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幸せに、って?②

彼は幸せそうには見えなかった。

傍から見たら、順風満帆な、幸せいっぱいのはずの時期であっても。

私の目に映る彼は、孤独の塊みたいだった。

だから私は、口実を作っては彼のもとへ通った。

私だったら、もう少し、彼を幸せにできるんじゃないかと思っていた。


彼は彼で私のことを、幸せそうに見えない、と言った。

DVとか受けてますか?って聞いてきたことも、ある。

えぇ?何言ってるんですか?そんなことないですよ、って私は答えたけれど、夫の帰り時刻が近付くと緊張感を覚える私を見抜かれているかのようだった。


今思えば、夫と子供に囲まれていても孤独の塊だったのは私でもあって。

自由奔放なふうを装っていても様々なしがらみに囚われて自分自身をがんじがらめにしていたのは彼でもあった。


結局、彼を幸せにしたい、と思った私がまずやらなければならないことは、自分を幸せにすることなのかもしれなかった。

妻だとか嫁だとか母親だとか、そういう役割でいつしかがんじがらめになっていた自分自身を、自分自身の本当の心をやさしく見つめて、これまで頑張ってきたね、って抱きしめてあげることこそが、一番最初に私がやるべきことだったのかもしれない。


20年の結婚生活のあれやこれやを思い出して私はただ泣いている。

自分で言うのもあれだけど、とっても健気に、相談とかできる母親もないまま、私は頑張ってきて、今までは、夫だって大変だったし、とか、子供にもつらい思いさせちゃったし、とかそんなことばっかり考えてたけど、違うよ、私、一番一番頑張ってて、でも誰にも分かってもらえなくて、夫とも母親とも心通わせられなくて、そうだよ、孤独の塊みたいだったじゃん、って、今、自分が可哀想すぎて泣いてる。

つらかったよね、って涙が流れるままにまかせておいてる。


彼を幸せにしたいなら、私は私を癒やしきらなければならない。

彼を幸せにしたいから、私は自分を癒やそうと思える。

彼がいるからこそ、つらい記憶や気持ちに向き合う勇気が、出せる。



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