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寝ている間に失われてしまう朝

このブログは、2017~19年にかけて、某美大生が送る(宇宙人向け)日常ブログ『親指のゴールデン・レコード』のメンバーとして投稿していた際のものです。


■2018/01/05 

P1022022のコピー

 快晴の江ノ島から、初日の出を見た。
太陽って、水平線から出てくるよりもずっと前から東の空を照らし、そこにいるのは分かるのになかなか顔を出さない。
けれど、一度輪郭が見え始めるとそこからは早い。あっという間にまあるい形がポコっと出てきて、そこからはすごい速さで登って行ってしまう。
 
 ああ、時間ってこんなスピードで流れていってるのか、と思う。
それは時計の秒針よりずっとリアルな時間を突きつける。
 
 元旦の朝こそ、日の出を見たものの、その後三が日の私の生活は目も当てられないものだった。午前中に起きられないのはもちろん、日が沈みかける頃にやっと布団から出て、夜は眠れず、空が明るくなってから寝るという完全な昼夜逆転。
 
 こんな私だが、半年ほど前まで早朝4:30に起床するという生活をしていた。6:00出勤6:30開店の駅構内にあるカフェでアルバイトをしていたからだ。制服に着替える時間も考えると、5時には家を出なくてはならない。
バイトを始めた頃は12月で、5時だと外は真っ暗だった。いつもはそこそこに人通りがある道も、駅前も、ほとんど人がいない。どこまでも静かで、空気が澄んでいて、ピンっと張り詰めている。自分しか知らない時間を過ごしているような特別な気持ちになれる通勤の時間が好きだった。
普段寝ている間の時間、自分がそこにいない時間、その間にも確かにその場所には時間が流れているのだ。
電車に乗ってバイト先の最寄りに近づく頃には空がほんのり明るくなる。着替えて開店準備に向かう頃には、改札の向こうが明るくなっているのがわかる。
 8:00頃最初の休憩、その時にようやくみんなが普通の朝を迎えている。休憩室のテレビで一息つきながら、ZIP!を眺める。もちろんバイトのない日は自分もその頃ようやく電車に乗ったりしているのだ。だからなんか、自分の中で時間がねじれているような感覚があって、朝のバイトは一種の非日常感があった。

 もともと朝は苦手だし、寝坊魔だし、遅刻魔なのだが、考え方が極端なので強制的に朝型人間を目指そうとモーニングの時間にアルバイトを入れていた。それでも夜遅くなる日もあるし、バイトがない日は寝溜め状態。バイトを辞めた今では4時頃まで逆に起きている。もはや24時間の全てが活動可能時間と化した。

 バイトを辞めたのはそれ以上にやりたいことがあったからなので、悔いはないのだが、あの特別な朝の時間が恋しくなる時もある。(早起きすればいい話なのだが。)

 
 朝は毎日やってくる。私が寝ている間も、きっと常連だったあのおじさんはいつもと同じモーニングを注文しているのだろう。

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