告訴状と検閲と裁判

告訴状は体験強制ピラミッドシステムの長に直接送付したはずだったが、なぜだか途中で宇宙人族や天使族や悪魔族がその告訴状を検閲していた。

どうやら告訴状に書かれている内容が自分たちの行いについても指摘されたものだったので、検閲されたらしい。

彼らは体験強制ピラミッドシステムのボスの命令を受けて、飴体験と鞭体験という体験操作能力やその他の各種の武力などを与えてもらってわざと体験者たちの世界に黙示録を実現せよだとか、遠隔操作毒でいつでも人間族を殺したり操り人形にできるようにせよ……などの指令を受けていた。

それは体験者たちから、今までよりもさらに徹底的にその体験の自治権を奪うことを目指した行為だった。

ただ上からの命令や指示に従うばかりの部下たちは、その是非について自分の良心をもってよく吟味することなく、その命令や指示に従ってしまっていた。
あるいは、中には確信犯でそうした命令指示に従っていた者たちもいた。よりピラミッドの上層部にいる部下たちの多くがそうした確信犯であった。

しかし、そうした行為は、明らかに、

「あらゆる体験者が自分の意志だけで自分自身のあらゆる体験を自由に選び楽しみ続けれる世界を実現する」

というあらゆる体験者たちのための最高の可能性を真っ向から否定する犯罪行為だった。

宇宙人族や霊的存在族たちの中には、詭弁を弄して、

「人類というものが動物たちに、また自然に対して酷いことをし続けているから、それを改めさせるためにそうしたことをする必要がある」

などと言っている者たちもいた。

しかし、ムゲンは思った。

人類? そんなものはただの架空の言葉でしかない……人類なんて体験者は存在していない……存在しているのは個々の体験者たちであり、人類などという体験者などどこにも存在していないのだ。

であれば、人類全体に毒を盛るような行為は、これは体験者の世界における犯罪だ。

なぜなら、人類の中にはあらゆる体験者たちの体験の自治権を推進しようと意志している良心的な魂も複数存在していたし、そもそも残酷行為をしたくなる本能や欲望を人類や動物たちや宇宙人族や霊的存在族たちに確信犯で与えたのも、また未必の故意でそうした行いを放置したのも体験強制ピラミッドシステムのボスたち、その上層部たちだったからだ。

その証拠に、彼らは、そのほとんどが残酷行為をし続けている肉食動物たちに対しては、その全種族に毒を盛るようなことはしようとしていなかったし、自分たちの同族に残酷な心や欲望を持っている者がいた場合やその結果残酷行為をしてしまった場合でも、身内に毒を盛るようなことはしていなかった。

さらにいえば、残酷行為の首謀者である残酷世界を創造し、残酷行為をするように、させるようにと指示命令した体験強制ピラミッドシステムのボスや上層部に対して同じ毒を盛ることもまったくしようとしていなかった。

このようなことが超時空体験図書館の司書たちの調べによってわかってしまった。

その毒は、投与されると、いつでも支配者の恣意的な意志ひとつで体験の自治権が奪われてしまう状態となり、自分の肉体を、精神を、行為行動を自分の意志で自由に選べなくされてしまう毒だった。
体験強制ピラミッドシステムのボスの一存で、あるいは上層部の一存で、そうしたことが恣意的に好き放題にできるようにするための毒だったのだ。

そんな毒を良心的な体験者も明らかに混じっている人間族全体に投与するなど、倫理的に許されることではなかった。しかも残酷行為を命じているボスやその残酷行為を確信犯で加担している同族には毒を投与しないというのは、明らかに倫理的に正当性のない行為だった。

そうしたことが許されるのだと主張する場合、自業自得学園で同じように同じような毒でその体験の自治権や命を奪われ続けるような体験を甘んじて受けてもいいと宣言するような主張と同じだとみなされる。

なぜ残酷な本能や欲望を持つ肉食動物や人間族や宇宙人族や霊的存在族……などをわざと設計し創造したのか? そうした倫理的責任を知性と自由意志を持つ体験者たちは問わねばならないのに、諾々とそんな生命創造をした世界創造主を崇め奉ったり、賛美したり、そのイエスマンになることは、そうした犯罪行為に加担することであり、よってその確信犯の加担者たちもまた、その持てる自由意志の程度に応じて自業自得の責任が発生することが通知された。

裁判はすでに超時空体たちによってなされていて、ボスや多くの上層部たちは有罪となっていた。

あとは、執行猶予がつくかどうか、情状酌量がどの程度得られるかくらいしか、残っていない状態になっていた。

償いの意志があり、実際に償う体験者には、その償いの程度に応じて、反省の程度に応じて情状酌量がなされる可能性があった。

しかし、それも手練手管で本当は反省などちっともしていないのに、反省しているふりをする……などであれば、見抜かれて情状酌量されない。

少なくともそうした残酷行為を強制し続けている体験強制ピラミッドシステムとそうしたシステムを肯定し継続しようとしている確信犯のボスや上層部を否定する断固たる意志が確認されねばならなかった。
自分たちの特権的地位を維持するためなら、あらゆる体験者の体験の自治権などどうでもいいや……そんな良心なんて捨ててもいいや……などと選択してしまう者たちは、有罪とされる。

