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ホール&オーツ「Method of Modern Love」を掘り下げてみた

あけましておめでとうございます。

私事で恐縮ですが、2022年1月1日、実はラジオ出演をしました。

それがこちらです↓

ラジオを聴いてくださった方はありがとうございます。まだの方は、1週間以内でしたらradikoで聴けますので、絶対聴いてくださいね!笑

今回、このような貴重な機会に恵まれたことは、洋楽ファンとして、全米トップ40ファンとして、大変光栄でした。

こちらの番組に関われた経験を一生大切にし、今後も洋楽の魅力に迫りたいと思っております。

ところで、今回のラジオ特番のお題は「タイトルにLOVE」が付くものということでした。

そこで私が選んだのはホール&オーツ「Method of Modern Love」(メソッド・オブ・モダン・ラブ)です。

番組内でもこの曲の歌詞について見解を申し上げましたが、今回このnoteではより深く考察していきたいと思います。


「Method of Modern Love」の概要

まずは、この曲の概要についてまとめます。

・アルバム:「BIG BAM BOOM」収録曲

このアルバムには他にも「Out of Touch」(1984年最高位全米1位)、「Possession Obsession」(1985年最高位全米30位)等の名曲も収録されています。

ちなみに、私はこのアルバムを280円でゲットしました。

この曲の概要を続けます。

・1985年、最高位全米第5位

・作詞:ダリル・ホール、ジャナ・アレン

ダリル・ホールの恋人「サラ・アレン」はホール&オーツのビジネスパートナーとしても有名です。

(サラさんについては、ダリルの歌う「Sara Smile」という曲にもなっていますよね。)

そのサラさんの妹がこの“ジャナ”さんなのだそうです。

ジャナさんについて、ダリルは1983年5月号のミュージックライフのインタビューにて次のように説明しています。

チープ・トリックみたいなバンドでギターを弾いてるんだけど、僕達の前座をしたり、キッド・クレオールに曲を書いたりしているよ

(※1985年11月シンコーミュージックより発行「ミュージックライフ11月増刊号 ダリル・ホール&ジョン・オーツ・フォト・ストーリー」より引用)

ジャナさんもミュージシャンをしたり、楽曲提供したり活躍していたということがよくわかります。


また、この曲のMV(ミュージックビデオ)は、バンドメンバーで仲良く演奏しているところが楽しい仕上がりになっています!


「現代の愛の方法」って何だろう

この曲のタイトルは「Method of Modern Love」とありますが、直訳すると、「現代の愛の方法」となります。

ちなみに、日本版CD、大野れい氏による対訳では「現代の愛の法則」と訳され、シンコーミュージック出版「ホールアンドオーツ詩集」中川五郎氏対訳では「現代恋愛の方法」と訳されていました。

「愛」と付いているのでラブソングかな?と思ってしまいます。しかし、どうやらそうでもなさそうだというのが私の見解です。


窮屈な”現代”

歌の1番Aメロでは、以下の歌詞が綴られています。

Everybody's hard as iron Locked in a modern world

この歌詞の意味は、

「誰もが鋼(はがね)のように固く現代社会とやらに嵌め込まれてる」

(※中川五郎氏対訳より引用)

となるようです。

どうやら現代を窮屈な印象で捉えているようです。

今から36年前の“現代”って窮屈だったのでしょうか?

36年後の”現代”の方がスマホやインターネットの普及によって情報社会化が進み、便利な反面、窮屈さを感じてしまうような気がします。

いつの時代も”現代”を窮屈に感じるという点は普遍的なトピックなのかもしれません。

そして、歌詞は次のように続きます。

I believe love will always be the same 「愛の形は永遠だと信じているよ」

The ways and means are the parts of subject to change「愛し方と手段は変わることがあっても」

(※大野れい氏対訳より引用)

ここまでを要約すると、「現代は窮屈だし、恋愛の方法や手段が変わることがある。でも、愛そのものは永遠なものなんだよ」と歌っているということがわかります。

では、この曲で「現代の愛の方法」とはどんなものか具体例を見ていきましょう。


「現代の愛の方法」の具体例

2番の歌詞から「現代の愛の方法」の具体例を抜粋すると次のようになりました。

(※中川五郎氏、大野れい氏の対訳を参照し、内容をまとめました。)

・恋人の君に電話ができる
・だから君が遠くに離れていても生活を共にしている
・君が僕を傷つけても、君にはわかりっこない
・ケンカする時間もない
・顔を突き合わせることもない

え?なんかドライだな~と思ったのは私だけでしょうか。

先程まで「恋愛の方法や手段が変わることがある。」「でも、愛そのものは永遠なものなんだよ」と歌っていましたよね。

てっきり私は「現代の愛の方法」というのは、それまでの「古い方法」と手段は異なっていても、何も問題ないよ!良いものなんだよ!と胸を張って主張しているのかと思ってました。

しかし、この具体例のリストを読むと、正直良い所が見当たらないですよね…。

そしてこの後に、

「誰に教えてもらわなくても自分たちにはやり方がある」
「これが現代の愛の方法“Method of Modern Love”なんだ。」

とサビを歌う流れになっています。

「自分達にはやり方がある!」と自信満々な「現代の愛の方法」ですが、私にはこの恋愛関係が良好なものにはとても思えず、ネガティブな印象を受けました。

つまり、この歌は「現代の愛の方法」について称賛しているのではなく、実は皮肉的に捉えた歌なのではないかと私は解釈しました。

ポップな楽曲という表層的なイメージとは裏腹に、「現代の愛の方法」についてを疑問視し、一石を投じていると考えると、非常に興味深く感じます。


MVでダリルが最後にボソッと一言、なんて言った?

