を投入する方が絶対いい。僕がガッチリと付き合ってる作り手さんはそんな勝負どころをわかってる人だ。

じゃあ何ができるかといえば、先ずは選挙に行くこと、僕ら大人は若い人の模範となってその重要性を伝えることです。次の知事選についていえば、僕はその弊害を肌身をもって感じてきたから多選となる現職は絶対に選ばない。幸い他の選択肢がある。徳島はやたら投票率が低いけど。かつては自由民権運動が盛んだった土地で、第十堰の可動堰反対運動の一体感も記憶に残っています。これからもいくつもの矢印を重ねるような仕事をして、勝負どころに備えたいなと思います。

みなさん共にいい仕事をしましょう。ありがとうございました。

収録を終えて / 参加メンバーより

神先 岳史
東尾さんとの出会いは覚えていませんが、前のお店の「東雲」時代から
いろいろと神山での暮らしや民藝のことについて教えていただきました。
お店で扱う器などは1つ1つバックグラウンドがあるものばかりで、
買うという行為を深く見つめるきっかけになっています。
宿をやっている関係で作り手さんが徳島に滞在する際に、
お会いできる機会もつくってもらい、とても刺激をいただいています。
今回の取材は若手メンバーの聞きたいことがメインで、見守る感じで聞いていましたが、新しい気づきもあり、じっくりと話を聞くのはいいなーと思いました。
RJTは動き出して3か月、健全に模索しながら進んでいます。
個人的に昔と今とみる視点が違うなーとか、中長期軸で考えることとか、
役割とか、、、順調に発酵中ー!!

髙木 晴香
東尾さんと作家さんとのご縁が織りなす遠近の空間。大切に並べられた器を手に取ると、ものづくりの重みや厚みが伝わってくる。以前、ここに母と足を運んだことがあり、東尾さんが母に器の魅力を語っている姿が印象的だった。次から次へと、その土地の歴史やものづくりの現場の様子を話す様子から、「好きなものを仕事にするって素敵だなあ」と心があたたかくなった。私には『わかりやすい民藝 』を勧めてくださったのを覚えている。ちゃんとお話しするのは今回のラジオが初めてで、ウキウキしながら上八万へ車を走らせた。ラジオでは、お店を持つことの厳しさや葛藤を垣間見る。理想からは遠いのかもしれない。それでもお店に立ち続け、ものづくりを伝えていく。やめないこと、続けることの尊さが伝わってくる。お店を飛び出し、地場に深く関わっていく東尾さんからは、「若い人たちが通っていく風穴ぐらいはあけておきたい」という言葉が飛び出た。風穴を開けることがどんなに大変か、その静かな語り口から今までの時間の重みが伝わってきた。静かではあるけれど、炎は確実に燃えている。その灯火を絶やさないように、つないでいきたい。バトンを受け取ったような気持ちで帰路についた。

岑田 安沙美
これまでのジャーニーで出会った方々はまちづくりの文脈で語られることも少なくないが、"まち"をどのように捉えているかはそれぞれ違うということがわかってきた。何か使命感のようなものを抱える人、故郷を愛し自分事と捉える人、"まち"は背負わないと自分の道を生きる人。
私は、気づけば東尾さんの生き方や考え方に自然と自分の数年後、数十年後の姿を重ねていた。

谷 亜央唯
東尾さんが考えられている神山、徳島での自身の役割。私も美馬市や徳島で、いつか、役割を持つことができたらいいなとふと頭に浮かんだ。意識して何か役割を持つのではなく、誰かにあなたの役割はこれですと言われるのでもなく、自然と自覚できる時がきたら良いなと。今はまだ考えなくても良くて。むしろ今は役割は欲しくない。ただ、これから徳島に根を張るうちに自然に自覚できる日が来るような気がした。今は自分がこっちだと思う方向に掘り進んで、そこでの出会いを大事に暮らしていきたいと思う回だった。

齋藤 千夏
今回、東尾さんのブログをたくさん読んでから収録に臨んだ。お店の扱う商品のことが多いのかと思いきやそうでもなくて、徳島での様々な活動や想いが綴られていた。東尾さんの見ている徳島の風景はあたたかかったり、時には厳しかったり。いろんな場面で起こる出来事に対して、時にちゃんと怒っていることを収録で知り、私はそんな言葉に安心した。若い子のために風穴くらいは通しておきたいと笑う東尾さんはとても素敵で、これまでお店に入る時は少し緊張してたように思うが、今回の収録を通して奥さんの明るくて気さくな雰囲気と話しかけるとたくさん話してくださる東尾さんにまたすぐに会いに行きたいと思った。ちなみに収録は2時間以上に及び半分以上はカット。東尾さんの口調がうつってしまうくらい聞き込んだ編集でした(笑)

清水 杏咲
“作家さんたちとの関係性が形になって、目に見えて、触れることができる”
東尾さんがそう語る、作品たちが並べられた「遠近」自体が、作家さんやお客さんとの関係をつくり、温かい空間を生み出しているのだと感じた。
その中で、ただお店を続けているだけではなく、東尾さん自身がまちに関わり続けることで、私たちの世代に強い信念を見せてくれているような気がする。
そんな東尾さんが「スーパーマンと呼ばれるようなすごい人たちに10回に1回は勝ちたい」と言った時は本当に驚いた。
(私から見ると、東尾さんもスーパーマンだからです。笑)
しかし、今回お話をきいて、東尾さんも悩みながらご自身の役割を見つけ出してきたのだと感じ取ることができた。素敵な姿と葛藤されてきた姿、その二つを見ることができるのがこのラジオの素敵なところだと改めて感じるとともに、東尾さんが開けてくださる風穴をどのように突き進んでいくのか、自分自身の役割を考えるきっかけにもなった。

Cretdit

direction / 神先 岳史

writing / 清水 杏咲

photo & editing / 谷 亜央唯

editing / 齋藤 千夏

editing / 岑田 安沙美

高橋 利明

髙木 晴香

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