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魔王

眠り間際の狭間で体に微細な電流が走る

今日はうまく行きそう

わたしの体が圧力と共に分解される

思い切って起き上がると、わたしは幽体となる

そこは重なった一つ上の領域だ

このプロセスにも慣れてきた

窓の前に立ち少し躊躇する

ベッドの上にいる自分の意識も半分あるけれど

体感がリアルだから怖い

どこへ飛ばされるのか

だけどここまできたら もう進むしかない

窓に手を当てて、ゆっくりすり抜ける

その向こう側は…瓦礫だ

手前にはテトラポットのようなものがたくさんあって

あとは崩壊した遺跡のようなものがずっと続いている

薄暗く荒廃した滅びの世界だ

わたしはそのまま進んだ なんだかうまく飛べない

荒魂くんを見つけたい

ここは彼の世界だろうか

わたしの意識は彼を探したがっている

うまく浮力がつかずに瓦礫をよじ登りながら進む

しばらくすると 古城のようなものが見えた

魔王がいそうな城だ

近づこうとすると空間が渦を巻いた

わたしは竜巻の中にいた 

周りの瓦礫も空間全てが吹き荒ぶ

城はすぐそこにあるけれど それ以上近づけない

風に邪魔されて扉まで進めない

侵入を拒んでいるの それとも

わたしが躊躇しているから 恐れているから

彼に会うのが 善か悪か 恐れている

正体を掴めきれずにいる

共に堕ちてしまわないかと

もしかしたらここは

虚無に沈んだかつてのもう一つの世界

全てを手にした 別の可能性のわたし

城が宙に浮く 

空間が壊れていく

全てを創り変えていくみたいに 分解されていく

けれど無音だ

無音で全てが舞っている

わたしと城を取り囲んで全てが回転している

わたしと わたしならざるものの空間領域

不思議と心地良さすら感じる

ここにずっといたいとさえ思う

何も怖くはないと

わたしを内包していく

ここはわたしとあなただけの領域テリトリー

あなたと この全能感の中にただ漂っていたい

そしてわたしは埋没してゆく

その愛の中に


投げ銭大歓迎! 喜びは巡り巡って、あなたに何倍にもなって返ってくることでしょう。