地震から避難している最中にスマホを忘れた話

あらすじ

 2024年4月18日 3時40分頃
 タクシーの車内にスマホを忘れた。
 気づいた時にはもう、タクシーは走り去っていた。

 同日18時時点でスマホはまだ手元に帰ってきていない。カムバックマイスマホ!

 4月19日 11時50分
 スマホ帰ってきました!

事の発端

 事の発端は4月17日にさかのぼる。

 23時、私はいつもは寝ている時間だが、その日はなんだか夜ふかしをしたくて、radikoでRKC高知放送の『水曜日のカツオボーイズ(以下、水カツ)』というラジオ番組をはじめて聴いていた。
 実はradikoはプレミアム会員になるほどのユーザーなのだが、友人が毎週Xで実況している『水カツ』に興味はあったものの、生活リズムと合わなくてなかなか聴けないでいたのだ。
 ちなみに『水カツ』は、深夜らしく下ネタ・エロネタがウリの番組である。

 ラジオネーム・豚とか芋さんの、「引っ越し」に関するテーマメッセージに笑っていた時に、ふいにガタガタと音がした。
 おや? と思った次の瞬間には、グラグラと部屋が揺れ出した。地震だった。

 23時14分頃、豊後水道を震源地とした、最大震度6弱の地震が発生。
 私が住んでいる広島市西部は震度3だったが、体感30秒ほど揺れ続け、あまりの揺れの長さに恐怖を覚えながらもうろたえることしかできなかった。
 やがて揺れは収まったが、『水カツ』はイヤホンでつけたままだったので、タイムラグで緊急地震速報のアラート音が。

 チャンチャーン♪ チャンチャーン♪
 (おなじみの不安を煽るアラート音)

「やめてくれ〜!」

 『水カツ』も途中でニュース速報に切り替わり、radikoを切ってXのフォロワーさんが開いていたスペースにお邪魔して、「怖かったね〜」と話し合った。
 中には南海トラフ地震の前兆じゃないかと不吉なことを言うフォロワーさんもいたし、何よりあの忌々しいアラート音のせいで心臓のバクバクが治まらず、眠るに眠れなくなった。

 日付変わって18日、私はスペースを開いてひとりスピーカーとしてとりとめのない話をくりひろげたり、スペースを終了して1時から「そうだバケットリスト書こう」と思い立ってノートにやりたいことを書き連ねていたが、また地震が来るんじゃないかと怖くて一向に落ち着かなかった。
 リスペリドンという不安時・焦燥時に飲む薬も舐めたのだが、それも効かなかった。

 で、思い立ったのだ。

「ひとりだと不安だし、せめて人のいるところで休もう。本通りのネットカフェに行こう」と。

 それが3時のことだった。

なぜスマホを忘れたのか

 前置きが長くなってしまったが、要は「ひとりだとまた地震が起きた時怖いから、街中のネットカフェに避難しようとしたところで、移動手段のタクシーの中にスマホを忘れた」のである。

 広島市中区本通りだが、私の住まいからはバスで30分、徒歩だと一時間はゆうにかかる。
 女ひとり夜道を歩くのは不安でしかなかったから、DiDiでタクシーの配車をお願いした。
 3時20分頃、タクシーが自宅アパートの前に到着、名前を確認してもらい、いざ本通りへ。

 運転手のおっちゃんに地震で怖い思いをしたこと、それゆえネットカフェに避難すること、そしてプロ野球のカープの話をした。
(余談だが、カープと天気の話は広島ではほぼ同等である)

 おっちゃんは17日のマツダスタジアムで行われたDeNA戦でカープが勝ったことに喜んでいたほか、カープは球団そのものが好きな箱推しであること、遊撃手としての小園海斗選手を応援していることを親しげに話してくれた。
 矢野雅哉選手の守備が一級品であるがゆえに、現在のカープの遊撃手は矢野派か小園派かで分かれてくるのだが、そういうやりとりをするのが久しぶりだったので私はとても嬉しかった。

「じゃあネットカフェでゆっくりおやすみくださいね。忘れ物に気をつけてください」

 本通りのセブンイレブンの前に着くと、私はありがとうございましたと言って、タクシーを下りた。
 その直後に気づいた。

「……スマホがない!」

 それに気づいた時にはもう、タクシーは宇品方面に向かって走っていったあとだった。

 乗車時にタクシーの座席にスマホを置いて、そのまま忘れてしまった。
 完全に私のチェックミスだった。

あってよかったiPad

 スマホを忘れたあとの話だが、私にはもうひとつのスマート端末があったため、困りはしたがおかげで冷静でいた。
 そう、iPadである。私は在宅で絵を描くことを仕事にしているため、去年12月に購入していたのだ。

