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2019年1月の記事一覧
モノローグでモノクロームな世界 第一部 第三章 五
五、
中を開くとそこには初めて会った時にマドカが書き綴っていたノートが一冊と、使い古され所々傷がついている黒い革の手帳が入っていた。
その他に彼女の身元を示す物は何も無い。黒い革の手帳は、誰かの愛用の品だったのだろう。所々傷はついているものの、手に馴染むしっとりとしたその肌触りといい、良く手入れされていることが持つだけで感じ取れた。表紙を捲ると中には、どの頁にもびっしりと文字が書き綴られていた。
モノローグでモノクロームな世界 第一部 第三章 四
四、
マドカの白いスーツケースを前に、僕はそれを開けるべきか否かでかれこれ一時間近く悩んでいた。
勝手に人の秘密を暴くようで気が引ける。それに、あのカミシロマトビの思い通りに行動させられているようで、正直な所、癪に障る。だが、それ以上に僕はマドカの事が知りたかった。それに、僕には彼女の死を、彼女の事を知る人に伝える義務がある。それが、彼女の死を止められなかった自分の罪を軽くしたいだけだったとして