春の風は

春の風は、何かを忘れさせてくれるような気がする。
それが頭の中を通り抜けていった時に、
春の持つ優しさが、私の記憶から何か一つだけ連れていくのです。
雨が降ると春の風が潰れて、そこらじゅうで春の匂いで充満する。だから懐かしさと安心感と、小さな不安感をも感じさせるのだな。
雨上がりに河川敷を歩いていると、不意に誰かが隣で囁いた気がして、
私は振り向いた。
誰もいなかったけれど、私はもうそれが何か分かっていて、
優しく微笑み返したよ。
その風は、長旅をしてきたようだね。
ふと、あの人に思いを馳せてみる。

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