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流行りものは流行っているうちに摂取しておこう…という話

こんにちは。SF素人の読書記録です。
これもまたSF……ということで今回は手天童子(永井豪・永井泰宇 1976-1978)の読書記録を兼ねた紹介をしていきたいと思います。


こちらは言わずと知れた『デビルマン』などでお馴染みの永井豪先生作品『手天童子』のノベル版であり、ご兄弟であり文筆家である永井泰宇(ながい・やすたか)氏が執筆を担当された作品で、「鬼」の存在をテーマの一つに組み込んだ『伝奇SF』と呼ばれるジャンルの作品です。
SFというだけあって時間移動技術なんかも出てきますし、用語の古さはあるものの未来世界の描写は造詣の深さを感じられ、決して今のSFに負けていません。

なんでそんな古い作品を読んでるのよって話ですが、知り合いのプレゼンで漫画版に興味を持ったんだけどすぐに小説版が入手できそうだったのでこちらから入った次第なんですね。


ですが読んで非常に後悔しました……



いやおもしろくなかったという訳ではなく、この手天童子という作品は『明確に終わりを決める事なく執筆し始める』ということで有名な永井豪作品の中では異色である、
ちゃんとストーリーを最初から最後まで決めて描く、というスタイルを取って作られたもので
伏線回収などもきちっと行われており話もまとまっていて非常に面白かったです。

ただ現代人としてはこの作品の影響を受けていたであろう傑作を先に見てしまっている訳なんです。このせいで「あ~!自分が最高におもしろい作品として周囲にドヤ顔で紹介していたあれやこれやはもっと前に影響元があったのか!」という気持ち。

しかもこの『手天童子』すら40年くらい前の作品な訳ですから、私がドヤ顔で紹介していたというそれすらも十数年前のものなんですよね。
具体的に影響を受けていたであろう作品というのは「YU-NO」とか「エクソダスギルティー」とか(多分)なんですが、そんなことを知らずに崇め奉っていたなんて悔しい気持ちでいっぱいです。


まぁこれは今から『手天童子』を読むなんてやらなくていい事をやって自分の地雷を勝手に踏んでいるだけなんですが、当時のクリエイター、クリエイターの卵の方の間ではこの手天童子も非常に流行っていたと思うんです。

そこから影響が生まれて現代まで続くいろんな作品が作られてきたんだと思うし、その流行りが作る大きな流れってそれが流行っていた時代に生きているんじゃないとよく分からんですよね。


そのライブ感と呼ばれるようなものはその時代に生きて創作作品を摂取できているものの特権だし、後から得たいと思っても得られるものではないので、これを非常に大事にして流行りものは流行っているうちに見ておきましょう、という事をいいたい訳です。

そこまでの流れというのが分かってないと創作界の潮目(ターニングポイント)って分からなくなりがちですから、流行りものに後から乗っかってきて「これが何で流行っているのか分からん!」っていう厄介オタクおじさんにならない為にな!!



~『手天童子』簡単な解説~

手天童子・1 「鬼の血脈」

鬼から託された謎の出自の子供、手天童 子郎(しゅてんどう じろう)が現世を去らねばならないという約束の刻である16歳の誕生日までの現代日本での生活を描く。気軽にトラックが突っ込んで来たり、進学校であるはずの子郎の学校にいる番長グループに因縁をつけられたりとやたらとバイオレンス

手天童子・2 「鬼天使」

同級生である白鳥美雪(しらとりみゆき)という思い人ができる子郎だが、そこに付け込んだ番長グループ、そしてその背後にいる人間の陰鬱な気や攻撃性を刺激するという「鬼」との戦いで子郎は自身に眠る鬼としての力に目覚めていく。やたらと人が死ぬ。

手天童子・3 「邪教の罠」

2巻の時点で赴任してきていた鬼谷(きたに)という教師が子郎に眠る手天童子の力を恐れ抹殺するために動いている暗黒邪神教の一員であることが分かり、明確に敵対する事に。
また邪神教の先頭集団である「鬼仏衆」も過去より鬼の血を受け継いでいることが分かる。この敵と戦うための子郎側のメンバーがなんか生えてくる。そして死ぬ。

手天童子・4 「暗黒寺の死闘」

鬼仏衆との決着。この戦いで子郎の鬼の力が高まったことにより予定より早く最終目的地である「鬼獄界(おんごくかい)」への時空の扉が開いた。
赤ん坊の子郎を連れてきた鬼・戦鬼(せんき)と力が目覚めぬ幼い頃から子郎を護ってきた護鬼(ごき)、そして現世での思い人であった白鳥美雪と共に時間と空間を自在に移動できる異次元へ入るが、鬼獄界の手前で激しい攻撃を受け子郎ひとりと戦鬼・護鬼・美雪グループはいつの時代、どこの国とも知れぬ場所へと離れ離れになってしまう。

手天童子・5 「彷徨さまよえる鬼たち」

虚無の宇宙空間に140年一人で放り出されていた子郎は幸運にも未来の地球人が乗る宇宙航行艦、アルファードに遭遇し九死に一生を得る。
謎の異星人の侵略をはねのけた事により飛躍的に技術進歩を遂げていた地球の科学から時間遡行が理論上ではすでに可能となっている事を知った子郎は、アルファードで出会った美人科学者ローラの助力を得て美雪たちが平安時代の日本にいる事を突き止めたった一度きりの過去への旅を決意する。

手天童子・6 「さらば愛しき鬼たち」

未来世界で暗黒寺の戦いより140年以上もの間手天童子打倒の怨念を受け継いできた鬼仏衆の子孫アイアンカイザーの猛攻を凌ぎつつ過去へと飛んだ子郎は見事平安時代で美雪たちと合流し、再び鬼獄界へと時空の旅を行う。
護鬼が「我々の生まれた星」と呼ぶ、星と呼ぶにはあまりに異形のその惑星で子郎は自身の生まれた理由、そして家族と呼べる人たちのいる世界へ帰るため最後の戦いへ赴く。手天童子である自身を起点とした閉じた時の輪はどうして生まれたのか。その謎を解き明かす事はできるのか。


先述の通り、昔の時間移動SFの流行りを作った作品の一つとなるかとおもいますので
そういう歴史を知りたい人や古典として見てみたい人はぜひ読んでみて下さい。


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