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エリカちゃんのこと。。今頃どうしているのかな

あっ今話題の「エリカさん」ではありませんので、最初に断っておきますね。


エリカちゃんと初めて出会ったのは、20年前の夏の朝でした。

朝、いつものどおり起きてリビングに行くと、食卓に見知らぬ女の子が座っていました。

特別のあいさつもなく、私も「さて…どうしよ」と思いながら自分の食べる朝食の準備に。

息子が昨夜のうちに連れ込んだ彼女だということは、少ししてから察しました。

こういう時は相手の出方をみるのが私のやり方なので、いつものどおり朝食を食べ仕事に行く準備を始めると、

「何か手伝います」

「では洗い物をお願いね」と食器洗いを頼みました。

そして私が出かける間際に、して欲しくないことを何点か伝えました。

1、2階の私の部屋、夫の書斎、娘の部屋には立ち入らないこと。

2、冷蔵庫の中のものは自由に食べてよし。

3、タバコは息子の部屋で吸うこと。

4、火を使う時は十分に注意すること。

5、お風呂は自由に入ってよろしい。

などなどです。

そして、呼ぶのに不便だから、下の名前だけ教えてちょうだいと言うと「エリカ…」とだけ答えました。

彼女の家族のことなどは聞かず、その日から一週間、エリカちゃんという見知らぬ娘と暮らすことになりました。

それから数日後、仕事が休みでリビングでくつろいでいると、エリカちゃんがやってきて、自分の家族のことなど、切々と話始めました。


彼女が家庭的に恵まれていないことは察していましたが、私にできることと言えば、何も言わず彼女の話を聞いてあげることだけで彼女救ってあげることなどできるはずもない。。。

一通り話しを聞いてから、息子は昼間アルバイトで出かけてしまうので、何日も一人で一日中家にこもっている彼女に「お昼を食べに行こう」と誘いました。

車に乗せて走る途中、彼女の身体から汗とは別の、何か薬っぽいにおいがすることにすぐに気が付きました。

「シンナーはやめようね。」と言うと「ハイ…」と素直な返事が返ってきました。


一週間後、エリカちゃんは満面の笑顔で私のところにやってきました。


「おばさん、いろいろありがとう」

会った時はあいさつもできなかったエリカちゃんでしたが、家から出て行くときはきちんとあいさつしに来てくれました。


ただ、『家に帰る』とは言わなかったことが少し気がかりでしたが【負けずにがんばるのよ】と心の中で祈りました。

あれから20年。

今でも彼女のことを思い出す。

やっぱり、かける言葉は【負けずにがんばるのよ】しかないのが悲しい。

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