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おかあさんのカレーが食べたい

久しぶりに帰ってきたムスメ@オトナが「おかあさんのカレーが食べたいなー」と言った。わたしはパソコンに向かったまま「んー」と生返事。

なるほど、このところ彼女が我が家に来ると、食べる口が増えるのをいいことにビリヤニばかり作ってたからな。前回来たときに、そろそろビリヤニ飽きたって言ってたかも。それにしてもカレーですか。だいぶ洗脳されてきたかしら。ほかにも彼女の好きな料理はいろいろあるんだけど。シンプルなハンバーグとか、春雨と豚ひき肉の煮込みとかさ。

「あしたでいい?」「いいよー」

シゴトが詰まっていたのでバターチキンを作ることにした。これならマイルドでスパイスもおだやかだし見た目もいかにも「カレー」だし、仕込さえしておけばあとはルゥカレーより素早くできる。今やスパイスもヨーグルトも鶏もも肉もトマト缶も常備な我が家なので、手の空いたときにヨーグルトとスパイスを合わせ、鶏肉をマリネした。ある程度長い時間漬け込んだほうがおいしいからね。

翌日はバターチキンカレーを煮込みながらカチュンバルみたいなサラダを作り、たきたてのご飯@日本米で夕食の用意をした。仕事から帰ってきたムスメも今日の職場の話などしながらおいしい、おいしいとお代わりして食べた。めでたしめでたし。

もう一晩泊まって翌日の昼、帰り支度をしながらムスメが言った。
「わたしさあ、おかあさんの作ったルゥのカレーが食べたかったんだよね。きのうのもおいしかったからいいんだけどね」
「えっ?そうだったの。じゃあ、次に来たときね」

すっかり忘れていたけれど、昔はルゥのカレーもよく作っていた。料理好きのオット氏のカレーもベースはカレールゥなんだけれど、飴色たまねぎやいろんなスパイス、もはや隠れていない各種隠し味やシチューのような野菜がにぎやかに入る。にんじん、じゃがいもはもちろん、ブロッコリやアスパラやプチトマトなど色んな野菜たち。肉も塊から煮込んだ角切り豚バラ肉がドーン。隣にチーズハンバーグやベーコンドレッシングのサラダなど並び、ゴージャスなんだけれどカレーそのものを楽しむ感じではない。

もちろん文句どころか「すごいねー」と言いながら食べるんだけど、ムスメは実はこの食事が苦手で、数日続くと渋い顔になる。オット氏が数日の旅シゴトとなるといきおいシンプルなものを食べたがる。シンプルに玉ねぎとひき肉で作ったハンバーグやじゃがいもとにんじんのルゥカレーとおひたしや簡単なサラダ。ちょっと豪華めの学校給食みたいな食事はわたしとふたりだけの時しか食べられなかった。そうそう、昔は我が家では「おかあさんのカレー」といえば箱の裏に書いてあるとおり作ったようなカレーだったんだな。彼女が家を離れてだいぶ時が経ち、すっかり忘れていた。その時のバターチキンも「お店のカレーみたいだね」と言いながら満足そうに食べてはいたんだけれど、お店のカレーはおかあさんのカレーじゃないからね。

ムスメが独立していなくなってから、わたしは家にスパイスをそろえて普段からスパイスでカレーを作るようになり、そのうちビリヤニも作るようになり、すっかりルゥカレーを作らなくなった。オット氏が生きていた時は常備されていたカレールゥも今は無い。

もう12月半ば。年末、ムスメが数日帰ってくると言う。やっぱりカレーを作りますかね。ジャワカレー中辛でシンプルなルゥカレー。具は角切りの豚肉とたまねぎ、にんじん、じゃがいもだろうか。まずは箱の裏を見ながら買い物をしよう。

もう今年も最後の直線ダッシュ。クリスマスが終わったらそろそろ年越しの準備をしなくては。そうね、おせちもいいけどカレーもね。

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この文章は、カレーの学校 Advent Calendar 2022に参加するために書いた。写真はこのところ気に入っている「おたがいさまメシ」でオトナ男子チームがハウスバーモントカレーで作ったカレーライス。ゆで卵を付け合わせにするのはすごく良かったから、今度うちでもやろうと思う。

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