このMV(ミュージックビデオ)を見ていると、ダリルが最後の最後にボソッと一言、何か言っています。

こちらの動画だと5分30秒過ぎくらいでしょうか。

ダリルが「ドン…○△×■○×■△…ション」と言ってますね。ダリル早口です。私には全然聞き取れませんでした。

そこで、大変ありがたいことに私がお世話になっている英語の専門家K先生とL先生に聞きとってもらったところ、

「Don't mess with imperfection」

と言っていることがわかりました!本当にありがとうございました。

またL先生から、この言葉の解説をしていただきました。


「Don't mess with imperfection」

通常、ネイティブスピーカーの人達は、imperfectionではなくperfectionを使い

「Don't mess with perfection」

と言うそうです。「perfection」は「完璧」という意味です。

使い方は、例えばアート作品に対し、「このままで完璧な作品だからこれ以上手を加えたり、いじったりするな」という意味で使います。

では「imperfection」に置き代わるとどうなるのでしょうか。

「imperfection」は「不完全」という意味になります。

つまり、「Don't mess with imperfection」「不完全さに手を加えるな、いじるな」という意味になります。

L先生曰く、ダリルはとてもユニークなことを言っているそうです。

確かにこのユニークな言葉のチョイスはかっこいいですよね。

「”不完全”なままがいいんだ」といった意味にも捉えられそうです。

では、このダリルの一言はこの「Method of Modern Love」に関するメッセージなのでしょうか?

正直、私にはこれだけの情報ではわかりませんでした。皆さんはどう思いますか?


今回の温故知新:この曲のメッセージとは

この曲を通して、ホール&オーツが伝えたかったメッセージとは何なのでしょうか。

ここで、この曲のリリースよりも前の時期に取材された、大変興味深い記事がありましたのでご紹介します。

ダリルとジョンは1983年5月号のミュージックライフのインタビューにて、MV(ミュージックビデオ)について次のように話しています。

ジョン:ストーリーにすることはないね。あくまで音楽の雰囲気をとらえ、僕らなりのスタイルで音楽の持つ魅力をより強く引き出すヴィジュアルを考える。

ダリル:それから見る者とのアイ・コンタクト(視的交流)を重んじるね。今の若者ってそれでなくても受け身だから、彼らの目をギッとみすえ、手をのばし、彼らに届きたい。彼らを揺すぶって能動的になってもらいたいんだ。だから、カメラをまっすぐ見つめるようにしている。

(※1985年11月シンコーミュージックより発行「ミュージックライフ11月増刊号 ダリル・ホール&ジョン・オーツ・フォト・ストーリー」より引用)

ダリルが「若者には受け身ではなく能動的になってもらいたい」と熱い気持ちを述べています。

今回取り上げた、「Method of Modern Love」は、「現代」を生きる人、つまりその時代の若者をイメージしたと解釈しても概ね問題ないかと思います。

ダリルの若者に対する熱い想いを考えると、若者の「恋愛の方法」についても「受け身ではなく能動的になってもらいたい」と考えていた可能性があります。

お互い直接顔を突き合わせ、時にはケンカもして、積極的なコミュニケーションを取った方がいいよ!と若者に促しているのかもしれません。

また、MVでダリルが「Don't mess with imperfection」(不完全さを台無しにするな)という台詞を言いますが、その時のダリルもこのインタビュー記事で言っているように、カメラにアイコンタクトを取っていますよね。

それもやはり、若者に向けたメッセージだからなのかもしれません。

まだ仮説に過ぎませんが、この曲が「現代の若者」に向けたメッセージを含んでいると考えると、より興味深い曲に感じます。

みなさんはどうお感じになりますか?え?考えすぎですかね笑

今後の課題は、他の曲やその他の資料から、ホール&オーツが楽曲に込めたメッセージを分析し、この「Method of Modern Love」への適切な解釈へと繋げていけたらと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

2022年もどうぞよろしくお願いいたします。

See You!


【参考資料】

・シンコーミュージック出版「ホールアンドオーツ詩集」より中川五郎さんの翻訳

・日本版アルバム「BIG BAM BOOM」より大野れいさん訳詞

・1985年11月シンコーミュージックより発行「ミュージックライフ11月増刊号 ダリル・ホール&ジョン・オーツ・フォト・ストーリー」


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