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【潜入】SWEET・アンディの75歳バースデーイベント in ウェールズ

2024年6月29日、私はウェールズの北へと進む電車に乗っていました。
行先は何を隠そうSWEETのギタリストであるアンディ・スコットのバースデー・イベント。電車に揺られることすでに数時間経過。それでも依然として到着しない下車駅を目指して、車窓からの風景をただぼうっと眺めていました。
「本当に目的地へ着くのだろうか」
そんな不安を抱きながら、電車に座り続けました。

車窓には大自然と羊

(ライブに関するレポートをご覧になりたい方は以下目次より「ライブ開演!(ライブ・レポート)」をご選択ください。)



アンディのバースデーイベント開催が発表

時を遡って2024年2月23日。SWEETの公式SNSにて、今年75歳を迎えるアンディのバースデー・イベント「Andy's 75th Birthday Bash in Portmeirion」が開催されると発表がありました。前回の開催は5年前、アンディが70歳になった誕生日当日の2019年6月30日。今年2024年はアンディが75歳になる節目の年であることから、SWEETのファンコミュニティでは今年のイベント開催可能性を予測する声が高まっていました。さらに、前回の参加者によると、ライブを楽しむだけでなく、アンディと談笑したり、写真を撮ることができたというのです。

私は既に渡英することが決まっていたため、このイベントに行かない手は無いと判断。チケット発売開始日時の3月1日正午(イギリス時間)に手続きをし、私は無事参加権を獲得しました。今回は6月29日(土)と6月30日(日)の二日間で開催されるとのことでしたが、この時期、イギリスでの私の生活状況がどう進んでいるのかについては未定であったことから、無難に6月29日の一日だけ参加することにしました。

ウェールズへ

会場はウェールズの中でも北にあるポルトマイリオン(Portmeirion)。ウェールズ出身のアンディにゆかりのあるロケーションです。ロンドンから会場までのルートを検索すると、公共交通機関を使って片道6時間超えの超僻地。覚悟を決めて列車のチケットを取りました。

せっかくウェールズへ行くのだから観光もしたい!という欲が出て、イベント前日はウェールズの首都・カーディフのホテルに一泊し、美しい街の散策を楽しみました。

イベントに間に合わない!

翌朝9時台にカーディフ中央駅を出発。シュルーズベリー駅で乗り換えて、ポルスマドグ駅に15時ごろ到着する予定でした。しかし、カーディフを出発した電車はなかなか定刻通りに進んでくれません。少しずつ電車は遅れていき、シュルーズベリー駅に着いたときには、乗り換えたかった電車が既に出発してしまった後でした。
次の電車を調べると、なんと2時間後。途方に暮れました。早朝にカーディフのパン屋さんで買っておいて、すっかり冷めてしまったパスティをかじりながら電車を待つことにしました。

シュルーズベリー駅に取り残されてしまいました。

どうしても15時に到着したかった理由がありました。
それは16時30分から始まる、ライブ本番前の「サウンド・チェック」に参加を申し込んでいたからです。この「サウンド・チェック」の参加費はアンディが立ち上げた「がん治療のための研究開発募金」の資金となり、ブリストル&ウェストン病院慈善団体に寄付されるというものでした。アンディは15年前にがんを患ったものの、ブリストルの医療チームにより回復したことが、この活動の原点になっているのだそうです。


「サウンド・チェック」の終了時刻は17時30分。このままだと下車駅に着くのは17時過ぎ。先にホテルにチェックインをして、タクシーで会場へ急いだとしても「サウンド・チェック」は終了しているかもしれません。私はこのバースデー・イベントに関して何度か問い合わせをしていたSWEETのスタッフ・Kさんに「電車が遅延したため、サウンド・チェックには間に合わないかもしれません」と連絡を入れました。

2時間後、シュルーズベリー駅にやっと電車が到着。ここから3時間半電車に缶詰めになりながら、下車駅を目指します。電車に揺られていると、車窓にはどんどん自然が広がっていき、都会的な景色は無くなっていきます。ただでさえイベント参加への遅刻が確定している私の心を、どんどん不安にするこの”美しい景色”。この3時間半の時間がとてつもなく長く感じました。
「本当に目的地へ着くのだろうか」と何度も思いました。

大自然と羊

17時過ぎ、ついに下車駅のポルスマドグ駅に到着しました。会場へ直行する案も頭に過りましたが、重た過ぎるリュックをライブに持参することは困難に感じ、小雨降る中ホテルへ直行。チェックインを済ませました。そして、タクシー配車アプリのUberで会場までの運転を依頼するも、運転手とマッチングせず10分が経過…。
「このままではイベントに永遠に間に合わない!」
焦る気持ちを抑え、急遽ホテルのフロントの方にタクシーを呼んでほしいとお願いしました。
「今日はコンサートがあるらしいですね。混みあってるかもしれないけど、電話してみますね!」
と張り切ってくれた彼女のおかげで、なんとかタクシーが来てくれることになりました。

