体験強制ピラミッドシステムとは?

このままでは、体験強制ピラミッドシステムが超時空体に消されてしまう……

ムゲンの統合体は、超時空聖体たちに相談しなければならないと思った。

でないと、全部ではないにしろ無数のムゲンの分身体が一緒に消されてしまう可能性があったからだ。

そもそも体験強制ピラミッドシステムとは何なのか?

それは超時空体験図書館には、

「他の体験者を完全に自分の意志に従わそうとする意志が生み出した支配システム」

であるとされていた。

その支配意志とは、まだ時空間すら生じていなかった時代の混沌の世界の意志たちが、互いの意志を否定しあう苦悩から二手に分かれた物語のうちの一派のことだ。

ムゲンはその意志を体験強制ピラミッドシステムのボスと呼んでいた。

そしてそのボスの支配システムは、一番上にいるボスの下にそのイエスマンの部下がいて、その部下の下にもさらに部下がいて、そうして何段階にもボスと部下という関係性がピラミッド形態で下に広がっているシステムだった。

下から見れば、ボスの上にボスがいて、さらにそのボスの上にまたボスがいて、さらにそれが何段階も上に続いているという風であった。

上から見れば、自分の下に部下がいて、その部下の下にまた部下がいて、さらにそれが何段階も下に向けて広がっているような風であった。

部下は、ほとんどの場合、ボスのイエスマン状態になっていて、上層部の部下のイエスマン度が下層部の部下のイエスマン度よりも高くなっているのが常であった。

その理由は、そのピラミッドのボスが自分に無条件で何でも従う部下をそのピラミッドの上層部に置いたためだった。

ピラミッドシステムは、そのようにボス以外の体験者が、

「自分の意志だけで自分自身のあらゆる体験を自由に選べる権利」

を得れないシステムになっていた。

そしてそのボスもまた、そのように自分以外の体験者の存在がなければ満足できないという不自由な状態に陥っていた。

つまりピラミッドのボスたちもまた部下たちの存在に依存してしまい、自分の意志だけで自分自身のあらゆる体験を自由に選べない状態になっていた。

よってこうしたピラミッドシステムが存在している世界のほぼすべてが不自由な世界だと超時空体たちは理解していた。

しかし、そうしたピラミッドシステムに組み込まれてしまっている部下である体験者たちのほとんどが、むしろそのピラミッドシステムがなくなったらピラミッドシステムの中での自分の地位を失ってしまってとんでもないことになると思っていた。

とある不自由な世界では、そうしたピラミッドシステムを維持するために物質世界と呼ばれる世界が創造された。

超時空世界には不自由な形での時空間というものが存在していなかったが、その不自由な世界の物質世界と呼ばれる世界には体験者たちが自分の意志でコントロールできない時空間やその他の体験者の完全な自由を制限する各種の物理法則なるものが存在していた。

さらにその物質世界を管理している霊的世界と呼ばれる世界においても、ピラミッドシステムが存在していて、ボスの命令は絶対だとされていた。

問題は、二種類あった。

一つ目の問題は、その不自由な世界では、ボスも含めて誰も自分の意志だけで自分自身のあらゆる体験を自由に選び楽しみ続けれるようになっていないし、今後もそのピラミッドシステムを継続する限り、そうした完全な自由は永遠に手に入らないという問題。

二つ目の問題は、

そのピラミッドシステムのボスの精神性が利己的で残酷で劣悪な場合には、その不自由な世界が残酷体験を強制するための強制収容所状態になってしまうという問題だった。

ピラミッドのボスが、「あらゆる体験者が自分の意志だけで自分自身のあらゆる体験を自由に選び楽しみ続けれる世界」を実現しようと真摯に本気で思っていて、実際にそのような状態に向けて進化していている場合は、無理に介入することもないとされていたが、そもそもピラミッドシステムを生み出した理由が、ほとんどの場合利己的な動機であったために、そうした良いボスがピラミッドのトップにいるケースは非常に少なかった。

たまに超時空体たちからのアドバイスや注意や警告……などを受けていずれかの段階で反省してピラミッドのトップが良いボスに自発的になるようなケースが存在してはいたが、多くの場合は、そうしたアドバイス等を無視して自滅していった。

