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もっと早くに出会いたかった哲学研究入門編のための漫画『テツケン』紹介スペシャル盛り

はじめに
 こちらの記事は、本日2020年8月20日に発売した宇治かばね先生の哲学研究漫画『テツケン』をたくさんの人に買ってもらっていっぱい読んでほしい!!!!!!! という気持ちに溢れたダイレクトマーケティングの記事です。

 なお紹介するにあたり、この記事を読む方に不誠実でありたくないという意味で最初に断っておきますと、この記事を書いた者は『テツケン』著者の宇治かばね先生とは友人という関係です。
 でも特に「こういう記事書きます!」とは宣言していないし、頼まれてもいないのに勝手にこの記事を書いています。ヘッダーもただのファンアートです。宇治かばね先生や河出書房新社様や関係各所に全く関係のない個人のダイレクトマーケティングの記事です! よろしくお願いします!
 友人という目線抜きにしても『テツケン』はまず漫画として面白く、更に「こういうふうに哲学研究に臨めばいいんだ!」という最初の一歩が分かると思うので読んでほしいです!!!!!

■『テツケン』ってどういう漫画?


 あらすじをがんばって書こうとしたけど、作者直々のあらすじが一番分かりやすいので上記のツイートを見てください。

 『テツケン』はあらすじでご覧いただいたように、哲学科の大学生(学部3年生)、天野くんのわちゃわちゃ大学生活が描かれています。コメディ的でテンションが高くて楽しい。

 大学生の、特に哲学研究とかの実態って、実はあんまり外部からでは分からないですよね。「哲学科の大学生って何してるんだ……?」と思っている、もしくは思っていた方もいらっしゃったのではないでしょうか。わたしも高校生の時はあんまり具体的な想像はついてなかったです。
 『テツケン』は研究対象が具現化していますが、そこだけファンタジーのいわゆるローファンタジーなので、天野くんを通して哲学科の大学生の雰囲気が伝わってきます。高校生の方にとっては一種のオープンキャンパスみたいになるかもとか思います。言い過ぎか? でもそのくらい「哲学科、楽しいよ!!」って雰囲気が伝わってくる漫画です。

 かといって、別段、哲学科を目指している方や、哲学研究をしている人だけに向けられた漫画ではないです。
 ちょっとでも哲学に興味のあるけど全然知識がないという方や、哲学の古典を読んでみたけど挫折しちゃったという方、ただ単に「何かに対しての疑問を考えるのが好き」という方にも、きっと何かを届けられる。そんな漫画だと思っています。


 あ〜この後ちょっとどっかに論拠があるわけでもないわたし個人の考えが多いので飛ばしてもいいです。

 そもそも、哲学は定義にもよるとは思いますが、自分の疑問を考えて、自分なりの答えを見つけていくのが楽しいところだと思います。それは疑問を抱く誰に対しても開かれているものであって、哲学の研究を専門とする人のものだけではありません。もちろん、専門家の方はその分色々研究されているため、その深度は一般人とは異なるものでしょう。
 しかし、素人だって自分なりに歩みを進めることは自由です。専門が違っていても、もう考える力が衰えてきたな〜って思うくらい年齢を感じていても、今からだってできます
 ただし、自分一人で考えているとどうしても視野が狭くなります。そんな時にあなたの友人となって、時にはあなたの考えを批判し、時にはあなたの意見と一致し、あなたと会話してくれるのが哲学書です。

そんな哲学書と実際に話ができるとしたら……?

 あらすじっぽい繋ぎになった。
 『テツケン』はそういう漫画だと思います。たぶん。わたしの印象です。

 あらすじにもあるように、スタートは天野くんの「哲学書分からん!」からです。そんな哲学書との向き合い方を、天野くんと一緒にわたしたちも体感していける。だから、「分からないの先があったんだ!」とか、「こんな感じに話せるんだ!」とか、色々な発見があると思います。
 ちなみにわたしは「この『テツケン』読んでたらもっとわたしの卒論クオリティ高くできた〜〜!!!!」と思ってます。哲学の卒論ではないけど……。いや弁解するならあれは当時の全力だったし、教授たちにもなかなかに好評ではあったんです……。

 もちろん、『テツケン』の良いところはそういうことだけじゃなく、テンション高く楽しい漫画だし、天野くんと佐藤くんの暗黒コンビエピソード可愛すぎるんですけど、それはあまりにオタクトークになっちゃうのと、本紹介の文章が「古典の解釈を通して哲学する『哲学研究』の楽しさを描く」ってなってるので、やはり哲学研究に比重を置く紹介にしました!


■哲学研究の漫画って難しくないの?