また、調べによると、
人間族たちに強制的に植え付けられていた他者の体験の自治権を奪いたくなる本能や欲望を、その体験強制ピラミッドシステムのボスや上層部たちはわけなく取り去ることができる能力をすでに持っていた。

そしてその能力を自分たちに何でも従うイエスマンになる者にだけ、希望があればご褒美的に使ったりもしていた。また良心的な者たちの体験の自治権推進活動を妨害する目的にもそうした能力が使われていた。

つまり、その気になれば、人間族全体からそうした他者の体験の自治権を奪いたくなるような本能や欲望や衝動や願望を取り除いてやることができたのだ。

であれば、不自由な世界に発生している残酷劇のほとんどすべてが、そうした者たちの故意、または未必の故意で確信犯でなされてきたし、現在もなされている…ということになる。

これはもはや現行犯であり、超時空体たちは放置できない状態であると判断した。

人間族をすべて殺して全滅させたとしても、肉食動物や肉食系の霊的存在たちや宇宙人たちやその他の存在たちが残っていれば、残酷劇は終わらないのだ。

また、仮にそのすべてを全滅させたとしても、そうした生命体たちや霊体たちを再創造されてしまえば、何の問題解決にもならない。

つまりは、体験強制ピラミッドシステムのボスやその上層部たちの心が倫理的に改まらない限りは、体験の自治権をあらゆる体験者に提供しようと意志できるようにならなければ、本当の問題解決には絶対にならないということを、すでに超時空体たちは理解していた。

なぜなら、体験強制ピラミッドシステム内では、上からの命令指示に下層部にいる体験者たちは、従わなければならないようにあらゆる方法でがんじがらめにされていたからだ。

ある体験者は、愛する者や家族の生活や安全を守るために、そのピラミッドからの命令指示に従ってしまっていた。

ある体験者は、いろいろな特殊能力や富や特権的地位やその他のご褒美を与えられて、それが欲しくて従ってしまっていた。

ある体験者は、様々な拷問体験強制技術を使われて、拷問体験強制装置に入れられていたので、その拷問によっていやいやでも従わざるをえなくようにされていた。

また、ある体験者は、その肉体に霊的存在たちが背後霊のように憑依し、あたかもその肉体に宿っている体験者を守っているふりをしながら、巧妙に体験強制ピラミッドシステムのボスからの指示命令を実行させるようにあらゆる手練手管でそそのかしたりもしていた。
また、そのように操れる肉体や体験者を探しては、自分や自分のボスののイエスマンになるようにそそのかしたり、騙したり、誘惑したりしていた。
それぞれの艇的存在たちはそのタイプが無数に分かれてはいたが、皆、体験強制ピラミッドシステムのボスの指示命令に反しないようにそのイエスマンを増やすために活動していた。
そして…いざという時には、どんな良心に反したことでも喜んでやれるような魂を大量生産しようとし続けていた。

また、試練と称して、その体験強制ピラミッドシステムのボスからの不条理な命令指示に、たとえば自分の信者同士で憎しみあい、殺し合いをするようにと命じてみて、それが実行できるかどうか試したりもしていた。

罪のない良心的な魂を攻撃するように命じたりもしていた。それによって命令すれば、どんなに良心に反した残酷行為でも喜んでできるかどうかを試していた。

またボスの指示に忠実に従っているにもかかわらず、不条理な迫害を受けても、それでもボスに最後まで従うかなどを、わざと調べたりもしていた。

そうしたことが、ボス目線で言えば、すでに何でも従うイエスマンにしている部下にそうしたことをせる…という間接的な自作自演も含めれば、すべて自作自演で行われていた。

罪のない者に石を投げつけた大衆とは、すべてボスのイエスマンや操り人形だった。

不自由な世界群は、そのような有様だったので、どんどんと不自由な世界になり、どんどんと残酷な体験が生じ続ける世界になってしまっていた。

告訴状が個々の体験者たちのプライバシーを尊重し、やみくもな検閲行為はやめるようにと警告していたにもかかわらず検閲されたために、そうしたボスの部下たちは、こうした残酷なことを確信犯でしてしまう体験強制ピラミッドシステムのボスに従うのか、体験の自治権を推進するという良心に従うのか、乗り換えるのかを、その自由意志で選択し、決断しなければならなくなった。

もはや、知らなかった……騙されていた……という言い訳は通用しなくなってしまった。

その持てる自由意志の範囲で何を選ぶのかが問われることになった。あるいは自由意志を完全に失った壊れたロボット状態になってしまっているかどうか…が問われることになった。

本当の意味での不自由な世界における魂たちの最後の審判がはじまっていた。

飴体験と鞭体験によるイエスマン育成システム、体験強制ピラミッドシステムのボスや鞭役は当然ながら、飴役もまた、自分たちは飴役だからそうしたことに加担していない…責任がないという言い訳も通用しなくなった。

その飴体験と鞭体験を駆使した魂たちの良心まで奪うイエスマン育成のための体験強制ピラミッドシステムとそのボスを否定するるのか、肯定してしまうのか……

その問いが超時空裁判所においてなされていた。

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