あるいは、ボスの直属の部下たちがあまりにもボスが酷いために謀反を起こしてボスの座を奪い、悪いボスから良いボスになるようなケースもまれには存在した。

しかし、残酷でずる賢いボスたちのピラミッドシステムでは、そうした謀反がうまくゆく可能性がほぼなくなっているようなピラミッドも多数存在していた。

例えば、国家全体、惑星全体、宇宙全体、霊的世界全体……を完全に脱出不可能な体験強制収容所状態にしてしまうような状態となれば、もはや内部からその強制収容所をそうでないものに変えることはほとんど不可能になってしまう。

超時空体たちは、そうした状態になってしまっている不自由な世界や、そうした状態に放置していたらなってしまうと判断した不自由な世界=体験強制ピラミッドシステムは、倫理的な理由から存続不可として必要手続きをしてからまるごと消滅させてきていた。

体験強制ピラミッドシステムには、いろいろなタイプや種類があったが、今回ムゲンが心配している体験強制ピラミッドシステムは、かなり危険な状態になっていた。

その体験強制ピラミッドシステムでは、肉体と呼ばれている体験強制装置に体験者が心からの納得合意もなく無理やり投げ込まれていて、その肉体の多くが拷問体験強制装置になっていた。

しかもその肉体には、各種の残酷な本能と呼ばれるプログラムが組み込まれていた。

利己的な生存本能と呼ばれる本能と肉食本能と呼ばれる本能が同時にそうした肉体にプログラムされていたのだ。

その結果、そこには自動的に残酷拷問体験が発生し続けるという状況が出現してしまっていた。

そうした残酷体験の強制が、自動的に延々と繰り返され続けてしまっていた。

何とかそうした残酷体験を減らそうとして良心的な体験者たちが肉食を止めようと呼びかけても、ほとんどの体験者や動物たちは無視してしまっていた。
そもそも肉食動物と呼ばれる種族たちには、そうした肉食行為をしないことを選択できるだけの自由がほとんど与えられていなかった。
肉食をしないとなれば、耐え難い飢餓感などの拷問体験が発生するようになっていたからだ。

また人間族と呼ばれる種族たちの多くもまた、肉食を止めることができなくされていた。
超時空城の調べによれば、すでに人間族の多くがその自由意志を奪われて操り人形状態にされてしまっていたからだ。

人間族の肉体に投げ込まれた体験者たちの多くが、ボスのお気に入りになりそうもないと判断されると、ボスの部下である霊的存在たちによって憑依されて、その魂を殺されたり乗っ取られてしまっていた。

肉体的には変わりなくても、肉体に宿っている体験者たちは、その自由意志や自己コントロール権を霊的存在たちに奪われ、事実上、肉体をそっくり乗っ取られて精神的な次元で殺されてしまったりしていた。

あるいは、殺されないまでも合意などしていないのに霊的存在たちに無理やり憑依されて、実質、その自由意志や体験の自治権をはく奪されてしまっていた。

つまり、物質的な肉体レベルでだけでなく、精神的な霊的レベルでも弱肉強食の残酷劇が発生し続けていたのだ。

その不自由な世界では、ほとんどの霊的存在=ピラミッドボスのイエスマンたち、はそうやって肉体に宿っていた体験者の体験の自治権を確信犯で奪い続けていた。

そしてボスがしているように、自分のイエスマンを増やそうとし、あるいは完全にその肉体に宿っていた体験者を殺してその肉体を自分たちの細胞の一部のようにしてしまっていた。

そして互いにそうした自分のイエスマンにできた体験者の数や体験者を殺して取り込んだ肉体の数や操り人形にできた肉体の数…を競い合い、ついには互いに殺し合っての勢力争いなどまでしてしまっていた。

そうした霊的存在たちは、狡いことに、そうして手に入れた肉体が居心地悪くなったり、機能不全になったりするとそそくさとその肉体から離脱して、別の肉体に憑依するようなことをしていた。
つまり最後まで面倒を見ないで平気で使い捨てにして見捨てたりしていた。
その結果、痴呆症やその他の各種の精神病……などと呼ばれる病気が多数発生したりしていた。

憑依されてしまっていた体験者は、今まで肉体や精神のコントロールをするためのハンドルを憑依していた霊的存在たちに無理やり奪われ続けていたために、いきなり離脱されると、ただでさえ肉体に機能不全などがある上に、まともに自分の肉体や精神をコントロールできなくなり、生活困難になったり拷問苦を味わわされることになったりしていた。
そのような残酷で無責任なことが当たり前のようになされてしまっていた。

