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若者たちの神々(大人モデル)

1980年代思春期に「30代、40代ではこんなにな風になりたい」といったモデルとなる大人がいた。

そんな80年代に高校生の私に忘れられない書籍がある。今は亡き筑紫哲也さんがその時代の旗手たちにインタビューをした文庫本「若者たちの神々」だ。文書だけでなくその人たちのポートレート写真も掲載され、紙質もかなり良いものだった気がする。その登場者で印象に残っているのは、浅田彰、糸井重里、坂本龍一、日比野克彦、椎名誠、野田秀樹、村上龍、橋本治、山本耀司、鈴木邦夫、中沢新一、中上健司、天児牛大・・・(書籍化される前の朝日ジャーナルのインタビューでは村上春樹のものもあり、大友克洋にはオファーして断られたようである)

高校生の私はおぼろげに「俺は今後どのような人生を送りたいのだろう・・・」と考えていた気がする。そんな時この書籍と出会い、自分なりの「大人モデル」に無意識のうちに影響したかもしれない。YMOに関しては中学校入学直後に友人から紹介されLPレコードを買い、当時福岡サンパレスでのライブにも行った。浅田彰や中沢新一はニューアカデミズムの旗手としてそれまでの研究者や学者という職業のイメージを変えた。糸井重里はコピーライターといった職業とともに広告やマーケティングといった概念を与えてくれた。野田秀樹や天児牛大はメディアとは別の芸術職業。日比野克彦はアーティスト。鈴木邦夫は右翼活動家といった職業。山本耀司に関してはそれまでのデザイナーとは一線を画したデザイナーのイメージを与えてくれた。皆哲学的で知的な臭いと同時に私の中の大人モデルを感じた。

その後私自身はマスコミでドキュメンタリー番組の制作がしたいと思い、東京を目指して大学は経済や法学ではなく社会学部に入った。当時は社会学なる学問は市民権を得ていなかったので、周りの大人は「社会の先生にでもなるのか?」と思ったようである。もちろん夢はかなっていない。しかし、魅力的な大人モデルが居て、なりたい自分があったことは確かだ。

果たして今の若者たちの魅力的な大人のモデルは誰なのであろうか。なりたい自分像を描ける余裕はあるのか。若者たちの神々で魅力的と感じた大人たちはもちろん亡くなられた方もいるが、現在も活躍していらっしゃる。ただ、現在の成功者モデルには当てはまらないのかもしれない。当時はお金持ちになることが理想でなかった気がする。自分のやりたいことを信じて覚悟をもって生きていることができるようになった初めての時代だったのかもしれない。その後バブルを経過し、失われた30年。今の思春期の若者はレールを外れれば、将来年金ももらえないかもしれない不安にさいなまれ、大学生から資産運用を学んでいく保守的な時代。

もう一度若者が夢をもってワクワクチャレンジできる時代はやってくるのか。その為には私を含め今の大人達が魅力的な大人モデルとなれるような生き方をしなければ・・・



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