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嵐山は古典のモデル!?〜めくるめく古典の世界へ〜

はじめに・・・

みなさんは京都・嵐山にどんなイメージがありますか?
私は静かで人も少なく、歴史を感じることのできる場所だ!というイメージを持っていたのですが、実際に嵐山に訪れてみると・・・溢れんばかりの人!人!人! 
「あれ、ここ東京?」と錯覚してしまうほどの人の多さ。
私のイメージと全然違って、ちょっとがっかりしてしまいました・・・。
三日間嵐山に滞在して、「どこでも繁盛するような「インスタ映え」スポットではなくて、【歴史がある京都】だからこそ推したい!と思えるスポットを見つけたい・・・。」と考えるように。

そんな中、滞在二日目。私たちが滞在していた嵐山地区から少し足を伸ばし、踏切を超えた嵯峨地区に入ると・・・
嵐山地区と比べて全然人がいない!じっくり探索できる!京都ってやっぱりこういうイメージ!しかも嵯峨地区には多くの寺院や神社があったり、「あの」古典作品ゆかりの地があったり・・
ネタに尽きない、最高に熱い場所なんです!!

なので今回は、「勉強できる嵐山」、古典×嵯峨嵐山という観点で色んな場所を紹介したいと思います!古典作品の話も織り交ぜるので、旅行先でも会話のネタになることまちがいなし!必見です。

『世になくきよらなる玉の男御子さへ生まれたまひぬ。』
光源氏のモデルがここに!? 〜清涼寺〜

嵯峨嵐山駅から伸びる線路の踏切を渡り、真っ直ぐ進んでいくと目の前に現れる「清涼寺」。現地の人たちは「清涼寺」とは呼ばずに「釈迦堂」と呼ばれ、親しまれています。ここは、なんとあの『源氏物語』のゆかりの地なんです!
源氏物語、『松風』の巻で光源氏が造営した「嵯峨の御堂」と場所が一致することからゆかりの地だろう、と推測されている。またこのことから嵯峨天皇皇子で皇族賜姓であった源融が光源氏のモデルである、とされているそうです。
(引用:​​​​​​​​https://openmatome.net/matome/view.php?q=15849910559823)

清涼寺の風景

ここで!りんの【古典作品を踏まえた一言コーナー!^^】
『世になくきよらなる玉の男御子さへ生まれたまひぬ。(この世の人間とは思えないほど玉のように美しい男の子が生まれた)』と源氏物語の本文中にありますが、これを踏まえてゆかりの地である清涼寺を回ってみると、「この美しい寺院のある土地にゆかりがあるなら絶世の美男子も生まれるはずだ!」と腑に落ちます。
こんな美しい寺院がある土地にいれば身も心も洗われそうですよね!皆さんも清涼寺に立ち寄れば、身も心もリフレッシュできること間違いなし!そんな魅力が私が清涼寺をおすすめしたいポイントです。光源氏のように美男美女になれるかもしれません・・・!
実は敷地内には湯豆腐を食べることのできるお食事所も!大通りにある湯豆腐を取り扱っているお店は、入るのもかなり並びます(汗)
人混みが苦手・並ぶのが嫌いな人や、ゆっくり味わいたい人にはオススメ!

『忍れど 色に出でにけり わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで』
有名スポットまでの道中、こんなところに穴場スポットが!〜慈眼堂、中院〜

清涼寺から二尊院に向かうまでの道中、見逃してほしくない2つのスポットがあります!

1つ目は「慈眼堂」。
ここに祀られている木造千手観音立像は、百人一首を撰定した藤原定家の念持仏だそうです。

慈眼堂の風景

立ち並ぶ住宅街の中に、あまり目立たず建っているので見逃さないように注意が必要、!
今は公民館として使われているようで、嵯峨地域の人の暮らしの中にも百人一首が根付いているのではないか・・・?と妄想を掻き立てる場所。
慈眼堂付近の民家は景観を合わせていて、より雰囲気を感じられる街並み・通りです!

