藍色に染まる

電話が鳴った。え、と声が漏れた。
用件に心当たりがあって動揺は治まったけれど、一度早くなった心臓はそのままだった。

前好きだった人とは同じバンドだ。
彼も一緒のバンドだが、二人とも大人で寛大なので問題無く続けられている。(多分)
彼と付き合い始めてから、必要の無い連絡は取らないようにしていた。
わたしも連絡を取りたいとは思わなくなっていたし。
次の練習曲のことで最近連絡を取り合っており、文面では伝わりづらいことを電話しながらギター片手に教えてくれた。
用件も終わり早く切ればいいものの、話を振ってしまうわたしがいた。
教えてくれたアーティストの新譜の話、良かったエフェクターの話、対バンすることになった話。
楽しかった。二人で呑んだ時のことを思い出した。
あぁ、わたしこの人の話し方好きだったなあ。
一気に過去に引き戻されそうになり、断ち切るように電話を切った。
彼のことは大好きだし、思い出さなくなってたのにこんなに覚えてるんだと浸ってしまっている。

今夜だけ、許してほしい。
今夜はどうにも、過去の良かった時のことが頭から離れなさそうだから。