シアターホームステイプロジェクト参加レポートーその1
はじめに
小劇場ネットワーク主催のシアターホームステイプロジェクトに参加した。面談をした際に、シアターZOOの斎藤歩さんから「ここのところは、コロナで交流も難しい時代が続いたかもしれないが、わたしたちの時代はもっとお互いに行き来していたんだ」ということを伺い、普段は知り合うことが難しい場所(東京近郊以外)に住んでいる同世代の演劇人が何を考えて演劇に向かっているのか知りたく、情報共有をしたいと思った。わたしは、『わたしとわたし、ぼくとぼく』というLGBTQ +を題材として扱った児童演劇をレパートリーの一つとして創作した、ということをきっかけに興味を持った名古屋にある、うりんこ劇場を訪れたいと志願し、実現されることとなった。
滞在日程とスケジュール
滞在は2023年7月21日(金)-31日(月)、うち名古屋滞在が28日(金)までの11日間で、ざっくりと下記のスケジュールで行われた。うりんこ劇場制作の平松隆之さんがいろんな方との場を設定してくださり、沢山の方と出会った11日間だった。詳しくは下記に日程順に書いていきたいと思う。
7/21(金) うりんこ劇場到着・大人のヒッコリーにて平松さんとごはん・お話し
7/22(土) 劇団うりんこ役者体験WS参加
7/23(日) 劇団うりんこ役者体験WS参加・劇団員向けワークショップを実施
7/24(月) 可児市文化創造センターala見学
柳ヶ瀬見学 ※柳ヶ瀬を楽しいまちにする株式会社の福富さんの案内で
喫茶Riverにて名古屋の演劇人と交流会
7/25(火) パティオ池鯉鮒にて『ベイビーシアターMARIMO』のお手伝いに参加
以下、うりんこ劇場にて
①『わたしとわたし、ぼくとぼく』企画者の鷲見裕美さんとMTG
②劇団うりんこ制作の平松さんとMTG
③「フングリコングリ」の創作で演出家としていらしていた田辺剛さんと、見学に来ていた佃典彦さん、劇団うりんこのみなさんと劇場近くの居酒屋でごはん・お話し
7/26(水) 恵那市学童「小学校は宇宙ステーション」見学・受付・バラシ手伝い
夜:名古屋のマクドナルドにて 森夏音さんとお話し会
7/27(木) 愛知県芸術劇場にて『子犬のバーニー -幸せを探して-』(製作・出演:ザ・ラスト・グレート・ハント)鑑賞
夜:山ちゃん@栄にて 優しい劇団の尾崎さんと、お話し会
7/28(金) うりんこ劇場にて『フングリコングリ』稽古場見学
夜:Q SOKOにて 世界演劇祭の報告会に参加
三重着
7/29(土) 三重県文化会館見学
アルスプラザ『あらしの夜に』児童ミュージカル鑑賞・劇場見学
7/30(日) 伊勢神宮参拝
7/31(月) 津あけぼの座見学
津あけぼの座油田さんとごはん・お話し
ベルヴィル第七劇場見学・鳴海さんとお話し
真嶋くんとごはん
帰京
持ち物・することとして準備していたこと
わたしは2023年11月に完結予定であった『ことばにない』(前後編合わせて上演時間約8時間のレズビアンアイデンティティを巡る4人の女性の物語)の後編(上演時間4時間半)の台本の執筆真っ再中で、空いた時間に執筆を進めようと準備していた。旅の時は大体、新書と小説を一冊ずつ持っていって、それを読み終わって帰ることが常で、今回はプルースト『楽しみと日々』と駒尺喜実『魔女の論理』を持って、旅に出た。結果的に読み終わりはしなかったが、『楽しみと日々』は短編なので、無作為にペラペラとめくって読んでいた。
7/21(金) うりんこ劇場到着
うりんこ劇場に到着し、みなさんにご挨拶をする。素敵な建物に驚く。
その後、大人のヒッコリーでハンバーグを食べながら、劇団うりんこ制作の平松さんとミーティング。『わたしとわたし、ぼくとぼく』をきっかけに、劇団うりんこに興味を持ったのだという話を改めて話す。劇団の成り立ちなどを伺う。児童演劇の話・コロナの期間はどのように運営されていましたか、と質問する。その中で、劇団員がみんなでやる公演のタイミングだ、ということから50周年記念公演を行うことになったという話が出る。稽古の見学が楽しみになった。
○7/22(土)、23(日) 劇団うりんこ役者体験WS参加
子どもたちが役者体験をするという2日間のスケジュール。朝9時から16時まで×2日間。1日目はシアターゲーム、舞台に設置する背景づくり、お昼休憩をはさんで、グループでお話しづくりとダンスの練習。2日目は、ダンスの練習、1日目のお話しづくりのつづきと練習、最後に子どもたちが作った創作作品の発表が行われた。
