18の街/花曇りの中で/心中未遂

先日、18歳のころに住んでいた街に行った。とても懐かしいと思う反面、本当に自分がそこにいたのどうかが疑わしくもある。街はあいかわらずのんびりとしていて空は広い。もし、此処を出ずにいたら自分はもっとゲンジツを生きていたのではないだろうか、などと勝手なことを思う。

花曇りの中で、いちばんうつくしい花はイエイオンだ。太陽がなくてもあれはしっかりと星のかたちをして咲く。薄曇りでも蓄光を塗られたように光る。

心中相手を探しながら、いざそのときが来るとひとりが良い、と思うであろう自分が忌まわしい。アルコールが廻ると、昼間包丁でうっかり切った親指がじいんじいんと脈打つ。こういうときにだけ血を感じる冷え性を恨む。


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