見出し画像

読書メモ14・「国境なき医師団」を見に行く

一挙両得を目指す

いとうせいこう、という名前だけは知っていた。
国境なき医師団も同じく。
ぼんやりとしたイメージは、両方ともに持っていた。
そして人から聞いたこの本で一挙両得を目指して購入。
ハイチ、ギリシャ、フィリピン、ウガンダの
各センターを見に行く。
そこでMSFについてのレクチャー、現地のこと、
携わる人々との出会いを書いているルポルタージュ。


最近フランス語をDuolingoでやっているので
Médecins Sans Frontières
をそのまま心に入れることができた。
Sans って、 Without とかの意味だ!とかね。
少しだけ近しくなったようで自分の単純さに感激した。

放っておけない人たち

困っている人を放っておける人、が
思いのほか存在するのかもしれないと認識したのが
結構つい最近。
困った人を放っておけない!という人が
世界中で、熱意を持って働いている姿を
つぶさに見てきて書いてあるのがこの本。
同時に、世界にはまだ困難はいっぱいいっぱいあるんだということも
しっかり書かれている。

根治療法なんて、そこにはなくて対症療法だけで
そんなの意味あるの?
みたいなことを口先で言う人たちをよそに、
困っている人が目の前にいたら体が動いてしまう人たちが
確実に世界には存在している。
ぼんやりしたイメージのクリスチャニティだけで説明は当然できない。
文化的な背景、にしては世界中にそういう人は存在している。
そんな彼らとの出会い。

反省できる生物として

文化も言語も違う人たちだからこそ、
相手を尊重し、議論を重ねていく。
常にそうする文化がある。

これを読んで、日本は長い人類の歴史の中では
まだまだ赤ちゃんなのかもしれないなって思った。

ギリシャ編にあるMSFギリシャの会長の言葉を引用する。

「議論は常に他者を尊敬しているから出来ることです。けれど私たちも西洋的に考えるとついマッチョになり、攻撃して議論に勝とうとしてしまう。そういう理事会の多くによって、我々は大切なものを失ってきました。これこそ反省すべき点です。」

いとうせいこう:「国境なき医師団」見に行く:p202:2017

子どものいない街で

フィリピン編では、初めての中長期的支援を目指して動いていること。
リプロダクティブ・ヘルスのために。
子どもが増えすぎると育てきれないのにかの国はカトリック国なので
避妊も中絶も法律とかでなく気持ち的に受け入れられない。
子どもがいっぱいいる世界。

「大人も寛大だったし、彼らの手本であろうとした」

いとうせいこう:「国境なき医師団」見に行く:p340:2017

今は単なるマイノリティであり、邪魔にすらされる日本と
どちらがいいのかは一概には言えなくても
大人にすらなる機会を見失っている国については考えた方がいいだろう。

2023年8月の現在、日本では18歳以下の子どものいる世帯が
18%程度しかないというニュースが流れた。
データは2022年のものだそう。

知らない、と言える知性

いとうせいこうさんの大変に良いと思ったところは
とにかく
「知らない」ということを「恥ずかしい」と書き、
きちんと「知らない」と言えるところだ。
知らないから見に行く。
知らないから知ろうとする。
その姿勢は、知ったかぶりをしたり
専門家の言葉をないがしろにする反知性とは
当然ながら大違いだ。
そして、心の柔らかさ、感受性の高さも。
小説も読んでみたくなったので、良い出会いだったな。


私にとっての「いとうせいこう」はこの一文。
彼のやわらかさを表現できていると思ったのだ。

ウガンダの人々は田舎であっても誇りが高いのだろう、こちらをじろじろ見ることをしなかった。

いとうせいこう:「国境なき医師団」見に行く:p388:2017

So or But

Life is mess, "so" it's beautiful.

これは私が一時期よく言っていた言葉なんだけど
「so」なのか「but」なのかを
今もまだ決められていない。
人生はひどいもの、「だから」美しい。
人生はひどいもの、「だけど」美しい。
これを読むあなたは、どっちなんだろう。

共感、エンパシー、Empathy

生きる時に、共感というものがそこにあってくれたなら。
共感を持つ仲間がいてくれたなら。
どれだけ心強く生きることを続けられるか。

「人道」という言葉について、もうしばらく考えたくなった。

そしたら、続きがあったので(今知った)
これを読んでまた考えようと思う。
そして売上の一部がMSFに寄付されるんだから、買おうなみんな。
私も子育てほぼ終わったことだし実際に行く技能もないので
ちょっぴり寄付しようと思えるのであった。
おしまい。



この記事が参加している募集

よろしければ投げ銭をこちらへお願いします。 投げ銭をくださるあなたにも私以上の喜びがありますように。