いやまって?そもそも藤原定家って誰?というあなたのために簡単にご紹介を・・・
藤原定家は平安時代末期から鎌倉時代を生きた公家の人で、百人一首の他にも新古今和歌集や新勅撰和歌集も選定している。とされています。
百人一首の中には、「来ぬ人を まつほの浦の 夕凪に 焼く藻塩の 身もこがれつつ」という定家自身が詠んだ歌も。
(待っても待っても来ない人を待つ私は、夕なぎの松帆の浦で焼かれている藻塩のように、身も心もあなたに恋いこがれているのです。)という意味だそう。
なんとも美しい描写と比喩ですね。
実は正式な百人一首の撰定者はわかっていないのですが、こんな美しい歌を詠む人なら撰定に関わっていてもおかしくないでしょう。。。
そんなことを考えながら慈眼堂を通るのがりん的オススメです!

2つ目は「中院山荘跡」。
ここは宇都宮頼綱という僧の山荘跡。この僧は百人一首を撰定した藤原定家と交友があったそうで、僧の娘は定家の息子に嫁いだそうです。
そして、この僧が山荘の障子に貼る色紙の執筆を定家に頼んだことがきっかけで「小倉百人一首」になったと言われています。

中院山荘跡の風景

二尊院までの道中にひょっこり現れるこの二つのスポット。
特に中院山荘跡は建物もないので見逃さないようご注意ください!スマホばかり見ていると見逃してしまうような場所もゆったりと探索することができるのが嵯峨散策の良さです!
嵐山の大通りの人の多さに気疲れしたあなたに静かに寄り添ってくれるこの2つのスポットも、りん的おすすめです!スマホから少し目をあげて京都の良さを存分に感じるには持ってこいのコース!

ここで、りんの【古典作品を踏まえた一言コーナー!^^】
『忍れど 色に出でにけり わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで』平兼盛が詠んだ歌。(誰にも知られないよう恋心を隠してきたのに顔に出てしまっていたようで、「誰か好きな人がいるの?」と聞かれてしまった。)という意味の歌。聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
今回、慈眼堂と中院山荘跡の紹介の見出しに『忍れど』の歌を使ったのは「隠れる、隠す」というキーワードが共通していると思ったからです。
(こんな貴重で素晴らしい建物なんだから、忍ぶのは恋だけで大々的に存在しててくれ!)

『これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂の関』
超絶景!心が洗われるような空間 〜二尊院〜

清涼寺から左手側の山奥へ歩いて約7分、見えてくるのは二尊院。
二尊院は小倉百人一首で詠まれた「小倉山」の麓に建っています。

二尊院の風景

敷地はかなり広くてなんとも雅な空間が!

さらに奥へ進み、整備された山道を歩くと辿り着くのは「時雨亭跡」。
藤原定家が百人一首を撰定した場、と言われています。
目の前に広がる景色はとても美しく、時折聞こえてくる獅子おどしと鐘の音は趣深さを深めてくれます。

時雨亭跡にある百人一首の看板

目の前に広がる景色は、藤原定家が百人一首撰定場としてチョイスするのも納得するほどの絶景。人混みの嵐山地区とは打って変わって、静かでゆったりできるスポットです。
『これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂の関』
この見晴らしのいい場所は、時間がゆったりと流れていて風情があります・・・。「京都」というイメージはこれだ!!!と回帰させてくれるような場所であり、自然の素晴らしさを肌で体感できる場所なのでおすすめです!

時雨亭跡からの眺め。結構急な階段と山道のため、歩きやすい靴で行くことをオススメします!

