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読書メモ30「飛ぶ教室」

「かしこさをともなわない勇気はらんぼうであり、
 勇気をともなわないかしこさなどはくそにもなりません!
 世界の歴史には、おろかな連中が勇気をもち
 かしこい人たちが臆病だったような時代がいくらもあります。
 これは、正しいことではありませんでした。
 勇気のある人たちがかしこく、
 かしこい人たちが勇気をもったときにはじめて
 ─いままではしばしばまちがって考えられてきましたが─
人類の進歩というものが認められるようになるでしょう。」
まえがき ─その2─

この前書きだけで、うっかり満足してしまい読み止まっていた
「飛ぶ教室」
子ども向けだけど、子どもが読むわけないのだ。
これで胸熱!となるのは中年以上じゃないのか(私のように)。

そして、読んでほしくなるんだよなー子どもに。
わかる。

それに、ほかの訳が出ていたとしても、
山口四郎がいい。

「それはなにか、二人で無言の約束でもしているように見えました。
 口なんかでは、とうていいいあらわせない約束をです。」
第7章

「口なんかでは」という言葉の強さ。
言葉が大きな顔をしているというか、
言葉にできない思いなど存在させないぞというような
世の中の今でも、いまだからこそなのか。

言葉以外のことを上手に受け取れない私は
言葉で表してくれないと分からない。
だからこそ、「口なんか」で表せないほどの思いを
受け取りあえる関係性にひどく憧れてしまう。

どんなにか私を好きで、大事にしてくれているにしても
お気持ちだけじゃ、意味はないのだ。
それはストーカーと同じであって「つもり」でしかない。
私が愛されてるなと思うことが大事。

顧客満足度あってこそ、って感じか。
家に帰るまでが遠足。

私も相手が安心するまで大事にしたいと思うのだ。

冒頭の「かしこさ」は
21世紀の今の日本では、小賢しい人の方が多そう。
小賢しい人が持てないものこそが勇気な気もする。

大切な人を、きちんと大切に扱うことは
小賢しい奴なんかにはできやしないのだから。

かしこく、勇気をもつ人間になってほしいと
子どもに対して願う前に、
自分たちこそがそうなればいいじゃないか、
現代社会を生きる大人諸君。

おしまい。



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