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音楽でお金を頂く為に必要なもの【DTM初心者向け】

僕は今まで本当に色んな仕事をしてきた。

高校を卒業してから、ライブハウスPA、ブライダル音響、DJ、作編曲家、照明、構成作家、番組ディレクター、MC、ライター、WEBデザイナー、グラフィッカー、VFXアーティストなどなど。
今は家庭の事情で田舎に引っ込んだので、のんびりカメラマンなどをしつつ既設音響系の現場にいる。

なので僕は同世代の人よりもほんの少しそういう業界の仕事に慣れている可能性がある。

とはいえ、これだけ沢山の業種を並列にこなしてきたから当たり前の事が起きる。

それは、どの分野でもスペシャリストになれていないということ。

僕はクリエイターとしては器用貧乏を絵に書いたような人間だ。普通、大型案件は各分野のスペシャリストを呼ぶものだから、そういうものには到底参加出来ないのである。
クオリティで相手を黙らせる系のクリエイターになれなかった、これが僕の悪い点だ。

しかし、良い点もある。

それは広範な知識体系を仕入れることが出来たこと。それから、どの分野でもクリエイターとしてお金を貰う為の最低条件が分かったことだ。

今日はそんな器用貧乏が話す、クリエイターとしてお金をありがたくも頂戴する為に必要なものの話。


❶クオリティの価値

今まで見てきた作曲家志望の方はこう考える人が多い。
「クオリティさえあれば仕事が取れる。言い換えれば、まだ仕事が取れないのはクオリティが低い為だ」

これはある意味合ってるとも言えるし、間違ってるとも言える。

クオリティで全人類を黙らせることが出来れば、それは確実に仕事が取れるだろう。引く手数多だ。
ただ全人類を黙らせるクオリティというのは、非常に厳しい面がある。この世に存在しているあらゆる有名な作曲家達の曲と正面からぶつかって、それで尚も引けを取らない質を見せつけることが出来なければいけない。

これはやれる人間が限られている。
暴力的な才能、時代を捉える嗅覚、恵まれた環境、人並み外れた努力、絶大な自己への信頼。これらを全て、又はおおよそを獲得している必要がある。

これを読んで「まさしく私のことだな」となった人はそのままクオリティを高めていけば問題ない。その自信と努力と才覚が貴方を裏切ることは無い。

しかし、そうはならなかった人。
恐らく読者諸兄の大半はそうであろうと思うが、そういう人はクオリティとは別の部分が必要になる。

僕の例を見れば明らかだ。どの分野でもスペシャリストになれなかったが、どの分野でもお金を頂いて生きてきたし、どの分野でも「まぁ一応プロ」と言ってもギリおかしくない位の実績がある。

つまり、お金を頂く最低条件とは「最高級のクオリティ」では無いということである。
この世の全ての飲食店がミシュラン3つ星なら大変不便なのだ。マックだって食べたい。

クオリティはあくまでクリエイターと名乗るに必要な能力値の1つでしかないのだ。
スポーツ選手だって色々ステータスがある。パワー、スピード、テクニック等だ。
それと同じでクオリティは1つのステータスなのだ。スポーツ選手で言えばパワーに相当する。実際のスポーツ選手でもパワーが無くとも他で補ってる人だって居る。

クリエイターもそれと全く同じなのだ。全員が全員パワーだけで勝負する必要は無いのだ。


❷クリエイターのステータス

スポーツ選手のパワーがクリエイターで言うクオリティに相当するように、他にもステータスがある。大雑把に説明する。

・クオリティ
論じるまでもない。品質はクリエイターの純粋なパワーだ。

・制作スピード
クリエイターのスピード。必要納期の短さはクライアントからすれば大変ありがたい。速ければ速いほど本当に困った時に頼りになるクリエイターになる。

・アイデア
クリエイターのテクニック。クライアントのざっくばらんな要望を予算内で叶える為に試行錯誤する力。

・対話能力
クライアントの言いたい事を汲み取り、スムーズに打ち合わせを進める能力。実はこの力だけでも仕事が取れる。

・納品力
絶対に納期漏れをしない力。クリエイターの計画性や人間力が試される部分。これが低いと企業は仕事を振れない。

だいたいこの5つ。
クオリティがとても高いクリエイターだとしても、他が全然ダメなら余程のことが無い限り仕事は取れない。もしくは継続しない。
この5つを満遍なく持っている人こそが最高のクリエイターだ。

あくまでクオリティは1つのステータスに過ぎない、という部分はストンと納得出来ない方も居るかもしれない。

それにも理由がある。
僕らは普通に暮らしていると「完成品」しか目にしないからだ。
完成品に至るまでのめちゃくちゃ面倒なあらゆることは目に映らない。なので「作品の出来=クオリティ」でのみしかクリエイターを評価出来ないのだ。

しかし実際の完成品とは沢山の人が協力して数々の大変に面倒臭い調整や検討の上でようやく世間様にお見せ出来ている。この調整や検討の能力が高い、ということも実際はクリエイターの評価に繋がっているのだ。

実際に僕の身近には照明をほぼ組めないライトアップアーティストがいる。彼は案件を受け、最適なアーティストに発注し、その意見を元に機材を発注する。実際に考えて機材組みをするのは下請けのライトアップアーティストだ。

では照明を組めない彼はクリエイターでは無いのか? 当然、否である。彼はそこそこ名の通った舞台演出、ライトアップアーティストとして活躍している。
かなり極端な例だがクオリティのステータスがほぼ0のままクリエイターとして大成したパターンである。

こういう事例からもクリエイターに必要なのはクオリティだけでないことが分かるだろう。


❸クリエイターに絶対必要な力

さて、ここまでクオリティはただの1つの指標でしか無いという話を散々してきたが、実はクリエイターにはたった1つだけ「これが無いとお話にもならない」という能力が存在する。クオリティではない。

それは『自信』である。

自信が本当に全くない商業クリエイターは恐らくこの世に存在し得ない。
自信が無くて「いや自分は何にも出来ないッス」て言ってる人に任せられる制作など一つも存在しないのだ。

なのでクリエイターを目指すなら信頼出来る自分を積み上げる必要がある。

これは何も常々自信満々で居ろ、という話ではない。自分にも出来ることはあるはずだ、程度の自信は持っておくべきである、という話だ。

自信が無ければ堂々と案件を受注することも出来ない。当然発注も来ない。

逆に自信があり、勝算があるならどのような形であれ案件を受けることが可能になるのだ。
その案件をどのように捌くかは自身のステータスと相談しながら考えれば良い。然るに自信だけは無くしてはならない。音楽で食べていきたいならね。


といことで、この記事は「音楽でお金を頂くために必要なことはクオリティではなく自信である」という結論で締めくくる。

自信あり過ぎて失敗した話もあるが、まぁ自信0よりは良いのでは?と僕は思います。

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