最悪(11)
○村境(夕)
人通りのない林道をとぼとぼ歩く修理。
ウラの声「政から逃げ屋敷に引き籠った馬鹿息子になど絶対に従わぬ!」
天尽の声「いつの時代も下が上に抗う気持ちは抑えられえませぬ」
サトの声「代官が商人の言いなりってわけ」
桃介の声「政府の裁可を仰いでもいいのだぞ」
修理、走って村から出ようとする。
シヅの声「鬼は外。鬼は外」
○(回想)代官所・代官屋敷・寝所(夜)
シヅに慰められている修理。
修理、錯乱しシヅをかき抱く。
○村境(夕)
立ち止まる修理。
修理「そうだな。俺は代官だ。この村の長だ」
声「否」
修理、振り返る。
世直し天狗が立っている。
天狗「やっと一人になったか。臆病者め」
修理「面を隠している奴に言われたくないわ」
修理、柄に手をかける。
天狗「抜く度胸もなかろうに」
修理「何故俺を狙う」
天狗「お前が私に辿りつかないからだ。真実から逃げ、流されておるだけだからだ」
修理、訝しげに次の言葉を待つ。
天狗「お前の父を殺したのは私だ」
修理「……何だと?」
天狗「そしてお前も討つ。それが私の……償いだ」
天狗、刀を抜いて襲いかかる。
修理、逃げ回る。
と、森から鉈を手にした鬼面摺衣の異形達が現れる。
天狗「チッ……時代遅れの鬼どもめが」
異形達に撃退され、逃亡する天狗。
修理「いや、どこのどなた方か存ぜぬがかたじけない。儂は黒金村の……」
異形「代官よ! この時を待っておったぞ!」
鬼面を取る異形、正体はタタラ場の長老連。
今度は長老達が修理に襲い掛かる。
(つづく)
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