RIZAPが競合他社に発揮する、DX推進のアドバンテージと強みの本質
リアルなアセットを基盤にデジタル領域に進出する価値は高い
―ITでさまざまな実績を持つ鈴木さんが、RIZAPにジョインしようと思った理由について教えてください。
鈴木:RIZAPにすでに強いブランド力や顧客基盤があり、トレーナーや店舗という「リアルなアセット」を武器に、ヘルスケア領域で圧倒的なポジションを勝ち取っていたからです。
私自身はもともとヘルスケア分野に興味を持っていて人の「健康づくり」をしたいと考えていました。デジタルの観点で言えば、ヘルスケア分野には遠隔診療やAIを用いた診断などさまざまな手段があり、数多くのスタートアップが新事業をスタートしています。
ただし、これらは実際に病気にかかってからの対処です。私が携わりたかったのは、病気を予防するフェーズのヘルスケア。その場合、デジタルだけでできることはどうしても限られます。
例えばどんなにデータを収集し、アプリを通して健康面のアドバイスをしても、その人が日常生活の中で健康に良い行動を実行してくれるとは限りませんよね。
このデジタルの弱みを補強できるのが、「リアルなアセット」だと考えました。
―オンラインとオフラインの融合によって新しい価値提供ができるということですね。
鈴木:はい。もちろん「デジタルからリアル」を目指す方法もありますが、「リアルからデジタル」に取り組むほうがやりやすいというのも、RIZAPを選んだ理由の一つです。
すでにデジタル分野で成長している企業が、今更自分たちでジムを展開したりトレーナーを何百人も抱えたりするのは、かなりハードルが高いですからね。
自分がデジタルで実現したい領域を考えたときに、一番強い基盤を持っているのがRIZAPだと判断したのです。
多事業を手掛けるRIZAPだからこそ展開できるマーケティングも魅力
―リアルなアセット以外に、RIZAPにはどんな強みがあるのでしょうか?
鈴木:RIZAPグループ自体がさまざまなフェーズの事業を手掛けているため、独自のマーケティング戦略を展開できる点でしょうか。
ご存知の通り、RIZAP事業自体は、2~3ヶ月で数十万円の費用をいただいてパーソナルトレーニングを続けていただくという、高単価高付加価値サービスです。しかしそれ以前には、健康食品を販売するD2C的な事業に取り組んでいましたし、グループ会社の中にはリアル店舗を通じた低単価・低原価のリテール系企業も数多く存在します。
これらのマーケティングノウハウを全て吸収し、多方面で活かせるのは実は大きな強みなのです。
―具体的に、マーケティングノウハウはどんな場面で生かされているのでしょうか?
鈴木:例えばRIZAP事業は立ち上げ期を経て一気に大規模なサービスに成長しました。背景にあったのは、莫大な広告宣伝費の投下です。通常のパーソナルトレーニングジムなら到底実施しない規模でテレビCMなどを打った結果、事業が加速しました。
このマーケティング手法は、実は健康食品の広告戦略と同じです。化粧品などにもよく見られますが、利益率の高い商品・サービスは事業の30~50%程度の費用を広告宣伝費に投じて顧客を獲得し、LTVの向上を図るのが通常です。RIZAPは、自社が提供するパーソナルトレーニングジムも高単価商品と同じ存在だと考えて同様の手法を実施し、結果としてサービスを大きくグロースさせました。
「リアルアセット×デジタル」がオンリーワンの強さになる
―現在のRIZAPは、どのような企業と競合しているのでしょうか?
鈴木:RIZAPよりも安価なパーソナルトレーニングジムは数多く登場しているため、フィットネス業界内での競争は激化しています。
一方DX的な面でいうと、今後当社が展開していきたい健康管理アプリやオンライントレーニングを提供しているテック企業も競合だといえます。
―大きく2つの領域で競合企業が存在する中、どのように競合優位性を発揮していけるのでしょうか?
鈴木:パーソナルトレーニングの領域でいえば、やはりすでに強いブランドと700人規模のパーソナルトレーナーという人の土台、長年培ってきたトレーニングのノウハウがありますから、そこにデジタルを融合させることで差別化を図り、勝負ができます。フィットネスしか手掛けていない企業に対しては、食事面のサポートができる点でも優位性がありますね。
デジタル領域でいうと、今後DX体制をより一層強化して良い開発ができれば、競合他社に対して戦えるだけのデジタルプロダクトを提供可能だと考えています。
もちろん、それだけでは先行企業を凌駕するのは難しいのですが、RIZAPはそこにリアルなアセットを付与することで「負けない」ポイントを作れます。
つまり、いずれの領域に対しても「リアルアセット×デジタル」という唯一無二の強みによって不足している部分を補えるからこそ、競合優位性を発揮できるのです。
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