約5分後、タクシーが到着。当初は先約のお客さんを乗せた後に、私の乗車が許可されていると聞いていたですが、そのお客さんが来ません。運転手さんから「もういいよ乗っちゃって!」と言われ、タクシーへ飛び乗り、会場へ急ぎました。運転手さんはウェールズ訛りの調子の良いお兄さんでした。
「日本から来たの?いいね~、日本には行ってみたいんだよ」
「ロンドンはひどいところだよ。ウェールズのほうが自然や街がきれいだから断然いいね」
などと、お兄さんの発するウェールズ特有のきつい訛りを何度も聞き返しながら会話をしました。楽しいおしゃべりは私の緊張を少しずつ和らげてくれました。

そして17時45分ごろ。ついに目的地である「ポルトマイリオン」へ到着したのでした。

ここ「ポルトマイリオン」はホテルやレストランを兼ね備えたリゾート施設になっていて、地中海風の美しい建物が来場者を歓迎してくれます。入口の警備員さんより「緑の門のあるところ」がライブ会場だと教えてもらい、もらった地図を片手に施設を進んでいきます。

地中海の街並みを模した施設

緑の門が見えました。会場に到着です。

ライブ会場への入り口

会場に入ると、案の定サウンド・チェックは終わっていました。そして、ロビーには数名のお客さんがソファーで寛ぎながら談笑していました。

実はスタッフのKさんとはもう一つ別件についてやり取りをしていました。それは、イベント終了後に私をホテルまで車で送ってくれる方をこの日に紹介してもらうという、大変ありがたいお約束でした。そのため、会場に着いたことを連絡すると、Kさんが楽屋から出てきてくれました。ご挨拶をすると早速「まあ中に入って」と言われ、楽屋の中へ連れていかれるではありませんか。そして、ずんずん進んだ先にはアンディご本人が座っていました。

アンディとご対面

アンディは「ハロー」と言いながら、立ち上がって握手してくれました。
私は急にアンディを前にして、何を話すべきか挙動不審になりながらも、会話を続けました。
私「はじめまして。お誕生日おめでとうございます。」
アンディ「どうぞ、ここに座って」
私「ありがとうございます。あなたに会うために日本から来ました。両親がSWEETを教えてくれて、ファンになったんです。」
アンディ「日本のどこからきたの?」
私「千葉です。東京の隣です。」
アンディ「そうなんだ」
私「しかし、実は今、ワーキングビザでイギリスに住んでいるんです。」
アンディ「イギリスのどこに住んでるの?」
私「ロンドンです。」
アンディ「ああ、ロンドンは若い人の街だよね。」
私「あの、サインもらってもいいですか?」
(と言って、昨年リリースされたアンディがリード・ボーカルを務める新曲「Changes」の限定CDと、私が持参した白色のサインペンを手渡しました。)
アンディ「もちろん。あ、彼女に新しいのもあげて」
(と言って、他のスタッフに指示を促すアンディ。この誕生日イベントのタイミングに合わせてリリースされた新曲「Burning Like A Falling Star」の限定CDがアンディに手渡されました。アンディ自らCDの入ってるフィルムを開けようとしていたので、私がやろうと手を差し伸べると「やっぱりやって」とアンディ。新しい方のCDにもサインを書いてくれました。その他、イベント限定のTシャツやゲストの入場許可証、ポストカードをスタッフの方より受け取りました。)

今回参加者に配られたグッズ一式を私もゲット


さらにアンディは私が持ってきた白いサインペンの色が薄かったので、スタッフさんより渡された金色のサインペンで「裏面に書いてあげようか」とサインをし直してくれました。

中央に白いペンでサインしてもらうもかすれてしまいました
再度裏面にサインをいただきました。

時間は18時を回り、そろそろバンドメンバーとスタッフで夕飯を食べに行くため、一同が立ち上がり始めました。私はその前にすかさず写真撮影をお願いしました。
私「一緒に写真を撮ってもいいですか?」
アンディ「いいよ、急いで撮ろう!ちょっと待ってね、(サウンドチェックでかいた汗を拭いて髪の毛を直しながら)汗びっしょりだから。」

別の方にお写真を撮ってもらい、私はもらったTシャツを広げるポーズを取りました。すると、アンディも私を真似して首からかけているタオルを左右にずらし、Tシャツの柄を見せるポーズを取ってくれました。


