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転載:50℃の湯でなくちゃダメなの?

2020年4月から9月末まで半年間、so good coffee という名前で週1回平日の3時間だけ店頭に立って自家焙煎珈琲豆を販売していました。ブランドは友人が継続し、わたしは別のブランドを立てることにしたので(喧嘩別れじゃないですよ)、当時せっかくだからいろんなことをやってみようと作ったnoteから、自分の書いた記事を転載します。写真は当時載せたもので、これもわたしがアップしたものです。
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so good coffeeのナカヤマです。ARMS(アームズ)式焙煎の特徴は、丁寧な選別のあとの50℃洗いです。豆を洗うのはどんな意味があるのかは前回の記事にも書きました。今回は、水じゃダメなのか、やっぱり40℃じゃなくて50℃なのか、そんなことを書こうと思っています。

ARMS(アームズ)式の焙煎のはじめの一歩はもちろん豆を選ぶこと。ARMS式で共同で利用しているコーヒー豆は、生産過程で環境や農業者に負担をかけない、生産者を守るなど、サスティナブルな豆を選んで揃えている。誠実に作られた生豆だけれど、手元に届く工程で基準に合わなくなった豆は一粒ずつひっくり返しながら点検して取りのぞく。取りのぞいたあとの豆を50℃の湯で洗う。

本当に50℃じゃなくちゃダメなのか、実験したことがある。ざっと洗ってから、水、お風呂適温くらい(40℃前後)、50℃(アチアチアチ)に2,30秒浸ける。もう、汚れ落ちと浸透が歴然とちがう。さすが、短時間に野菜をしゃっきりさせる50℃。それでいて、60℃以降変質の起きやすい=煮える温度ではない。
余りにちがうので、納得してメソッドに従うことにした。水で洗っている、洗いやすい温度のお湯で洗っている、そういう人は一度50℃を試してみてほしい。

汚れを落とす「洗う」行程だけれど、ここで湯を使うことで問題点がはっきり見える。湯が浸透すると、青カビは真緑に、黒カビは墨のように変化し、判別しやすくなる。小さな虫穴も、緑になれば見逃しにくい。小さな見えない亀裂は水分を含んで大きく広がる。未熟な豆はかなり白くなってわかりやすい。これらを取りのぞく。カビは焙煎時に高温で死ぬから大丈夫という人がいるけれど、カビの出す毒は、カビ本体が死んでも残り、焙煎程度の温度では消えないので取りのぞきたい。だから、ARMS式では水分が浸透しやすいように湯を使う。それも手を入れると熱い50℃の湯。

よく、味が溶け出しちゃうんじゃないのという人がいる。実はコーヒー豆は現地で加工する際に何日も水に漬かっている。洗い始めからの5分くらいの間に、若干抜けることもあるかもしれないが問題にならない程度だと思う。

そしてその後、焙煎する。焙煎にもいろいろコツがあるのだけれど、せっかくARMSメソッドの講習会があるのだから、ここでは触れない。講習会では焙煎機の扱いや生豆からの焙煎とドリップのコツを教わることができる。

「洗う」の前に徹底的にダメな豆を取りのぞき、50℃のお湯で洗い、少し漬け込んでもう一度ダメな豆を除き、しっかり水分を抜くように焙煎したら仕上がりからまた未熟やコゲの豆を取りのぞく。これらの工程で、生豆から重さが2割くらいは減る。贅沢なコーヒーだと思う。時間もたっぷりかけている。

焙煎を始めたころ、たとえばドトールやカルディで売っている豆との価格の差にびっくりした。コンビニでは100円でコーヒーの飲める時代だ。ところが、今は納得するようになった。

スペシャリティコーヒーを提供する店の価格が高いのも、それなりに理由がある。小さなロットで焼くくらいしか、徹底的に手をかけることができない。1日にどのくらいの量の珈琲を売れば商売になるか考えてみてほしい。大きな焙煎機(例えばあるコーヒー問屋の店頭のサンプルロースターは20キロだった)にかけるほどの豆を1つずつ選り分けるのに、いったい何日かかるだろう。ARMS式で通常使っている焙煎機は、だいたい1キロ以内だ。おいしさと安全性を知ってしまったひとりひとりが、思い切り手間と時間をかけて焙煎している。so good coffeeもそのひとり。どんなものも、事前の準備が一番大変。コーヒーもまたそうだった。

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いっしょに始めたコーヒーブランドだけれど、わたしは「りりこの珈琲店」というブランドで、イベントや豆売りをしていくことにしました。「so good coffee」はN氏が引き続き運営しています。焙煎ポリシーや豆の選び方も、だんだんに違っていくんでしょうね。お互いに、いいブランドになって行きますように。

コーヒーの焙煎機がほしくてコツコツ貯金中。なかなか貯まらないけど、あなたのおかげで一歩近づきます。