30年以上ぶりの電話

1.同窓会

あなたは何らかの理由で、付き合いのなくなった友人のことを思い出したことはありませんか?その時、「今、どうしているかな、会ってみたいな」と思っても、10年以上のブランクがありますと、電話をするにも、ちょっと勇気がいるかもしれませんね。私もそんな経験をしたことがあります。

その時は連絡できなくても、小学校、中学校、高校時代の友人であれば、同窓会で再開は可能な場合もあるでしょう?私も中学時代の同窓会で、還暦同窓会をするという案内を頂き、45年ぶりに再会したということがありました。

私はそれまで同窓会の案内をいただいても、参加することはありませんでした。参加しない理由は、常に前を向いた生き方を貫いてきましたから、過去を振り返ることへの抵抗があったからです。

同窓会に参加する意味が見いだせないとか、昔の郷愁に浸りたいと思わないとか、時間がもったいないと、本気で思っていましたから、いくら誘われても参加したいとは思わなかったのです。

でも、還暦を迎えたころ、人生一区切りという気分にもなって、同窓会で「昔の友人たちに会ってみるか」という気分になったのです。これは私の中の大きな変化でした。

参加者は100名を超えていました。懐かしい顔ぶれにも再会して、「お久しぶり」という感じは大いにありましたが、大勢のクラスメートや同級生と会ったということだけで、旧交を深めるまでには至りませんでした。

この時は、学年全体の同窓会で、人数が多すぎて、特定の人と語り合うという感じではなく、結果的に、ただ参加しただけに終わり、そこから何かが生まれたり、発展するということはありませんでした。

2.年賀状を出さなくなって感じたこと

年賀状は何のために出すのかを考えたことありますか?

私の周りでも、5~6年前から年賀状をやめる人が徐々に出てきて、年配の人はともかく、自分より年少の人からも、「年賀状は今年を最後にします」という文面が増えだしました。

そういう年賀状をもらっても、「メールもあるし、そういう考えもあってもいいか」というぐらいに捉え、その時は、自分も年賀状をやめようとまでは考えていませんでした。でも、2年前、年賀状を出すことを、やめることにしました。

年賀状をやめる前に考えてみました。「年賀状とは何か」をです。自分なりの答えは、相手のことを思い、心から、「いまどうされていますか?お元気ですか?」と、日頃会えない人に、せめて年に一度、新年にあいさつをするというのが年賀状の本旨のはずであると。

それがいつの間にか、冬休みが明ければすぐにまた会う学校の友達や、職場の人など、身近な人に儀礼的に出すようなものとなり、枚数が増えると、手書きでするのが面倒となって、文面も誰に対しても、同じものを印刷をするというのが当たり前になってしまいました。

ビジネスをしていますと、もらったのに出さないというのは失礼になると思い、儀礼的にも出すのが常識と考えていました。どこにでもある印刷文面の年賀状をもらっても、ありがたみもないですが、それでも一度もらえば、その年以降は出すのを当たり前にしてきました。ですから、枚数は増える一方でした。

60才間近になった折、年賀状を出すのが精神的な苦痛に感じられたのです。もらってうれしい年賀状から、出すのが面倒な年賀状、そしてもらうのも面倒な年賀状という気分になっていったのです。

そこでついに年賀状を、還暦を機会に出すことをやめました。そのおかげで年末の忙しさが緩和し、精神的苦痛から解放され、また、正月三ヶ日も出し忘れがないかと、年賀状のチェックで、「のんびり気を休めることもできない」という不満もなくなりました。

年賀状から解放されますと、不思議なことに、人恋しくなりました。私が出すのをやめても、年賀状を下さる方もあり、その中には、自分がお世話になった人も含まれています。

その人たちへ想いを馳せますと、「今どうされているかな、お元気でいらっしゃるかな、今、何をされているのかな」と、無性に電話をして話をしてみたくなったのです。

3.覚えてくれいますか?

そこで、古い電話帳を出してきて、電話番号を調べました。電話したいと思った人は5名です。この5名のどなたにも、30年以上お会いしていません。とりあえず、その中でも電話をしても、スムーズに話せそうと思う人に、まず電話しようと思いました。

しかしながら、電話を手にしても、いろいろ考えてしまって、今日はやめておこうかという気持ちになりかけました。電話をすることに、恥ずかしさや、ためらいが出てきて、すんなり電話できないのです。

これは、あたかも何かを告白するという心境にも似ています。例えば、「あなたが好きです。付き合ってください。」と、初恋の人に告白するような緊張感がありました。

そのようにドキドキすることは、久し振りのことで、自分が滑稽に思えました。深呼吸をしますと、徐々に落ち着いてきたので、まず一人目の人に、思い切って電話をしました。

その人は、私が勤めていた職場の先輩でした。電話をしますと、ご本人が出られました。「長らくご無沙汰をしております。」から始まり、名前を名乗って、「その節はお世話になりました。覚えていてくださいますか?」と尋ねました。

年賀状をもらっているのだから、相手は覚えてくれていると思っても、30年以上のブランクがありますから、電話で話すことに、抵抗感を持たれるかもしれないという思いもありました。

相手の第一声は、「いやー、久しぶりやね。元気にされていましたか?声を聞くのは何年ぶりかな?」と、電話に対する抵抗感は、全くありませんでした。私は、久しぶりに電話をした理由を述べ、近況をお伝えし、昔話に花を咲かせることができました。

最後に、相手の方から「電話をくれてありがとう。うれしかったよ。話ができて本当に良かった。コロナが落ち着いたら、食事にでも付き合ってよ。」と言われ、電話をしてよかったと思えました。

その後、残りの4人の方々にも電話をしました。皆さん、同じような感じでしたが、お一人だけは、電話はこれが最後と思いました。80歳を過ぎて、ご高齢でもあり、話が弾みませんでした。でも、お話ができて良かったと思えました。

そんなことで、30年以上会っていなくても、4名の方とは話が弾み、また会おうということになりました。30年の時を経て、会うときには、何も飾ることなく、ありのままの自分を見て頂こうと思っています。

みんな60歳を超えています。どんな人生ドラマが伺えるか、今から楽しみです。  和合実


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