写真撮影が終わり、
アンディ「えっと、名前はなんていうんだっけ?」
私「Ririと言います。」
アンディ「オッケー、Riri。今からみんなでご飯食べて来るからね。また後で会おう。」
と言われ、再度アンディから手を差し伸べられ、握手。
私「はい、また後で。お話ししてくれてありがとうございました。」

アンディは楽屋を後にしました。
すると、Kさんが近寄ってきて
「どう?ハッピーかな?今からご飯食べてくるからね。このあとあなたにホテルまで送ってくれる友人を紹介するので、後でもう一回会おう。」
と言われKさんも出ていきました。

私は今目の前で起こった出来事に圧倒されて、一人楽屋の外のロビーに残りました。サウンド・チェックには参加できなかったものの、アンディと座って一対一でお話しするなんて、まさに怪我の功名です。
もらったTシャツに着替え、”VIP”と書かれた入場許可証を首から下げ、会場の周囲を散策してみました。私も何か軽食を…と思っていましたが、レストランらしきものが見当たりません。先ほどのロビーに戻り、日本から持ってきたグミをつまみながら座って待っていると、またKさんが通りかかりました。

Kさん「大丈夫?何か食べた?」
私「夕飯は食べてないです。ここってレストランはないですよね?」
Kさん「あるよ!案内するよ。」
私が確認したところとは全く別の場所にそのレストランはありました。既にSWEETファンの皆さんが自由に食べたり飲んだりしています。

そしてKさんより、イベント終了後に私をホテルまで車で送ってくれるというCさんを紹介してもらいました。Cさんご夫妻からフライドポテトを少し分けてもらいながら、その他皆さんと談笑をしました。

ライブ開演!(ライブ・レポート)

時刻は20時30分、いよいよバースデー・イベントのハイライト、ライブ開演の時間になりました。

まずは70年代当時のSWEETがテレビショーに出演した時の動画が、会場のスクリーンに投影されました。公式YouTubeチャンネルにも投稿されていない貴重な動画に一部のファンも「キャーキャー」叫びます。

続いて、新曲「Burning Like A Falling Star」のPVの公開、デフ・レパードジョー・エリオットからのメッセージ動画、そしてアンディの友人たちからのお誕生日お祝い動画の公開がありました。たくさんの大物アーティストたちからのメッセージに沸く会場の皆さん。個人的にはスージー・クワトロ、ポール・ヤングからのメッセージには胸が熱くなるものがありました。動画の締めくくりはKISSジーン・シモンズからのメッセージ。なにせ"Without the Sweet there would not have been a KISS(SWEETなくしてKISSは存在しなかった)"という名言を残しているジーン・シモンズですから、この依頼を引き受けてくれたのでしょう。

動画が終了して、アンディ率いるバンドメンバーたちがステージに入場。
ライブの幕開けは「Action」。現在のヴォーカリスト、ポール・マンズィが歌う主旋律に、アンディ、ベースのリー・スモール、ギター及びシンセサイザーのトム・コーリーの見事なハーモニーが重なります。
続いて、エース・フレーリー「New York Groove」をカバー。こちらは2012年リリースのアルバム「New York Connection」の一曲目に収録されています。
その後も「Hell Raiser」「Burn On The Flame」「The Six Teens」など、70年代SWEETの黄金期楽曲が続きました。アンディによるハイトーンボイスのバック・コーラスも確認することができました。
昨年発表された新曲「Changes」では、リード・ヴォーカルを務めるアンディの伸びやかな歌声を聴くことができました。以前からヴォーカル曲を複数持つアンディですが、彼の歌声が今でも健在なことにただただ感動です。
「Changes」を歌い終えたアンディは一度ステージを降り、残りのメンバーでSWEET初期のバブルガム・ソング「Co-Co」「Funny Funny」「Poppa Joe」をメドレーで披露。ドラムのアダム・ブースはティンバルで南国のテイストを添えていました。
屋外の寒さとは裏腹に、会場内はどんどん蒸し暑くなっていきます。

「Windy City」の演奏も終わりそうというところで、あるお客さんが暑さで体調を崩してしまい、演奏が一時中断されました。スタッフによるお客さんの介抱中、ポールは「みんな水を飲むように、水は薬だからね」と呼びかけ、トムはステージ側から客席へコップに入った氷を回し、体を冷やすように観客に呼びかけます。
私の立ち位置から薄っすらと見えていた当日のセットリストではこの後「Set Me Free」を演奏する予定だったようですが、この一件でこの日はスキップされてしまいました。缶を使ったアンディによる名物のギターソロが聴けるはずだったので残念です。