 著者の宇治かばね先生は現在大学院で哲学研究をしています。そんな専門の人が描いた哲学研究の漫画っておかたいんじゃないの……? と思うかもしれませんが、まずあとがきの一番最初を見てほしい。

哲学の古典って難しくないですか? 私は学部時代、哲学の古典を読むのがものすごく苦手でした。
(宇治かばね『テツケン』河出書房新社、2020年、178頁)

そう! 哲学の古典を読むのって難しい!!

 みんな独自の言葉作るし、前の著作の知識はほぼ前提だし、同時代の他の哲学者のことも知ってるでしょ? みたいな態度だし、そもそも生きてる時代が違うから難解!!!! あとついでに原文読めない人にとっては翻訳も古いと読みづらさが更に上がる!!! でもその翻訳の方がスーパー研究者だからとても詳しいやつ!!!!!
 いや私怨も入っちゃったんですけど、哲学研究の漫画描くような人もそこからスタートなんですよ。励みになるう〜!

 そして、『テツケン』では哲学史の知識は必要としません。そして、「『テツケン』を読んだことで勉強できた!」とは決してならないでしょう。そういう意味での哲学研究の漫画ではなく、帯にもあるように、「自分の頭で考えるための哲学古典との付き合い方!!」が描かれている漫画です。
 それを考慮すると、『テツケン』を読んだ後からが難しくなりますね。前述の通りに古典哲学は難しいし、自分の頭で考えるのも難しい。

 そして、そんな「難しい!」ってなった時には『テツケン』の漫画本編と、更に併せてコラムも読んでいただきたいです。
 コラムもね〜めちゃくちゃ宇治かばね先生の古典哲学と、「古典哲学が難しすぎて訳がわからない読者たち」に対する真摯な態度が見てとれて良いんですよ。「分かんないよ〜!」って思ったらコラムに相談するといいです。


■同人版との違い


 『テツケン』は元々は『デンケン』というタイトルでWEB及び自費出版で描かれていました。ちなみに今も読めますし、同人版も紙で買えます!
通販はこちらのBOOTHよりどうぞ。

 『テツケン』は出版社からの書籍化にあたって、ほぼ全てが描き直しされ、また校閲もかなりしっかり行われたようです。
 一冊にまとめる上でストーリーが再構成されたり、また「暗黒コンビ」の天野くん佐藤くんのほのぼのエピソード(また言ってる……かわいいので……)も追加されたりと色々ありますが、大きな違いとして印象深いのは、より分かりやすくなって哲学研究の入門編向けになっているなということです。
 たぶん、書籍化にあたってこうした方がいいとなったとかもあると思うんですけど、『デンケン』の最初期に比べ、段々と彼女の中で「古典哲学の解釈で自分はこんなにも愛憎持ちつつ楽しいけれど、どうしたらもっとこの楽しさをたくさんの人へ広められるだろう?」ということをたくさん考えて、そしてそこへの標識や道の舗装工事をこうしたらいいっていうのが確立してきたんじゃないかなと思います。

 なので、まず読むなら『デンケン』より『テツケン』が分かりやすくておすすめです!
 でも、『デンケン』には『テツケン』にないエピソードやキャラとかも盛り沢山なので、ぜひぜひ『デンケン』も読んでくださいね。
 『デンケン』2巻では『テツケン』でちょろっと触れられていた守屋くんの振られ話も載っています。わたしはそこのレヴィナスの登場シーンが大好きです。


■最後に


 ここまで読んでいただきありがとうございました!
 文字ツメツメになっちゃったかなと思ったけど、文字数は全然ないですね。単純にわたしの技術不足……。

 さて、ここで最後に古典哲学に挑むあなたへの、宇治かばね先生からのメッセージを引用させていただいて終わろうと思います。

もしかすると、時代のギャップや難解さに阻まれて、何も得られないかもしれません。それでも、あなたが古典を通して自分の考えたいと思うことを真剣に考えようとしたこと、自分の疑問に向き合い、他人の思想に丁寧に耳を傾けた時間はきっと無駄にならないと思います。
(前掲、178頁)

好き〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!


 ではでは皆様、本当に読んでいただきありがとうございました!
 残暑厳しい中でもありますので、どうぞお身体を大切に。
 日々の楽しみのひとつとして『テツケン』を読んでいただけたら幸いです。

2020.08.20 りう


■追記

 どうやらわたしのnoteが、『テツケン』本編ではギャグでコーティングされていた真面目さを汲み取りまくってしまったらしく「バレたなら腹をくくってマジメめなコメントも書くか……」ってやってくださったので宇治かばね先生ご本人によるマジメめな話が読めるようになりました!
 こんなん……好きになっちゃうでしょ……。
みんな!!!! 読んでね!!!!!!

(2020.08.20夜に追記しました)