豚の貯金箱

その貯金箱は、陶器でできていて
蓋が付いていない。
途中で取り出すことが出来ない仕様だ。
とお金を入れる前はそう思っていた。

後日いざ使ってみると
チャリンチャリンと硬貨が落ちる音や、たまに紙幣が下敷きになって音が鳴らない時がある。
そんな日々を繰り返しているとふと頭によぎるのが

         最後には割るしかないのか──。

この事だ。最初の頃は少し可愛いと思って購入した。だが割りたく無くなるほどに
お金と愛情をこの貯金箱に注ぎ込んでしまっていた。  

また買えばいい─。1度はそう考えれるのに
この子じゃないとダメなんだ。そう思うと
愛とお金の重さはどんどん増えゆき───。

ある日、何も入らなくなった。

それまで注ぎ込んできた愛やお金は、
これから僕はどこに愛を向ければいいんだ。
そう嘆いていると飼い猫が貯金箱に触れ
その瞬間とっさに手を伸ばし、手を伸ばした先には数センチ届かない貯金箱がゆっくりゆっくり、落下をして、地面に叩きつけられた。

絶望の淵に立たされた気分だ。
陶器が割れ、臓物の如く広がった
愛(紙幣と硬貨)

涙ぐみながら、脳裏にそうだ。お墓を買わないと
今までのお礼の為
君の愛でお墓と線香を買いに足を走らせた。

扉を開け店員さんに事情を説明すると
『そうなんですね...ならコレとかどうですか?』
と困った顔で少し笑いながら、ペット用のお墓を見せてくれた。

決してバカにせず、真剣に話を聞いてくれる彼女に僕は恋に落ち。
勇気を出してご飯に誘うと『はい、喜んで』
と明るい笑顔を見せてくれた。

今度の愛は優しく、大切に注ぎ込もう。
僕の愛で壊さないように。

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