アンディは「さっきのお客さんは大丈夫なのかな?」と呼びかけ、気を取り直して演奏再開。
ポールがお決まりの掛け声 "We want Sweet!" とコールするよう、お客さんを煽ります。そしてその掛け声に合わせて「Teenage Rampage」がスタート。70年代当時、SWEETに魅了された少年少女たちにより発せられたこの掛け声!これを生で聴けたということにひどく感銘を受けました。

その後はSWEET代表曲のオンパレード。すべての楽曲で何層ものきれいなハーモニーが重なります。
ヒットソング「Love Is Like Oxygen」を演奏し終え、メンバー紹介へ。アンディがメンバーそれぞれを敬意と笑いを交えながら紹介していきます。
そしてヴォーカルのポールからはアンディに対し、「この人がいなければSWEETじゃない。今でも素晴らしい歌声を持つ男。ミスターアンディ・スコット!」と紹介されました。(※意訳です)

さらに、アンディ率いるSWEETを長年支えてきたものの、つい最近引退を発表したドラマーのブルース・ビスランドがステージに上がり、アンディとハグ。今回は特別にブルースがドラムを演奏することになりました。

そして、最もよく知られている代表曲の一つ「Fox On The Run」の演奏へ。冒頭のあのシンセ音が鳴り響く中、アンディのカウントによってイントロが始まり、ポールはぴょんぴょんと飛び跳ねながら観客へ手拍子を促します。
会場が最高潮の盛り上がりに達したところで、演奏終了。メンバーは裏にはけてしまいました。

するとまたあの"We want Sweet!"のコールが、今度は観客側から自発的に始まりました。
5分ほどしてサイレンの音が鳴り響き、メンバーが再び登場。

アンコール一曲目はサイレンに合わせてアンディがあのリフを弾き始めます。言わずもがな、彼らのグラム・ロック期を代表するアイコニックな一曲「Block Buster!」がスタート。引き続きブルースの迫力あるドラムで会場の熱気が増していきます。

アンコール2曲目「The Ballroom Blitz」では、ポールが"It's, it's a ballroom blitz!"のコールを観客へ煽ります。そしてドラムのイントロが鳴り響く中、ポールが次のように呼びかけます。
"Are you ready Lee?Andy?Portmeirion(ポルトマイリオン)?"

ここで会場の声が小さいと言わんばかりに、ポールは再度"Portmeirion?"と繰り返し、観衆からの反応を促します。そして"All right fellows, Let's go!!"と絶叫!
既に演奏してきた「Block Buster!」「Teenage Rampage」もそうですが、亡きオリジナルメンバーであるスティーブ・プリーストが担当していた曲中の「語り」パートは現在アンディが担当。アンディも汗だくになりながら、コーラスと演奏、そして語りを最後までこなしていきます。

演奏が終了し、メンバー全員でお辞儀。アンディの口元が”Thank you very much”と動いたのがわかりました。

ライブ終演、ホテルへ

時刻は22時15分、ライブが終わり、先ほど出会ったCさんたちと再び合流しました。
「楽しかった?」と聞かれ、「はい!ついに彼らのコンサートを人生で初めて観ることができたので。」と言うと、「そしたら来た価値があったね」などと温かい会話をしました。駐車場へ向かう道は、会場内の暑さとは打って変わって、ひんやりしていました。

車に乗せてもらい、ホテルへ到着。なんとCさんご夫婦と私のお部屋はお隣同士。500mlのペットボトルのお水も1本譲ってくださり、「ホテル滞在中に何かあったら、ノックしてね。」と言われ、お部屋の前で解散。Cさんの親切が心に沁み入りました。
その後ホテルではCさんご夫婦とお会いするタイミングもなく、翌朝私は一人チェックアウトして帰路につきました。

この旅で出会ったSweet(優しい)な人たちを思い出しながら、多幸感と共に帰りの電車に揺られました。その車窓からの景色は、行きのそれとは違って一段と美しく見えたのでした。

大自然と羊に別れを告げました


6月29日公演セットリスト

1, Action
2, New York Groove
3, Hell Raiser
4, Burn On The Flame
5, The Six Teens
6, Don't Bring Me Water
7, Changes
8, Co-Co/Funny Funny/Poppa Joe(メドレー)
9, Everything
10, Life Is A Circus
11, Windy City
12, Teenage Rampage
13, Wig Wam Bam
14, Little Willy
15, Love Is Like Oxygen
16, Fox On The Run
〈アンコール〉
17, Block Buster!
18, The Ballroom Blitz


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