またそうした霊的存在たちの中には、排他的で利己的な性格の者もいて、個として成長しようとしている体験者を迫害して村八分などをしたり、学校で集団いじめなどをしてみたり、会社でのいじめをしてみたり、ボスと同じように、やはりピラミッドシステムの組織を作り出して、自分の意志に従わない体験者を残酷に攻撃したりしていた。
そのような組織の中では、場の空気という精神的圧力でいじめる場合も多くみられた。
一部例外的な親切な霊的存在もいないではなかったが、かなり少数派であり、やさしくする裏には、いろいろなちょっと問題のある条件があったりした。
最初は無条件の愛かと思えても、最後には、自分のボスのイエスマンか、自分のイエスマンか、実質イエスマンに近い状態を求めている場合が多かった。

また、家畜文化なる食生活がその不自由な世界には広く普及してしまっていて、人間族と呼ばれる種族のほとんどが直接的にしろ間接的にしろ人間族以外の動物、とくに家畜動物と呼ばれる動物たちを無理やり繁殖させては殺して食べるということをし続けてしまっていた。

人間族たちは、肉食派は肉食反対派を批判し、肉食反対派は肉食派を批判し、互いに憎しみあわされていた。
しかし、そうした現象の背後には、そうした人間たちを自分たちの操り人形にしようとする霊的存在たちが深く関与していた。
なぜなら、人間の大多数は、そうした霊的存在たちに憑依されてその意志に従ってしまう状態になっているか、すでに操り人形状態か、完全に霊的存在の細胞の一部になっていたからだ。

つまり、多くの場合、霊的存在たち同士の精神性の問題が、肉体次元に表出してそうした問題を生み出していたのだ。
そのためにいくら人間の理性に訴えても、無視されるという状態が多数は発生していた。
人間の多くは、自分の理性に従うのではなく、そうした憑依している霊的存在たちに従う状態になっているか、そうした霊的存在たちにほとんど取り込まれて一体化していたからだ。

逆に言えば、ピラミッドボスを含め霊的存在たちがすべて弱肉強食行為や、体験者を家畜扱いすることや、奴隷扱いすることや、操り人形扱いすることや、ペット扱いすることなどを止めれば、そうした問題がほぼ解決するということでもあった。

しかし、それをピラミッドボスがそうしたことをそれでよしとしてしまっていたことと、自分のイエスマンや操り人形や細胞を増やさないと肩身の狭い思いをする仕組みにされてしまっていたために、霊的存在たちはなかなか人間族たちをそのように扱うことを止めることができなくなっていた。

それは、その体験強制ピラミッドシステムの残酷な仕組みから発生した悲しくも残酷な状況であった。

そうした不自由な世界では、残酷なことをしないと居心地のよい状態を手に入れれないのだ。
肉食動物たちは残酷なことをしないと居心地が悪くなり、霊的存在たちも残酷なことをしないと居心地が悪くなる……そうした仕組みが存在してしまっていた。
霊的存在たちが従っているボスレベルでそうした仕組みを改める決意をすれば、かなり問題は解消されることがわかってはいたが、ボスは何度アドバイスや注意や警告を受けても本気で改めなかったのだ。

その結果、人間族たちは、せっせと畜産業を営み、政府はそれに多額の補助金などを出し、霊的存在たちは自分がしている魂殺しを正当化できると思って人間族たちに動物たちを殺して食べさせることを推奨し続けたりしていた。
しかし、そんな自作自演のようなことをしても正当性など生まれないと超時空体は判断していた。
彼ら霊的存在たちの多くはわざと肉食願望や肉食欲望を人間たちに故意にあたえて、そうした料理店まで営ませていたのだから。

また、そうした不自由な世界の霊的存在たちの落ち度を知った宇宙人族などは、人間たちに肉食行為を止めさせれば人間族を支配できると思い、人間族から肉食欲望を消すことができるにもかかわらず、人間に憑依してその魂を殺して肉食を止めさせることで、やはり操り人形にしたり、自分の細胞の一部にしたり、イエスマンにしたりするようなケースもあった。

それによって確かに動物たちはそれなりには救われるものの、人間族の体験者の魂は殺されたり、体験の自治権が奪われることになったりするので、それも完全に問題ない行為とは言えなかった。

肉体にもともと宿っていた体験者たちを良心的な配慮や治療を試みずにすべて追い出したり、その自己決定権を完全に奪ってしまったり、殺してしまってもいいというのなら、超時空体たちが不自由な世界の霊的存在たちのすべてを精神レベル、霊的レベルで殺して憑依してしまえば、それで問題が解決するということになってしまう。

