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四神京詞華集/シンプルストーリー(1)


【辻にうごめく蟲】

条坊制(じょうぼうせい)とは中国・朝鮮半島・日本の宮城都市に見られる都市計画で、どうかスクロールせずにお読みください、南北中央に朱雀大路を配し、誰もが自由に読めるウィキペディ、南北の大路(坊)と東西の大路(条)を碁盤の目状に組み合わせた、読者の98%は寄付をして下さらず、左右対称で方形の、もし情報に¥300の価値があると思われるのでしたら今後の繁栄のために是非ご寄付を、都市プランである。
……『またあとで』をクリックされそうなので某サイト丸写しの能書きはこのへんで。
薄々というかはっきり気づかれているでしょうが四神京は平城京のパラレルであり、かの慧子界曼荼羅くらい適当、もといおぼろげな都なので詳しい地図は上記のような寄付の勧誘と戦いながら元ネタ程度に調べていただけると助かります。
で、ここでひとつだけイメージしていただきたいのが碁盤の目の都は整然とした四角形のエリアごとに区分けされ、そのエリアは塀によって区切られてるってところです。格エリアの入り口には衛士が矛を持って監視しており、塀を越えて中に入ったら捕まったりもします。後に建設される事になるもう一つの都なんかは、千年の時を重ね塀が崩れてあっちこっちに出入り自由となってゆくのですが、こちらはまだまだ絶賛監視社会の只中であります。
とはいえ。
どんな場所にも死角というものは発生するものであり、この都も先のいくさから十年以上を経て風紀が弛緩しているのもまた事実。
特に内裏を守る朱雀門から離れれば離れるほど人通りはまばらになり、逆に塀そのものが悪事の隠れ蓑になることも多々あるようで。

○左京・東市界隈(夕)
人気の失せた通りを若い雑仕女が、野菜の入った籠を抱え館に向かって小走りで帰路についている。
築地塀に挟まれたせまい道の向こうから、鈴を鳴らして輿が来る。
輿に連なるはどうも粗暴な風体の、袈裟も似合わぬ髭坊主たち。
雑仕女はそれでも籠を置き、道を譲って手を合わせた。
と、その時坊主どもの毛深く太い手が雑仕女を羽交い絞めにして口を塞ぎ、無人の輿の中へと押し込んだ。
輿は虫のように音もなくおぞましいほどの速さで塀の狭間を走って消えた。
寺の鐘はいつもと変わらず、遠く響く。
逢摩ヶ刻、一瞬の出来事だった。

(つづく)

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