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あおのむらさき (詩、朗読)

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過去と云ってしまうには、まだ真新しい言葉たち。 2014→
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2014年10月の記事一覧

月夜

月夜

海亀が月に照らされた砂浜で
涙を流しながら産んだ卵が
わたしの中で孵った
海水に揺られたちいさな
まだ3cmのあなたが魚の形をしていた

肌を盛り上げた足の形をそっとさする
ここはまだ突き破りし場所ではないのだと諭すと凱旋して見えなくなった

月は海の上にいつも出ていた
母の胎内で嗅いだ匂いは、マグマの脈うつ地球の海と同じで、
初めて行ったはずの海で、何度も来ていたことを知った

身体

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Pants-so-net

靡いた先につぶらな足が二本生えていた
今月も卵は生まれ落ちて
孵ることのない未来を悲観した
魚からの進化を身籠る夢をみて

捕えられぬ風で逆上がりをしてみたが
一回転の遊泳などは夢物語りで
物干し竿に巻かれたタダの布切れが
乾かぬことを責められるだけの午後で

その形状さえも誰からも識別されない
ボロ雑巾と化してしまわぬうちに
折り目正しく生きねばならない
坂下りの風を浴びせるように

ふたつの穴

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詩のレシピ(#pwGT組)

詩のレシピ(#pwGT組)

梁川梨里のツイ詩全て(49篇)

「詩のレシピ」pwGT組(梁川梨里の詩)2014.9.21-10.5

*日々の選詩と担当者の詩もあります

http://togetter.com/li/727335

月下の蝶

月下の蝶

毀れた刃先の、切り拓くことの出来ない、鋭い、現実と対峙した世界では蝶の化身が人の形をしている  ハラハラと舞う月光は鱗粉に似て指先が撫でる宙の見えない黒板に描き続ける言葉はこの世を斜めに切り取る

(もっと正しく切れる刃を下さい)

黒と白の世界では七色の夢など見ずにすむから躊躇うことなく月へ向かえる水の流れぬ川を超えて、踵が淡い光を吸い取りながら、絡み合う感官    軋んだ背骨を正し、折

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眠りの棺

眠りの棺

ここから先の岩を超えてはダメ

水瓶は底なしで、もう片方の世界の急流へ曳く、足が取られて溺れたものは皆、抜け殻だけをおいて逝ってしまった

森の棺の中は、足を踏み入れる夜も、蓋を開ける朝も今日は薄暗い視力でない方法で世界を感じるのだとしつつ、自力で立ち上がることも出来ず、身体を丸めて肩を震わせていた。誰かに搾取されるのを恐れながらもどうぞすべて食べ尽くして、と差し出しながら。あなたの住む運河の、広

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