最善の選択

「ついに完成だ!」
博士が叫んだ。
ここはロボットの開発研究所。国から秘密裏に仕事を頼まれ、十数人の非常に優秀な研究員達と、彼らを指揮する博士で開発研究に打ち込んでいた。頼まれたのは「地球が抱える全ての問題を解決できる頭脳を持ったロボット」。現在地球では環境問題、紛争問題など様々な問題が起こっており、この国の政府は人間の知能を集結させただけではこれらを解決するのはもはや不可能と判断し、今成長著しい人工知能を搭載したロボットに一縷の望みを託したというわけだ。
「皆ありがとう、これでどんな人間よりも高度な頭脳を持ち、全てにおいて最善の選択をすることのできる人智を超えた人型ロボットを作ることができた」
「長かったですね」
「あぁ、本当に長かった。ありとあらゆるデータをこいつにインプットしたから、かなり時間を食ってしまったな。でも、やっとこれで終わりだ。あとは政府の方に持って行くだけだな」
「報酬はどれほどもらえるんですかね」
「博士、今日くらいは早く切り上げて遊びに行っちゃいましょう」
助手たちの声も気持ち軽やかだった。
「そうだな、でも待て、電源をつけて、まず自分たちの研究成果を噛み締めようじゃないか。このロボットの開発が成功しているならば、起動してすぐに様々な問題解決方法を提示し、実行に移そうとするはずだ」
確かにその姿を早く見たいという声が多数上がり、その声に後押しされるように博士はロボットのスイッチを押した。
ヴーン、という電子音とともにロボットが目を覚ました。
そのロボットは目を開くなり、流暢な口調でこう言い放った。
「現在、地球で深刻な問題が多数生じています。これらは全て人間によるものと考えられます。これより、最善の選択を実行します…」

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