連日朝8時に集合し、劇場やお昼ご飯を食べるスペース、お手洗いをみんなで掃除した。大人8名で4つの班を担当する。お昼ごはんもみんなで食べる。休憩中も子どもたちのエネルギーはすさまじく、圧倒された。はじめは、子どもと接する機会も人生経験の中で、そこまで多くあった訳ではなかったので、大丈夫だろうかと不安もあったが、その不安はすぐに打ち消された。子どもたちに「れな〜、来て〜」と手を引かれながら、遊びに参加する。自分自身の創作現場では、シアターゲームなんてやらなくていい、と思うことの方が多かったが、実際にやってみると楽しいものである。
背景づくりでは色の塗られた新聞紙を大きな段ボールに自分のひとがたをつくって貼り出していく。寝そべって、他の子に型をとってもらうというアクションが含まれる。全然違うお花を創作して背景に描く子もいる。素敵だった。
お話づくりでは、「なくしものをした」ということのみが決まっており、そこから子どもたちがお話を創作していく。わたしは参加したグループで理科室の人体模型の役をやった。最初からお話が全部決まっている訳ではなく、練習を繰り返しながら、こうした方がいい、ああした方がいい、が決まっていく。キャスティングも全て子どもたちが行う。発表に含まれるダンスの練習は劇団員のにいみひでおさん主導で練習が進んだ。
発表では質問や感想を言う時間も取られ、お互いの劇についてのフィードバックの時間も取られる。なんら、大人と変わらない。とても自由でクリエイティブな創作の時間だった。
疲れ果てた後、劇団員の方がワークショップに参加してくださった。
劇団うりんこでは、小・中学校を回って公演を行うほか、研究会という時間が取られ、主に若手たちがその研究会に参加する。基本的には俳優の集団だ、と平松さんがおっしゃっていた。俳優に必要な演技や身体(ダンス含め)、発声のスキルなど、基本的なことを年長の劇団員であったり、外部から読んだ講師が教えるスタイルだという。どのようなスタイルの戯曲でも対応可能な基本的なベーススキルがあるということである。劇団うりんこは、学校を回る作品(4年くらい回すらしい)も、周年記念の作品も、外部の劇作家・演出家を呼んで、作品を作っている。座付きの作家がいないということも、俳優主導の劇団のスタイルを作っていると感じた。
ワークショップはわたしが普段行っているもので、せっかくなので、何かできないかと相談して、実施された。
7/24(月) 可児市文化創造センターala、柳ヶ瀬、交流会
家を9時前に出て、可児市文化創造センターalaへ向かう。劇場の方に案内をしていただく。alaは地域をつなぐコミュニティになることを目指す、地域の公共劇場としての側面が強い。子育ての事業や多文化交流にも力を入れており、アートを通じての連帯を強く感じさせる。昔、イギリスの劇場で観劇した話を人から聞いたことがある。ロビーで感想をお話ししたり、お昼の時間には子どもたちがアイスクルームを食べたり、遊んでいる。そんな話を思い出しながら、劇場を巡った。ala主催の公演の中でも、alaで滞在制作をする場合には、その創作現場に地域の方が訪れて、差し入れをしてくださることなどがあるそうだ。
柳ヶ瀬見学 ※柳ヶ瀬を楽しいまちにする株式会社の福富さんの案内で
alaから移動して、福富さんの案内で柳ヶ瀬を巡る。美川憲一の「柳ヶ瀬ブルース」で知っていた「柳ヶ瀬」。「青い灯影に つぐ酒は ほろり落とした エメラルド」(美川憲一「柳ヶ瀬ブルース」作詞・作曲:宇佐美英雄)から連想するような、かつて盛えた歓楽街であったことが伺える建物が立ち並んでいた。今はシャッターが閉じられた建物も見られる。
歩いていくと、新しくできた滞在施設、レトロな喫茶店、和菓子屋さん、アートスペース、古道具やさんなども見られ、それぞれの店舗に個性があり、そのバラバラ具合に居心地の良さを感じた。街の変遷を感じるとともに、柳ヶ瀬が新たに人の集まる場所として、時代とともに変化していることを感じる。福富さんは柳ヶ瀬商店街を起点に商店街が人の集まるコミュニティスペースとしての機能を持つのではないかと開拓している方だ。
喫茶Riverにて名古屋の演劇人と交流会
名古屋に戻り、喫茶Riverにて交流会。若手の方、中堅世代の方が集まり、名古屋の演劇事情を伺う。
(その2へつづく)
演劇作品をつくっています。ここでは思考を硬い言葉で書いたり、日記を書いたりしています。サポートをいただけますと、日頃の活動の励みになります。宮崎が楽しく生きられます。