見出し画像

『吃音 伝えられないもどかしさ』を読んで

最近読み終えた本にかつてない衝撃を受けたので、ぜひ紹介したい。それは『吃音 伝えられないもどかしさ』というノンフィクションエッセイだ。

実はこの本、2023年10月に購入していたのだけれど、数ページほど読んだ後に読むのを辞めてしまった。
その頃の私は、吃音である事実を正面から受け止められず、読むのが辛くなってしまった。
この本には吃音である様々な人が、どのような人生を歩んできたのか、その時の心情などが事細かに描かれているから。

私は物心ついた頃から吃音に悩まされてきたが、吃音であるが故に感じる気持ちを他者と共有する機会がなかった。
非吃音者から見ると「たまに言葉が詰まる」「日常生活は問題なく送ることができている」。吃音者はそのように見えているだろうと思うし、心の内を話す機会はなかなか訪れなかった。
当事者でないと、感覚・感情・思考・言動の何もかもが伝わらない。
これは吃音に問わず、障がいを持っている人、目に見えない悩みを抱えている人などに言えることかもしれない。
外からは分かりにくい吃音を持つ私は、最近になってようやく家族や友人に吃音である事実を打ち明け始めた。
打ち明けることを含めて、自分にとって生きやすい人生を選択できるようになってきた。
でも根底にある悩みは、変わっていない気がしている。

本を読んでみて、ここまで事細かに自分の心の根底と一致することが人生で初めてだったので、とても驚いた。
本を読みながら何度涙を浮かべただろう。
感情の表現や事実をしっかりと理解したくて、細かい文章表現まで読み込んでいた。

この本はハッピーエンドになるようにまとめた本ではないと思う。
吃音者にとって、目をそむけたくなるようなシーンがあるので、正直「読まなければよかったのかな」とよぎることもあった。
でも自分が漠然と感じていた「吃音の悩みは消えることはない」ということを、心から思っている人が存在するという事実が分かっただけで、読んで良かったと思えた。
なぜか下手に「吃音は治る」と言われるよりも、心強い気がした。
それは心の根底に、自分と同じ考えを持つ著者が存在するということが理由かもしれない。

それと同時に、この本がこの世に出版されているという事実が私を救ってくれた。
世の中に、吃音者である私たちの現実を、発信してくれていることである。

ここまで吃音に向き合いこの本を書くのは、どれだけ精神が削られたのだろうと想像してしまう。
著者の近藤さん、このような素晴らしい本を書いていただきありがとうございました。

いいなと思ったら応援しよう!