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匂い
香水が好き。
小さな瓶の中に在るあの透明な液体。
瓶の形も様々で、箱のパッケージすら愛おしい。
香りが好きなのはもちろんのこと。
香りの分子が含まれた液体を人が纏い、体温によって温められ揮発し、香りの分子が空中に拡散するこことで香る。
トップノート、ミドルノート、ラストノート
香料によって揮発する温度が異なることで生まれる香りの変化。
匂いは記憶に人を伴って書き留められる、それこそノートされるのである。
香りにノートという言葉を当てたのは天才的。
好きだった人の記憶は匂いから思い出される。
大人になることを教えてくれた大学生の彼女はChloéのNOMADE。
桜よりもほんのりオレンジがかったピンク色、いわゆるローズベージュが可愛らしい小さな瓶のガラスの向こうから覗いていて、美しい匂いが世界に放たれる小さな円柱は金色に輝いていた。
大人っぽくて、憧れだった。
行為の後に香水をかけてくれるのが嬉しかった。自分全てが彼女のものにされてしまったような感覚。全てが彼女色に染め上げられていく。彼女と一つになったような錯覚に陥る。
目を覚ました後に大好きな人と同じ匂いに包まれている幸福感は他では感じ得ない何かがある。
その彼女とはもう一切連絡を取っていないけど、出掛けた先の大きな街の中で、Chloéのあの香りを感じると彼女のことを思い出してしまう。
好きだから、未練があるからというわけでもなく、匂いが自然と思い出させるのだ。
少し大人に近づいて自分でも香水をつけるようになったけれど、自分のこの匂いを共有したい、この匂いから自分のことを思い出して欲しいと思える人にはまだ出会えていない。
いつか出会えたらいいな。
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