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【エッセイ】願わくは、我に七難八苦を与え給へ

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祖父危篤の報を聞いてから駆けつけ、葬儀に出るまでの数日間を綴った話です。苦難の時代を生きた祖父の生涯と、夏の空に思いを寄せて書きました。
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#山中鹿介

【追想】亡き祖父に寄せて「願わくは、我に七難八苦を与え給へ」第2回

1945年8月15日、祖父は陸軍士官学校で終戦を知ることになった。
祖父は、熊本の貧しい村に生まれながらも、周囲から期待されて中学校へと進み、陸軍士官学校に採用された。1944年9月のことである。しかし同時に、当時の戦況を考えれば、これは二度と故郷の土を踏めないことを意味した。

この時すでにヨーロッパではノルマンディー上陸作戦が成功し、連合国がナチス・ドイツを押し返しつつあった。一方の日本軍もイ

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