 本通りには遊びに行くものの、最寄りの交番がどこにあるかわからなかったので、iPadにナビしてもらい本通交番へ。
 4時前に交番にたどり着き、遺失届を出した。その際スマホの機種を訊かれたのだが、私はピンクのボディのXperia端末であることしかわからないと言った。
「他に特徴は?」と訊かれたので、

・広島FMの夕方ワイド番組『ゴッジ』のステッカーが貼ってあること
・カープの新井貴浩監督のフレークシールが貼ってあること
・待受画面が『刀剣乱舞』の小夜左文字であること

以上3点を伝えた。
(小夜左文字のくだりについては、「黒っぽい着物を着た青い髪の男の子」と説明した)

 交番を出たあとは、車両の外見的特徴からタクシー会社の電話番号をiPadでゲットし、公衆電話からタクシー会社に電話をした。
 あの物腰のやわい運転手のおっちゃんが気づいて、会社に届けてないか一縷の望みにすがったのだが、残念ながら運転手はみんな帰ったあとだと電話口のおばちゃんに言われてしまった。

 さてどうする。今日は週に一回の通勤の日だし、自宅に帰るのも難しいぞ。

それからどうしたか

 本通り交差点に近い方のマクドナルドに入って、ホットコーヒーを飲みながら、iPadからXで「スマホ忘れたwww」とpostをしていた。

 何やってるんだ。

 もちろんそれだけでなく、ネットカフェに入る方法を調べていた。
 本通りにあるネットカフェ・快活CLUBには会員証が必要なのだが、その会員証も忘れてしまったスマホにアプリを入れているだけで、カードは持っていなかったのでそのためである。
 iPadに快活CLUBのアプリを入れて、会員登録をしようとしたが、SMSがないとダメだったので早々に詰んでしまった。
 また、iPadからスマホの現在地を調べるサービスも、同じ理由で使えなかった。
 とはいえ眠気と疲労感が容赦なく襲ってきていたため、ダメ元で快活CLUBに向かった。
 結果としては、身分証明書を持っていたため、新規会員登録をしてブースに入ることができ、少しだけだが休むことができた。

 やがて夜が明けて、朝一番に中央警察署に赴き、スマホがまだ届けられていないことを確認して職場へ向かった。
 職場では上司にスマホを失くしたこと、何かあればiPadに入れているDiscordに連絡をしてもらうこと、もしスマホが見つかれば警察から職場に電話がかかることを伝えて、仕事をした。

 仕事を終えたあとは、いつものバスで帰り、10時間ほどたっぷり寝た。
 ただ、途中でiPadのギガを使い切ってしまい、Wi-Fiがない自宅ではYouTubeもNetflixも見れなくなったのがちょっとつらかった。

スマホ見つかる

 スマホをタクシーに忘れた翌日4月19日、10時前に上司からDiscordにDMが届いた。

「あいさん、スマホが中央警察署に届けられたそうです」

 私は喜び飛び上がり、上司に仕事を置いてスマホを取りに行かせてもらう許可を得て、中央警察署までスマホを引き取りに行った。

 落とし物係がある会計課の横で、警察官のおっちゃんと相談しているおじいさんの声がでかく響いている中で、手続きを踏んでスマホを受け取った。

「遺失物が見つかった時の状況を説明します」
 そんなのしてくれるんだ。はじめて知った。

「舟入◯◯町にてタクシーの中で、運転手さんが後部座席から遺失物を発見したそうです」
「お礼も特に必要ないとのことです」
 ありがとう、小園派のおっちゃん。

 かくして、私のスマホ忘れた騒動は一日で幕を閉じた。

よかったこと

 今回の事件(?)でよかったことを振り返る。

・サブ端末としてiPadを持っていたこと
・身分証明書を持っていたこと
・落ち着いて行動を取れたこと
・紛失したスマホが特徴的であったこと

 また、乗ったタクシーの運転手のおっちゃんが親切で心優しい人だったのも功を奏したと思う。まあ、忘れ物があった際は警察に届けるのが運転手の義務だが、もしおっちゃんが悪い人だったらスマホは無事に帰ってこなかっただろう。
 そういう意味では「日本もまだまだ捨てたもんじゃないね」と、Xのフォロワーであるおじぃたまがリプライをくれた。私もそう思う。

気をつけたいこと

・スマホを適当なところに置かない

 これに尽きる。
 スマホがない生活は一日だけだったが、なくて不安でしかなかったので、外出先に携帯する際はサコッシュに入れて生活することにした。
 あるいはスマホにショルダーひもをつけるのもいいかもしれない。
 また、「大きな地震があったとて用心するに越したことはないが、必要以上に不安がって避難することもない」とも学んだが、これを克服する必要はないのではないだろうか。ひとりで何かあった時、そばに誰かいた方が安心なのは事実なわけだから。

最後に

『水カツ』はいいぞ。

 水曜日のカツオボーイズ|ラジオ|RKC高知放送
 https://www.rkc-kochi.co.jp/radio/katsuoboys/


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?