食べなきゃ…
「第13回住吉町商店街大食い選手権!!今年も、盛り上がっております!!」
毎年、商店街にある飲食店の協力で、大食い選手権がお盆の時期に行われ、多くの参加者で大盛況だ。
参加資格はアマチュアで、過去にTVなどに出場したことがない人や、フードファイターとして生活していないなどの条件はあるものの、以外にオープンな誰でも参加できる大会になっている。
今年は僕も参加をして現在、準決勝まで来ている。
とはいえ、1日で決定するわけではなく1ヶ月かけて予選、1回戦、2回戦、準決勝、決勝の5日間にわかれて開催される商店街上げての大イベントだ。
予選参加者は、毎年自己申告(写真つき)ではあるが、写真先行で行われ2回戦から実質商店街で開催される。
予選は、どこでもいいが、商店街で挑戦して写真をとると、次回つかえる大食い挑戦時の割引券がもらえる。
大会で優勝ってより、こっちかというとこの商品券目当てで参加しているとってもいいぐらいかも。
とはいえ、今年はなぜか予選をクリアして準決勝まで勝ち進んでしまっている。なぜか…どんどん食べられる。
『やっばい!今年は優勝できちゃうかも』
準決勝は、大盛りラーメンで有名な月勝亭の大盛りちゃんぽん
相手は、かなりの巨漢だ。隣に立つだけで圧倒される。
「それでは、始め!!」
ズルズル…僕も相手もすごい勢いで食べ始める。汁は飲まなくていいが、具と麺は全て食べなければいけない。
5杯目に入ったあたりから、相手のペースが落ち始めた。
俺はいつもならかなり苦しくなるが、今日はまるで胃がブラックホールのようにどんどん入っていく。全然、余裕だ。
8杯目に入ったところで相手がギブアップして決勝に駒を進めた。
次の日、決勝。
決勝のメニューはカツカレーだった。
「それでは、住吉町大食い選手権決勝戦!!それでは、制限時間は3時間!!それではスタート!!」
周りも応援で溢れてる中、決勝戦がスタートした。
決勝の相手は、俺よりも細くて見た目20代前半ぐらいの女の子だった。
一気に食べるそのスピードは半端ないが、3時間ある訳だから時間配分をうまく利用すれば必ず勝てるから、そんなに急いで食べるのは無謀だろうと思いながら、それでも周りの煽りと、彼女のスピードに乗せられて結局、僕も結構なスピードで食べることになった。
とはいえ、不思議と今日も胃がブラックホールのような感じがしてスルスルとカレーが口の中に放り込まれていく。
「カレーは飲み物です」なんて言葉があるが、本当に今日はそう思える。
10杯目に差し掛かる頃、相手のスピードが落ち始める。ただ、時間はまだ30分を過ぎたぐらいだ。まだ2時間30分ある。
このままいけば勝てそうな気がする。
ペースを上げる。11杯、12杯…
相手のスピードが落ちているところで、僕はどんどんペースが上がっていく。
本当にカレーが飲み物のようにルーも具もそしてカツも胃の中に吸い込まれていく。
20杯目を目前にした頃、相手が「もうダメ。ギブアップ」とリタイアしたため、僕の初めての優勝が決定した。
「おめでとうございます!!優勝は、小林大輔さん!!記録は19.5杯です。」
「うぉぉぉ!!やったぁぁぁ!!」僕は嬉しくて思わず叫び声を上げてしまった。
「それでは、優勝のトロフィーと記念写真、そして商店街の飲食店大盛りチケット、そして特別賞で、決勝で食べたカレー屋サラムの1年間普通盛りカレー1杯無料券をプレゼントします!!」
「最後に、優勝した喜びの声を聞かせてください。」
「最後なんてやめてくださいよ。これからも連覇しますから。
嬉しいです。応援ありがとうございます。最高の気分です。」
笑顔で手を振って答えたが…
周りは、ヒソヒソと「連覇だってよ」
司会の人が
「ちょっと勘違いしちゃいましたね。連覇なんてできませんよ。あなた、これで最後一花咲かして終わっちゃいますから。」
その後、優勝セレモニーの写真を撮り始めた頃、体にイベンが起き始めた。
お腹が…
そう、写真を撮り始めた頃からだんだんお腹が膨れ始めてお腹の張りが半端なくなってきた。
「く、苦しい…」
何かがおかしい。さっきまで全く苦しいとも、痛いとも思わなかった。
決勝が終わって気が緩んだからというのは全く結びつかないがさっきまでは、本当にブラックホールでもあるんじゃないか?と思えるぐらい満腹感すらなかったんだが、どうしてしまったのだろう?
「くるしくて…救急車」
苦し過ぎて声もあまりでない。苦しい。
周りに助けを求めようと目を開けると、心配してくれていると思ったら…
「何この人、おもしろーい」そんな言葉が聞こえて、笑われている。
『えぇ…なんでこの人たち笑ってんるだ?』
「あれれ?今年の人は、なんか横にダラーんと広がってきちゃったよ。」
「なんか面白くないねぇ。」
「やっぱり、筋肉質の人の方がカッコ良く縦に広がっていくよね。」
『何を言っているんだこの人たち』
「あ、でもパンパンになってきたよ。そろそろじゃない?」
く、苦しいもうお腹だけでなく、身体中が張っているのがわかる。
「さぁ、皆さん。そろそろ優勝者が破裂します。汚れないように離れるか何かカバーなどを被ってくださいね。」
『破裂?なんだそれ…』
「それでは、カウントダウンします。皆さんご一緒に!!」
「3 ・ 2 ・ 1 」
僕の体は、どんどん大きくなり最後はカウントダウンに合わせて、一気に破裂した。
「わぁ、これはこれで綺麗に広がったね」
薄れていく意識の中で、みんなが大絶賛している声が聞こえてきた。
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