であれば、そうしたピラミッドシステムのボスも霊的存在たちも人間族も動物族たちも……そのように扱われてもよいとするのかという問題があった。

自業自得検証システムで検証すれば、他の体験者の自治権を奪ったりすると、確信犯で与えた体験が自分にも与えられることになり、自傷行為、自滅行為となってしまうのだ。
良い目的だからという理由で、体験者に憑依してその体験の自治権を奪ってしまうと、さらにもっと精神的に良い超時空体レベルの存在などに同じ理由でその体験者は自らの体験の自治権を奪われてしまうことになる。
つまり、そうしたことを確信犯ですると、最終的に一番良い意志をもった者の操り人形にされたり、細胞の一部のようにされてしまうことを認めてしまうことになるのだ。
よって超時空体たちは、そうしたことをしないし、そうしたことをする場合は、相手の完全納得合意の上での心からの請願があってはじめてそうしたことをする。
相手に何の説明もせずにいきなり憑依してその体験の自治権を奪うようなことはしないのだ。
霊的存在たちの多くに、それが人間族出身であれ、宇宙人族出身であれ、そうしたモラルがちゃんと守れていない場合が実に多く観察されていた。
多少でも悪いことをしてしまえば、魂として消されてしまったり、他者の完全な操り人形にされてしまうというのはあまりにも危険というか、総合的に見て自殺行為であった。
自由意志を維持しながら、その後、一切どんな間違いも犯さないでいられ続けれる確率は、ほぼ0だったからだ。
ただし、まさに誰かが酷い体験を強制されてしまうことがわかりきっているような緊急的な場合で、明らかにその加害者に憑依してその体験の自治権を一時的に奪うことによってその加害行為を止めさせることができると判断し、他のより良い方法がないためにやむなくそうしたことをした……という場合にはそうした憑依行為の自業自得の責任の発生は回避できた。
しかし、その真意において明らかに利己的な目的でそうした憑依行為をした場合には、自業自得の責任が発生するようになっていた。
総合的に見て、霊的存在たちの「ほとんど」が何かしら自分自身の本当の願いに照らしてマイナスとなるような自業自得の責任をすでに背負ってしまっていた。
しかし、そうした自業自得の道理をまだ理解できていないケースも多数見られたので、そうしたルールも教えてあげる必要があるとムゲンは思った。

ムゲンはあらゆる視点からそんな感じで体験強制ピラミッドシステム、特に拷問体験を強制しているピラミッドシステムの状況を分析しながら、なんとか超時空体たちにそうしたピラミッド世界を丸ごと消す以外の方法で、あらゆる体験者が心から満足できる状態を生み出せないのかといろいろ掛け合おうと考えていた。

しかし、状況はかなり厳しいと感じた。

体験強制ピラミッドシステムのボスやピラミッドの上層部の部下たちが、本気で前向きにこうした残酷体験の強制行為を改めてゆこうとしていれば、どうとでも打つ手があると思えたが、そうした体験強制ピラミッドシステムのボスや部下やその他の体験者のほとんどが改める気がないという状態では、何を提案しても、まず否定されてしまうと感じた。

であれば、なんとかボスやその部下やその他の体験者たちを説得する必要があると思った。
せめて、「体験の自治権をあらゆる体験者に提供してゆこうとする本気の意志」くらいは持ってもらわねばどうしようもないと思った。

しかし、すでにそうした説得を続けているが本気であらゆる体験者の体験の自治権を、つまりはあらゆる体験者が自分の意志だけで自分自身のあらゆる体験を自由に選び楽しみ続けれるような世界を実現しようと意志できる体験者がほとんど見つからない状態だった。

神も悪魔もその他の霊的存在たちも宇宙人も天使も人間も動物も……あらゆる体験者が自分の意志だけで自分自身のあらゆる体験を自由に選び楽しみ続けれる状態を実現しようとする断固たる意志を持てていなかった。

むしろ、そうしたことを強く言うと逆切れして攻撃してきたり脅してきたり…などの不自由な世界あるあるの末期症状が確認されてしまっていた。

ただ「あらゆる体験者が自分の意志だけで自分自身のあらゆる体験を自由に選び楽しみ続けれる世界を実現すること」という目標だけをひたすら目指せばみんな助かるのだと伝えても、ピラミッドの上層部のほとんどは、「うん、確かにそうだね、今からすぐに改めるよ」とは言ってくれなかった。

そして、体験者たちの合意も得ずに、自分勝手な残酷な計画をひたすら実行しようとしていた。

「ピーーーーッ!!! 」と超時空体の審判員の超時空ホイッスルが聞こえた。

やばい!とムゲンの統合体は思った。

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