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銀河哲道の夜(4)

小泉環境大臣が育児休暇を取得するというニュースを視た。ニュースでは、自分たちも育児休暇を取りやすくなる、といった肯定的な意見がある一方で、環境大臣という重い役職の人間が、高い給料(年間約3000万円[1])をもらっているのに育児休暇とは腑に落ちない。といったような声もあったようだ。賛否両論、それぞれ人によって捉え方があるだろう。

個人的には、仕事盛りの(しかも行政の重鎮である)比較的若い男性が、育児休暇を取得するということは、ポジティブに捉えているつもりだ。なぜなら、この事例は一種の免罪符のようなもので、こういう人でも取得しているのだから、自分も取得していいだろう、という効果を持つからだ。これによって、今まで育児休暇を取りたくても社会や組織の目を気にして遠慮せざるを得なかった男性たちが、育児休暇の取得を堂々と主張できる機会が増えると予想される。男性の育児休暇取得率の上昇を実現するまでには、仕事の評価や出世との関係など、まだまだ超えなければならない壁があるとは思うが、政府としても、こうした活動を通じて、男性の育児休暇取得や育児参加を進めていきたいのであろう。

しかし、なぜ男性の育児休暇取得を政府がこうまでして推進しようとしているのか。倫理的観点から言えば、男女平等と選択の自由(今まで育児休暇を取得したい男性が社会的風潮で取得できなかったという事態の是正)の拡大のためと捉えることができるが、実利的観点がなければ、ある意味お話にならない。それはやはり、少子高齢化と人口減少への布石と捉えて良いのだと思う。と言っても、それらを「防ぐ」というよりは、それらによってもたらされるであろう来るべき社会に備える、ための施策と言えそうだ。

ご存知の通り、日本は目下人口減少社会([2])である。生産人口が目減りする中で、今や女性の社会進出は、国家の生産性や健全性の維持・向上と密接に結びついている。その障害となるのが、何を隠そう、旧来の「育児を女性だけに依存する社会」の風潮である。男性が育児に積極参加することで、女性の育児への負担が相対的に減少し、子どもが生まれたとしても、女性がまた社会に復帰しやすくなるのである。こう考えると、最も改善すべきことは、育児休暇や産休などによって、仕事の評価や出世のスピードに優劣がついてしまったり、育児後の仕事復帰のサポート体制が整っていなかったりという企業の体制であるようにも思えてくるが、まぁ、男性の育児休暇取得が過半数を占めるようになれば、こうした制度も自然と変わっていくだろうと思う。

結論、この育児休暇取得推進の流れも、進行する人口減少社会に向けて、日本企業、ひいては日本社会が、より効率的に生産性を上げていくための素地を作るプロセスに他ならない。かつては育児を後回しにしてでもやらなければいけなかった会社での仕事は、今や機械によってどんどん代替されていくものであり、人がやるべき業務は別の部分へとシフトしっていっている。そういう意味では、育児とは、まさに、人間でしかできない「仕事」であり、多くの人がそれを最優先にして育児に携わっていくことは、合理的、かつ、人間として至極真っ当なことのように思えて仕方ない。

参考
[1]. 内閣官房「主な特別職の職員の給与」
[2]. NHK 「日本の人口 8年連続減少 生産年齢人口は過去最低」

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