またまた、りんの【古典作品を踏まえた一言コーナー!^^】
『これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂の関』蝉丸が詠んだ歌です。(都会から出ていく人も都へ帰る人もここで別れ、知っている人も知らない人もここで出会うという逢坂の関か。)という意味の歌。この歌の舞台である「逢坂の関」とは東海道と東山道の関所で京都府と滋賀県の県境付近だろう、と考えられています。
私が今回、この歌を引用したのは「出会いと別れを見る」という部分が二尊院・時雨亭跡から見える景色とリンクするのではないか、と思ったからです。
1人1人の出会いと別れがくっきり見えるわけではありませんが、この場所なら嵯峨嵐山地区が一望できるので、そのようなことにも思いを馳せることができるのでは・・・?と思い、この歌を使ってみました。

賢木の巻で登場する野宮、六条の御息所
恋愛成就は嘘かマコトか!?

恋愛成就で有名な「野宮神社」。
この野宮神社は、源氏物語の「賢木」の巻で登場する野宮だとされています!
そして賢木の巻といえば・・・そうです「祟る女」、六条の御息所のシーンですよね。

野宮神社の風景

“え?「祟る女」の六条の御息所のゆかりの地なのに恋愛成就っておかしくない?」”
そう思ったあなた!
ここで私なりの見解も交えて、野宮神社が恋愛成就にご利益があるとされている由縁をお伝えしたいと思います!

りんの【古典作品を踏まえた一言コーナー!^^】
今回は考察を交えていきたいと思います。
光源氏から距離を置かれ、病みに病んでいた六条の御息所。
光源氏の愛した他の女を呪い殺してしまう彼女が住んでいたところが恋愛成就の神社として祀られているのは、その娘である梅壺の影響もあるのではないでしょうか。
容姿端麗な梅壺は、須磨に流され落ちるところまで落ちた光源氏復活のきっかけとなりました。その母である六条の御息所の拠点であったことから、現在野宮神社は恋愛成就の神社と言われているのではないか、と思います。

そんな源氏物語との繋がりも知った上で野宮神社を訪れると、また違った見方ができて面白い!ちなみに日中は「竹林の小径」を訪れる人の影響で非常に混雑しているので、朝もしくは夕方過ぎに行くことをお勧めします!
(夜は雰囲気があって怖いです・・・。六条の御息所に祟られそう)

りんが嵐山をめぐって感じたこと


大学で古典を勉強してます!とか、古典が好き〜とか言いながら、事前準備0で訪れた私でも楽しめる嵯峨地区。
知識0に等しい状態でもよく目を凝らせば、街の至る所に紹介や解説があり、とっても勉強になる!特に時雨亭跡から街を一望した時、「本当に一句詠めそう。」と思いました。
当時からはかなり風景も街並みも変わってしまったでしょうが、このように昔の情景・今・そしてこれからのことに思いを馳せて自分に向き合うことができる時間は今も変わらず重宝されています。

「昔も今大切なことは変わらない。」
このことに私は古典を知ること学ぶこと触れることの素晴らしさを見出しました!

でも今回の記事を書くにあたり、帰ってから源氏物語や百人一首に深く触れたのですが、、、本当に下調べしていかなかったのを後悔しました!
「え、あの場所も、この作品とゆかりあったのか!」「あの描写はこの景色に由来してたのか・・・?」なんて後になって気づくことも多くて。
もう一回ちゃんと嵐山を訪れたい!と思っているのが正直な気持ちです。笑

最後に・・・

いかがでしたか?
賑わう嵐山地区から少し足を伸ばした「穴場」嵯峨地区の魅力を少しでもお伝えできたでしょうか!?
「インスタ映え」する京都ではなく、「学びになる」京都を感じて頂けたのでは!と思います。今回、紹介した数々のスポットは写真や文章では伝えきれない魅力ばかり。
ぜひ実際に訪れてみてください。これを機に、「行ってみたい!」と思う方が一人でもいたらとても嬉しいです!

〈 参考文資料〉
藤原定家 ​​​​​​https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E8%97%A4%E5%8E%9F%E5%AE%9A%E5%AE%B6
『すらすら読める源氏物語 上 』 著者:瀬戸内寂聴  講談社 2023年発行
『世界でいちばん素敵な百人一首の教室』 著者:吉海直人 三才ブックス 2019年発行